コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「…」
早朝。私は今、ひとつのメモ帳と睨み合っている。先日ヴィランが寄越した私の近辺にいる能力者に関するメモ帳だ。本当は今すぐにでも開けてしまいたい。
あの血だ。ヴィランの血は本当に美味しかった。あの美味しさがこの能力と関係あるものだとするなら…私は…。
「でも、悪手よね…」
幸いにも再生は半分ほど終わっていて、痛みはあるし骨は見えているが、かなりマシな状態だ。あと1日でも待てば治るだろう。1日…たかが1日だ。ちょっと我慢すれば終わる時間だ。
-スッ
開けた。開けてしまった。開けてしまったなら仕方がない。詳細を読むとしようか。
『〇〇高校には能力者は3人いる』
私以外にも2人いるのか。私は学校に友達とかいないから別に誰でもいいけど。
『1人目はベノム ランクはSだ
やや低身長な女子高生で、特徴は左手首に巻かれた包帯。なるべく戦闘は避けた方がいい 』
ランクなんてのもあるのね。ますますあいつの目的がわからん。
『2人目はヴァンパイア ランクは推定Dだ
まだ覚醒した手だから早いうちにやれば余裕で勝てるだろう。だが相手あのヴァンパイアだ。油断はするな。』
-ドン
思わず台パンしてしまった。なんだこの舐め腐った評価は。てかヴィランのやつ私の名前知ってたじゃんか。まぁいい…続きを読もう。
『3人目はフラジール ランクはCだ
性格は根暗で、恐らく女子高生。雨に由来する能力を持つ。隠れるのが上手いから見つけるのに手こずるかもな。』
…読み終えたけど全体的にふんわりしてるね。一番欲しい能力の説明がないじゃんか。癪だけどやっぱ自分のランクと照らし合わせてフラジールとやるべきかな。 よし、方向性がまとまったぞ。
「フラちゃんとやるつもりなのー?」
「!?」
-ガタゴト
驚いて椅子から転げ落ちてしまった。窓がガタガタ音を立てている。そこから入ってきたのか。ぱっとみ普通の学生に見えるけど、能力者だね。私は即座に翼を生やす。
「…」
「無理は禁物!めっ!だよ?」
左手に包帯…間違いない。こいつがベノムだ。不思議だな、そこまで強そうに見えないが戦いたくない。こちらから動きたくない。
「!?」
彼女は私の頬に突然、どこからともなく取り出した絆創膏を貼った。
「なにするの!」
「何って、顔に傷がついてたから。乙女は肌大事にしないとだよ?」
多分昨日の戦闘でついた傷かな。余計なお世話けど。にしても、私は彼女の動きに全く反応できなかった。昨日も感じたが、同じ能力者にしても実力差がありすぎる。この差は一体なんなの?私は戦闘を諦めて翼をしまった。
「…一体何用よ?」
「そんなに警戒しなくてもいいのに。」
いや警戒はするわよ。
「フラちゃんのとこに案内してあげようと思ってさー。」
おそらくフラジールのことだろう。2人は知り合いだったのね。にしても目的がわからない。
「僕の目的が知りたい?僕にたいした目的なんかないよ。昨日ちょっと喧嘩しちゃったからそのお返しに、嫌がらせでもしようと思ってねー」
「その結果私がフラジールを殺しちゃってもいいの?」
「よくないけど、そんなこと万が一にも起こらないと思うよ。」
場に沈黙が流れる。
「場所も僕がセッティングしてあげるからさっ。ねっ?」
「わかったわ。案内して。」
私はおとなしく彼女の指示に従うことに決めた。