「…」
早朝。私は今、ひとつのメモ帳と睨み合っている。先日ヴィランが寄越した私の近辺にいる能力者に関するメモ帳だ。
あの血だ。ヴィランの血は本当に美味しかった。あの美味しさがこの能力と関係あるものだとするなら…私は…。
「でも、悪手よね…」
ヴィランは自分のことを“ここらで有名“だと言っていたが、それは能力者の中でも上位ということだろうか。私の強さはどれくらいに位置するのだろうか。
『〇〇高校には能力者は3人いる』
私以外にも2人いるのか。私は学校に友達とかいないから吸えるなら別に誰でもいいけど。
『1人目はベノム ランクはSだ
やや低身長な女子高生で、特徴は左手首に巻かれた包帯。なるべく戦闘は避けた方がいい 』
ランクなんてのもあるのね。ますますあいつの目的がわからん。
『2人目はヴァンパイア ランクは推定Dだ
まだ覚醒したてだから早いうちにやれば勝てると思う。でも相手はあのヴァンパイアだ。油断は禁物だよ。』
-ドン
なんだ、ヴィランのやつ私の名前知ってたじゃんか。まぁいい…続きを読もう。あのヴァンパイアっていうのはどういう意味だ?私の他にもヴァンパイアがいるのか?疑問は尽きない。
『3人目はフラジール ランクはCだ
根暗な女子高生。雨に由来する能力を持つ。隠れるのが上手いから見つけるのに手こずるかな。』
…読み終えたけど全体的にふんわりしてるな。一旦整理するか。
まずベノム、こいつとやるのは論外だ。差が明確すぎる。下手したらやられると思っていいと思う。もし遭遇したら逃げの一択ね。
次にフラジール。ランクに差はあるがベノムと戦うよりはマシかもしれない。ただ対策が練りずらいな。そもそも今まで対策を練らなければならないほどの強敵と遭遇できなかった。私は格上との戦い方を知らない。何か良い手はないものか…。
「フラちゃんとやるつもりなのー?」
「!?」
-ガタゴト
驚いて椅子から転げ落ちてしまった。窓がガタガタ音を立てている。ダイナミック不法侵入だ。ぱっとみ普通の学生に見えるけど、能力者だね。私は即座に翼を生やす。
「…」
「油断は禁物!めっ!だよ?」
左手に包帯…間違いない。こいつがベノムだ。不思議だな、そこまで強そうに見えないが戦いたくない。こちらから動きたくない。
「!?」
彼女は私の頬に突然、どこからともなく取り出した絆創膏を貼った。
「なにするの!」
「何って、顔に傷がついてたから。乙女は肌大事にしないとだよ?」
多分昨日の戦闘でついた傷かな。余計なお世話けど。にしても、私は彼女の動きに全く反応できなかった。昨日も感じたが、同じ能力者にしても実力差がありすぎる。この差は一体なんなの?私は戦闘を諦めた。
「…一体何用よ?」
「そんなに警戒しなくてもいいのに。」
いや警戒はするわよ。
「よく聴いてね!二度はないから。」
情緒が安定しないな、この子は。
「私があなたの師匠になってあげる。その代わりにフラちゃんを殺して?」
「…え?」