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まるで深く深くまで落ちた海の中みたいに、まるで分厚い雲に覆われた街の中みたいに。僕の人生は一滴も光の雨が降り注いでいない。なにをしてもうまくこなせない。そんな自分に何度も失望してきた。才能を持った人間だけが生き残れる。努力だけではどうにもならない。これが世の定めだろう。
「ドアの前に置いといてください。」
インターホン越しに配達員がいなくなったのを見て僕はダンボールを部屋へ運ぶ。テープを剥がして中を開けるとそこには1冊のノートが入っていた。机に座った僕は色鉛筆を取り出してノートの1枚目に絵を描き始める。何もないただの日常の風景を描く。だが、途中で満足がいかず紙をノートから乱雑に切り取り手でぐしゃぐしゃに丸めてから床へ投げ捨てる。
「やっぱり僕には向いてないんだ…」
いや、違う。こんなことをするためにこのノートを買ったわけじゃない。新しいページに僕は書き記した。
『6/1(木) 僕は覚悟を決めました。来月の7日に花降川で命を絶ちます。毎日心の整理のためにこの日記を書こうと思います。最終章の開幕。』
誰かに見せるわけでもないのに妙に丁寧になった。最終章の開幕なんて書いたもののほとんど何も無い生活だろう。今までと比べて多少マシになるかもしれないが。一区切りついた僕はそのまま固いベットに体を乗せた。