テラーノベル
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おじいちゃんは、おばあちゃんが死んでからものすごく頑固になって、自分の言う事を曲げなくなった。朝日さんみたいなきれいな顔の人と絶対に身内になりたいし、顔が悪くない私に朝日さんとの子供を産んでほしいんだって。
お母さんとお父さんは、最初はおじいちゃんに反対してたけど、狭山さんと朝日さんのスペックを見比べ始めたらあっという間におじいちゃんの言うことに傾いちゃった。二人とも、周りに言われるがままに幼馴染と結婚してなんとなくうまく行ったタイプだから、別に好きな人でなくたって条件合ってればうまくいくとか言って、わかってくれない。なんにもわかってくれない。
嫌われちゃったけど、私のバカな一言で嫌われちゃったけど、私は狭山さんがよかった。
ていうか、峰朝日さんのこと、私は顔くらいしか知らない。なんで私に求婚してきたのか全然わからない。私のことが好きで、とかじゃ絶対ない。
私は小さい頃から、ずっと周りから「あなたには素質があるんだから」「素質のある人しかできないことをしなくちゃいけないんだから」って言われてきた。だから頑張った。本当は普通に高校や大学行きたかったけど、それを出さずに、中学卒業してすぐ、素質のある人しかできない仕事を始めた。司兄に「高校くらいは出ろ」って言われて通信高校通いながらになったけど。
結婚して子供作って素質を残すのも義務だと思ってた。でも、好きな人ができた。
狭山さんを好きになった。だから、狭山さんがよかった。
でも、狭山さんには嫌われちゃった。
おじいちゃんは朝日さんと私を結婚させるためになんでもやった。緑さんにすごく迷惑かけた。他のいろんな人にも、すごく迷惑かけた。
おじいちゃんは、もう、朝日さんと私の結納の予定まで決め始めた。
それで、それで、私は、何もかもから逃げ出したくなった。
……でも、どこに行っていいかわからなかった。逃げ出したいだけじゃなくて、見つかりたくなかったから、私は県外の、コンビニが中にあるビジネスホテルにこもった。
狭山さんと前に、そういうホテルは雲隠れにちょうどいいって話したの、思い出したから。
スマホの電源をつけているとGPSで居所を知られる。そんなことを狭山さんが小説のネタで調べたって話してたのを思い出して、スマホの電源は切った。タブレットを持ってきていたので、ホテルのフリーWi-Fiでネットは出来たし、見ようと思えばLINEも見られたけど、既読をつけたくなくて放置した。
ホテルに入って、荷物を全部投げ出したらすごく疲れてるのに気づいて、ベッドに飛び込んだ。
それから何日か、ずっと寝ていた。たまにコンビニご飯を買いに行く以外は、こもりきりだった。
そんな時、ぷるるるるる、とホテルの部屋の固定電話がなって、私は眠りから覚めた。何!? 固定電話ってだけで慣れないのに! 私、見つかっちゃった?
恐る恐る電話に出たら、ホテルのフロントの人だった。
「狭山と名乗る方から、当ホテルに連絡がありまして」
「え!?」
見つかっちゃったの!? と思ったけど、次にこう言われた。
「狭山という方に、探している人の年格好など告げられまして、一致する人がいたら言付けをお願いしたい、ということでして。それがお客様の年格好と一致したので、その言付けをお伝えしたいと思います」
「ど、どういう言付けですか!?」
「そのままお伝えします。「困ってるなら、金谷家に帰りたくないならうちに来てください。ずっといてくれていいです」ということです」
「え……」
え、そんな、狭山さん、私のこと嫌いになったんじゃなかったの? 私、狭山さんのところに行っていいの? ずっといていいの?
「ほ、他になにか言ってませんでしたか!?」
「「無事なら連絡だけでもほしいです。秘密にしてほしいなら、連絡きたことは他の誰にも言いません」とのことです」
そ、それなら、私、狭山さんになら連絡とっても、おじいちゃんやお母さんやお父さんに知られない……?
#幽霊
凛道桜嵐 新
193
#日常
がくじゅつてき・あかげ
22,155
わーい
41
485
とりあえずお礼を言ってフロントからの電話を切った。それから、タブレットから恐る恐るLINEを開いた。
両親からおじいちゃんから司兄から蒼兄から春ちゃんから風ちゃんから他の知り合いたくさんから、山のようにLINE来てたけど、私は既読をつけても安全なはずの人のアイコンを探した。
狭山さん。黒猫クーちゃんを写したアイコン。
狭山さんとのトーク画面を開くと、安否を問うメッセージいくつかの後、こうあった。
「もし言付けを聞いてくれたら、既読だけでもつけてください。あと、峰朝日さんのことでわかったことがたくさんあります。和泉さんがいろいろ調べてくれてわかったんです、あの人、僕のファンで、僕を結婚させたくないだけみたいなんです」
……へ?
ど、どういうこと?
しばらく考えたけど、全然まったくわけがわからなかった。え、アイドルの結婚報告にショック受けるファンいるけど、狭山さんをアイドルみたいに思ってるファンがいるとか? で、それが朝日さん?
混乱していたら、狭山さんからLINEが来た。
「既読気づきました! 見てくれたんですか、無事なんですか!?」
……狭山さんは、私のこと嫌いになってない。すごく心配して探してくれた。で、もし連絡とっても、私のこと他の人達に秘密にしてくれる。
私は思い切って、狭山さんにLINE通話をした。
コメント
1件
あかりちゃんの視点でここまでの心情が読めて、すごく胸に来ました。「好きな人ができた」って素直に言えるようになったのに、もう嫌われたと思い込んでるところが切なくて……。でも狭山さん、ちゃんと探してくれてたんですね。「ずっといていい」って言付け、泣けます。峰朝日さんの真意が明かされる場面も「ええっ!?」ってなりました。続きが気になります!