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│ 第5章 筋が通る人 │
翌朝、五人は宿泊施設の小さな会議室に集まっていた。
「一回、整理しよ」
そう切り出したのは、吉田だった。
「感情抜きで、事実だけ」
誰も反対しなかった。
「まず被害者」
吉田はメモを見ながら言う。
「館のスタッフ男性。死因は頭部外傷。次に時間、 昨日、全員が三十分前後、別行動。問題は…その間に何が起きたか、」
曽野が腕を組む。
「……先生みたいやな、笑」
「ふざけてないで。ここ、重要だから。」
吉田は淡々としていた。
「鍵」
吉田が続ける。
「管理室の鍵がなくなってる」
視線が自然と佐野に集まる。
「……俺が持ってた」
佐野は正直に言った。
「いつの間にか、」
「…は?覚えてはない?」
吉田がやや目を見開いて聞いた。
「覚えてない…」
「じゃあ、“持った記憶がない鍵を持っていた”…?」
「それだけ聞くと、かなり不利だよ」
「わかってる」
佐野は目を伏せた。
「いや、でもさ」
吉田が続けた。
「勇斗が仮に犯人なら、鍵を持ってること自体が不自然」
「どういうこと?」
塩﨑が聞く。
「隠すなら… 捨てるか戻す、、持ち続ける意味がない」
その言葉に、曽野が頷く。
「確かに」
「次、写真」
吉田は話題を変える。
「舜太のスマホにあった、管理室前の写真。 撮った記憶がない。 でも、撮影時間は残ってる。昨日の…俺らが別行動してた時間帯」
曽野が舌打ちする。
「最悪やな」
「でも」
吉田は冷静だった。
「写真があるだけで、何をしたかは分からない、足跡も同じ。可能性がある、それだけ」
「じゃあ、誰が一番怪しいんや?」
曽野が聞いた。
全員が記憶を巡りながら頭を悩ませ、少しの沈黙が続いた。
「……俺は、 外部犯だと思う」
吉田がそう言った。
「理由は?」
佐野が聞く。
「内部犯なら、証拠が残りすぎ。鍵、写真、足跡… どれも“見つかりやすい”」
「雑すぎる」
その言葉は、妙に説得力があった。
「でも、外部犯なら?」
塩﨑が聞く。
「鍵を使って、館の中を自由に動けるし、スタッフの動線も知ってる。逃げ道だってある」
「……管理側?」
曽野が言う。
「まぁ、可能性は高いだろうね」
その時、
「一つだけ、おかしい」
山中が空気を割るように言った。
全員がそちらを見る。
「外部犯なら、どうして“今”? 昨日じゃなくてもいい。ロケの前でも、後でも」
山中は、それ以上言わなかった。
吉田は、一瞬だけ黙った。
「……確かに」
だが、すぐに話を戻した。
「でも、今は偶然かもしれない。 動機が分からない以上、断定はできない… 」
会議が終わり、それぞれが部屋を出る。
廊下で、佐野が山中に声をかけた。
「なぁ柔太朗……俺、どう思う?」
「何が?」
「犯人かどうか」
山中は少し考えてから、答えた。
「分からない」
「でも… 勇斗が犯人なら、たぶん、もっと分かりやすい」
その言葉は、慰めにも、断定にもならなかった。
その夜吉田は、一人でスマホを見ていた。
警察とのやり取り
メモ
時間
「……一つ、計算が合わない、?」
小さく呟く。
その“合わない部分”が、何を指しているのか。
この時点ではまだ誰にも分からない。