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洋食派‼︎(低浮上気味)
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好きになってはいけない人だと、最初からどこかで分かっていた気がする。
それでも俺は、あの日の放課後、白石先輩に恋をしてしまった。
四月の終わり まだ少し肌寒い風が吹く放課後の図書室。
新しく図書委員になったばかりの俺は、高い棚の上にある分厚い本を片付けようとして、悪戦苦闘していた。
「んー……黒瀬くん、背伸びしすぎてプルプルしてるよ」
ふいに背後から降ってきた、綿菓子みたいに柔らかく、少し眠たげな声。
振り返ると、そこには三年生の白石凪(しらいし なぎ)先輩が立っていた。
色素の薄い茶色の髪が、窓から差し込む西日に透けてふわふわと揺れている。
少し緩められたネクタイと、ぶかぶかのカーディガン 眠そうに細められたタレ目が、俺を見てゆっくりと三日月型に歪んだ。
「あ、白石先輩。すみません、これ一番上の棚に戻したくて……」
「俺がやるよ。一応、こっちの方がちょっとだけ背が高いしね」
そう言って先輩は、俺の手から本を受け取ろうと手を伸ばした。
その瞬間、先輩の指先が、俺の手の甲にふわりと触れた。
「……っ」
思わず息を呑んだ。
先輩の指先は、驚くほど細くて、白くて——そして、氷のように冷たかった。
春なのに、どうしてこんなに冷たいんだろう。
そう思ったのと同時に、近づいた先輩から微かに甘い石鹸の匂いがして、俺の心臓がうるさいくらいに跳ね上がった。
「ん? どうしたの、黒瀬くん。顔赤いよ?」
「い、いえ、なんでもありません……!」
慌てて視線を逸らす俺を見て、先輩は「ふふ、可愛い後輩くんだなあ」とマイペースに笑う。
その無防備で優しい笑顔を見た瞬間、胸の奥がぎゅっと締め付けられた。
誰にでも優しくて、掴みどころがなくて、まるで春風みたいにふわふわしている人。
それなのに、なぜか目が離せない。
「……あの、白石先輩」
「んー?」
「来年も、また一緒に図書委員やれますかね」
本を棚に収め終えた先輩に、俺は精一杯の勇気を振り絞ってそう尋ねた。
先輩は三年生だから、来年は卒業してしまう。そんな当たり前のことさえ頭から抜け落ちるくらい、俺は先輩とずっと一緒にいたいと思ってしまっていた。
先輩は一瞬だけ目を丸くして、それから、少しだけ寂しそうに目を伏せた。
「……そうだね。来年も、またこうして笑っていられたらいいのにね」
小さく呟かれたその言葉は、西日の光に溶けて消えてしまいそうなくらい儚かった。
その時の俺は、先輩がどうしてそんな顔をしたのかも、その言葉に隠された残酷な意味も、何ひとつ知らなかったのだ。
コメント
1件
第1話、読ませていただきました…! 白石先輩の儚くて綺麗な存在感がすごく印象的でした。 指先が「氷のように冷たかった」っていう描写に、ゾクッとしながらも胸がぎゅっとなりました。 ラストの「来年もこうして笑っていられたら」の台詞、何か隠された意味があるんだろうな…切ない。 続きが気になります!素敵な作品をありがとうございます🌙✨