精神世界の暗闇は、果実の瘴気で息苦しく淀み、炎の残光が不気味に揺らめく。
レクト・サンダリオスは、召喚した黄金のバナナの杖を握りしめ、息を荒げて立つ。
第28話禁断の果実の瘴気、第29話の暗闇の牢獄、そしてドリアンによる惨劇――
セレスティア魔法学園の血と棘、グランドランドの炎と叫びが胸を締め付ける。
だが、黄金の杖の輝きは、炎の攻撃を受けても収まらない。
果汁の光が暗闇を切り裂き、レクトの瞳に決意を宿す。
パイオニア?――
父でない何かが宿る体――が嘲笑う。
「無駄な抵抗だ、レクト。」
炎魔法が巨大な渦を巻き、
黒い瘴気が杖に襲いかかる。
黄金の果汁が蒸気となり、熱が肌を焼く。
だが、レクトは全身全霊で杖を振り、
第26話の連鎖技を呼び起こす。
バナナの杖から黄金の果汁が迸り、炎を押し返す。
光が暗闇を貫き、パイオニアの黒い瞳が一瞬怯む。
汗が額を伝い、息が白く凍るが、レクトの心は燃える。
「世界が滅ぼされようが……今は、お前を倒す!」
第30話のドリアンの棘でヴェル、ビータ、カイザを貫いた記憶、星光寮のステンドグラスが砕けた光景、ゼンの血に染まった校庭が胸を刺す。
だが、心の奥で別の炎が燃え上がる。
これまでの冷たい視線、
「苦悩の梨」の脅迫が蘇る。
「フルーツ魔法を認めてもらう段階にすら、立てないんだ! お父さんを返して!」
ダルトリアが手を掲げ、炎が巨大な槍となる。
「お前は私の道具だ。」
槍がレクトに迫るが、
彼は第27話の感覚制御を総動員。
黄金の杖を回転させ、果汁の盾を展開する。
槍が盾に激突し、衝撃波が暗闇を揺らす。
盾の破片が飛び散り、黄金の光が炎を散らす。
「くっ……!」だが、
レクトは歯を食いしばり、
第26話の形状変化を加える。
杖の先がバナナの皮のように剥がれ、
無数の黄金の刃が飛ぶ。
「行け!」
刃がパイオニアの炎を切り裂き、黒い瘴気が薄れる。
初めて、
「ぐっ……!」
パイオニアが後ずさる。
黒い瞳に怒りが宿り、瘴気が濃くなる。
「お前ごときが!」
炎が巨大な獣の形となり、咆哮を上げて襲いかかる。
獣の熱が体を焼くが、レクトは第15話の巨大レモンを思い出し、窮地での依存を克服したい一
心で耐える。
「巨大化じゃなく……繊細に!」
巨大化だけでは倒せる確証もないのに魔力のコストがかかるだけ。
だからこそ、ー
黄金の杖を地面に突き刺し、果汁が波のように広がる。
波が獣を飲み込み、炎を鎮める。
だが、パイオニアは笑う。
「まだだ。」
瘴気がレクトの体を再び縛り、杖が重くなる。
戦いの最中、父との思い出が鮮やかに蘇る。
幼い頃、
サンダリオス家の果樹園でパイオニアがレクトを抱き上げ、バナナの房を手に笑った日。
「レクト、フルーツは家族の絆だ。みんなで分け合えよ。」
穏やかな声が耳に残り、果汁が口から溢れて笑い合った。
別の午後、庭でリンゴを食べながら、
パイオニアが
「サンダリオス家の誇りは、お前の魔法にもある」
と囁いた。
夜の星空の下、父が炎魔法の小さな実演を見せ、「お前もいつか、みんなを幸せにする魔法を」
と励ました。
あの温かさが、第21話の朝食で冷たい視線に変わった痛みを思い起こさせる。
「どこから変わったのか知らないけど、
お父さんを……
パイオニアの炎が再び爆発し、暗闇が赤く燃える。
レクトの攻撃をパイオニアは直に受けて、変化が現れ始める。
「私はサンダリオス家の野望を叶える者!」
彼の体が震え、黒い瘴気が剥がれ落ちる。
そこに現れたのは、
ダルトリア――パイオニアの兄、死刑囚の顔。
伏せられた正体が明かされる。
「パイオニアは弱かった。禁断の果実の瘴気が、私を呼び込んだ。」
ダルトリアの瞳は狂気に輝き、炎が獣のように咆哮する。
「俺は人を殺すのが抑えられねえ。刑期が近くて牢にいたが、瘴気がチャンスをくれた。
お前のフルーツ魔法で、残虐に、楽しく殺しまくるんだよ!!!
戦争? そんな面倒くせえもんより、全部壊してダメにする方が面白いんだよ!」
レクトの胸に怒りと悲しみが爆発する。
「お前が……お父さんを乗っ取って、こんなことに!」
黄金の杖が輝きを増し、バナナの刃を連鎖させる。
無数の黄金の刃がダルトリアに襲いかかり、
炎を切り裂く。
刃がダルトリアの体を貫き、血が暗闇に飛び散る。だが、彼は笑う。
「まだだ!」
瘴気がレクトを締め付け、杖が折れかける。
外の世界の惨劇が精神世界に映る――
星光寮の壁が崩れ、
校庭の芝生が血に濡れ、
ヴェルの肩から血が滴る。
グランドランドの街は火事と煙に覆われ、
国民の叫びが響く。
だが、レクトは全てを賭ける。
黄金の杖が最大の輝きを放ち、バナナの果汁が光の槍となる。
会心の一撃
杖がダルトリアの胸を貫き、
黒い瘴気が爆発的に散る。
「ぐあああ!」
ダルトリアの叫びが暗闇を震わせ、体が炎に包まれる。
瘴気が剥がれ、パイオニアの本当の体が現れる。
穏やかな瞳が一瞬光り、
「レクト……よくやった……」と呟く。
ダルトリアの魂が炎に焼かれ、消滅する。
精神世界が揺れ、暗闇が崩れ始める。
外の世界の惨劇が止まり、ドリアンの棘が霧散する。
レクトの体が解放され、黄金の杖が優しく輝く。
パイオニアが倒れ、父の温かさが戻る。
幻滅される前に見たあの父の顔だった。
久々に見たその顔に、
レクトは涙を目に溜まらす。
「お父さん……!」
レクトは駆け寄り、
父を抱きしめる。
フルーツ魔法は、父子の絆を繋ぎ戻した。
コメント
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諸々の気になる点は来週にお預けです