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ひやりと冷えた夜風が、隊服の袖を揺らす。任務を終え、蝶屋敷へ戻る道すがら、義勇さんは珍しく口を開いた。「…竈門。少し、話がある。」
その声は、いつも以上に低く、どこか切なさを秘めているように聞こえた。炭治郎の栗色の瞳が、驚きに見開かれる。彼がうなずくと、義勇さんは人気のない庭の隅へと彼を誘った。
「義勇さん、どうしたんですか?」
炭治郎が尋ねる。義勇は、言葉を探すように俯いた。月明かりが、彼の漆黒の髪を淡く照らし、その端正な横顔に影を落とす。
「…俺は、お前を、特別な存在だと思っている。」
義勇さんの言葉に、炭治郎は戸惑ったような表情を浮かべた。しかし、その顔はすぐに優しい笑みに変わる。
「はい、俺もです!義勇さんは、俺にとって大切な人です!」
炭治郎の屈託のない笑顔に、義勇は微かに口角を上げた。だが、その笑みはすぐに消え、真剣な眼差しになる。
「違う。そうじゃない。」
義勇は、炭治郎の頬にそっと手を伸ばした。熱を帯びた義勇さんの掌が、炭治郎の肌に触れる。炭治郎は、その予期せぬ行動に、少しだけ身体を強張らせた。
「俺は…お前を、誰よりも愛している。」
その言葉は、まるで水面を滑る波のように、静かに、そして深く、炭治郎の心に響いた。炭治郎くんの瞳が、驚きと、そしてかすかな喜びで揺れる。
「義勇さん…」
義勇は、炭治郎の頬を包み込むように、優しく、そして切なく、唇を重ねた。