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│ 第7章 欠けている数分 │
「……もう一回、時間を洗い出そう」
そう言ったのは吉田だった。
夜の宿のロビー
「昨日も一昨日も、みんな“覚えてない時間”がある。それを重ねると、同じ時間帯が浮かび上がる」
「同じ?」
佐野が顔を上げる。
「午後三時十分から、三時二十分。この間の十分間…」
空気がゆっくりと張りつめていく。
「俺はその時間、二階の奥にいたはず…」
佐野が言う。
「でも、三時十五分の記憶がない…」
「俺もや…」
曽野が言った。
「写真の時間、ちょうどそこや」
「俺と舜太も、部屋から部屋に移動しとった」
塩﨑が続ける。
「けど、細かいことは思い出せへん…」
全員の視線が自然と山中に向く。
「俺は……」
山中は少し考えた。
「ロビーにいたと思う…」
「“思う”?」
曽野が聞く。
「時計見てないから…正確には言えない、、」
山中は静かに言った。
その答えは、誰をも納得させなかったが、否定もできなかった。
「てかさ、十分間消えてるって、、おかしくない?」
佐野が言う。
「偶然?」
塩﨑が言った。
「それとも……」
曽野が言いかけて、言葉を飲み込む。
「誰かが、、意図的に“空白”を作った…。」
吉田が淡々と言った。
その夜、警察から 新しい情報が届いた。
《スタッフ男性のスマホ、解析が進みました》
《事件当日の午後三時頃、通話履歴があります》
《相手は___ 館の中にいた人物》
「番号は?」
佐野が聞く。
《非通知です》
全員が、息を詰める。
さらに
《通話時間は、約二分。ちょうど、皆さんの記憶が曖昧な時間帯です》
「……二分で、何ができる?」
曽野が言う。
「人を呼び出す」
塩﨑が答えた。
「場所を指定する」
吉田が続ける。
「転ばせる」
佐野が呟く。
誰も否定しなかった。
山中は 一人で館の図面を見ていた。
ロビー
管理室
管理人の部屋
そして、人目につかない小さな通路
「……ここ」
山中はペンで丸をつけた。
一方、曽野はスマホを操作していた。
写真の詳細
位置情報
「……ロビー?」
管理室前の写真
位置情報は、ロビー中央
「撮影地点と、写真の内容が一致してない」
「……加工?」
吉田は、ノートにこう書いた。
犯人は
・全員の動線を知っている
・鍵を複製できる
・スマホ操作に慣れている
・記憶に残らない行動をする
「…… 全員当てはまるか、、」
誰もみな条件は同じでノートを閉じた。
佐野は、窓の外を見ていた。
「俺たちさ… もし、本当に犯人がいたとして ……捕まえられるのかな」
返事はなかった。
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