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コメント
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ああもう、第60話もやばすぎた……!!😭💔 「すまぬ」「許してくれ」って、帝辛が処刑を見届けながら呟くシーン、胸がぎゅうってなったよ…。王として国を守るためとはいえ、自分の手でやらなきゃいけない苦しみが伝わってきすぎる。黒闢の「これが国を守る道です」って冷静な言葉も、逆に辛いよね。 それに縫季が「もうとっくに選んでる」って自分の限界を受け入れてるところ、もう泣くしかなかった…😭 茶器に灰が積もってて、あの朝の茶の香りとの対比が美しすぎて切なすぎる。 帝辛の「涙はない。枯れている」も深い…。次どうなるの!?続きが気になりすぎる!!✨
第60話 すまぬ
玉座の周囲に、白い香煙が漂っていた。
甘い。甘すぎる。
縫季の鼻が、それを一嗅ぎで弾いた。
(……狂楽香だ)
感覚を溶かす香。痛みを遠くし、判断を霞ませる。
帝辛の目が、炎を映しながら、どこか焦点を結べずにいた。
手の中に持っているものが、木簡と、判。
横には、黒闢が立っている。
黒闢は、炎ではなく人々の顔を眺めていた。処刑を見物する民の表情。恐怖と憎悪と期待と、様々な感情が混ざる様子。
そのすべてを、淡々と観察している。
縫季は、帝辛の顔を見た。
目が、炎を映していた。炎から目を逸らせずにいる。
逸らせないのか。逸らしてはならないと思っているのか。
唇が、わずかに震えている。
「……すまぬ」
小さな声だった。炎の音にかき消されそうなほど弱い。
それでも、縫季の耳にははっきり届いた。
「許してくれ」
帝辛は、目を閉じた。
判を、木簡へ押す。
その瞬間、柱の熱がさらに上がったのが分かった。炎が唸り、声が途切れる。
縫季の胃が、ひっくり返る。
(やめろ)
声にならない声が、胸の内側でしぶきを上げた。
(……そんな命令をする男じゃないだろ)
帝辛の指先が震えている。
判を押し終えても、その手は木簡から離れなかった。離してしまえば、取り返しがつかなくなると、体が知っているように。
黒闢が、静かに口を開いた。
「陛下。これが、国を守る道です」
柔らかな声だった。慰めでも諫めでもなく、ただ「事実」を告げる声。
帝辛の喉が動く。
「……分かって、いる」
かすれた声。
「これを拒めば、殷は……もっと早く崩れる」
黒闢が、わずかに身を屈めた。帝辛の耳元で、何かを囁く。
その手が、静かに傍らの香炉を傾けた。
白い煙が、帝辛の鼻先へ、ゆるやかに流れた。
縫季の胸の中で、光が一気に縮んだ。
帝辛は、柱から目を逸らさない。逸らしてしまえば、自分を許してしまうと恐れているように。
「……すまぬ」
もう一度、同じ言葉。
炎は答えない。焼ける音だけが、熱の中で膨らんでいた。
縫季は、一歩だけ前へ出た。
その瞬間、膝が痛んだ。敷石の上に立っている足に、重みがかかる。
(……本当に、落ちてきているな)
有限の体。痛覚。息切れ。
それでも、目を逸らせなかった。
玉座の脇に、小さな卓がある。
縫季は、そちらに目を向けた。
そこには、茶器があった。
かつて縫季が見たものと似ているが、わずかに違う形。帝辛の好みで揃えたのだろう。
ただ、そのすべてに、灰が薄く積もっていた。
湯を沸かす器。茶葉を入れた壺。碗。
どれも、最近使われた気配がない。
湯の跡も、茶の香りも残っていない。
あの朝の、静かな茶の香り。帝辛が湯気の向こうで微笑んだ光景が、遠くなる。
この世界の帝辛は、もう誰にも茶を淹れない。
誰かを迎えるための温度も、話をするための静かな余白も、すべて、炎と悲鳴に塗りつぶされている。
縫季の胸の光が、震えた。
#ダークファンタジー
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#BL
#ヒューマンドラマ
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409
帝辛は、民の方を見た。
広場の周りに集まった民たち。その表情は一様ではない。
恐怖。憎悪。諦め。
「王」を見上げるその瞳に、もう信頼の温度は少ない。
帝辛は、それでも背筋を伸ばした。
「殷を守るためだ」
誰に向けてかも分からない言葉を、唇の裏で零す。
涙はない。枯れている。
縫季の脚が、ふらついた。
(……限界が近い)
胸の奥で、香がひび割れるような感覚。世界線に触れすぎて、縫香官としての核が摩耗していく。
管理官の警告が遅れて蘇る。
「それ以上進めば、魂を保つには緊急有限化しかない」
(もう、とっくに選んでる)
縫季は、胸の光に指先を当てた。
「帝辛」
声は、風にも届かないほど小さい。
それでも、胸の光がぴくりと震えた。
帝辛の魂が、この光景を拒んでいる。「本来の帝辛」が、こんな命令を受け入れられるはずがないと震えている。
縫季は目を閉じた。
香の縫い目が、視界の端で微かに揺れ始める。
世界線を渡る道。それはもう、以前のようにはっきりは見えない。霞がかかったようにぼやけている。
(……でも、まだ見える)
見えるうちは、進める。
縫季は、敷石に膝をついた。膝に痛みが走る。骨という概念が体の中で重さを持ち始めている。
(あとどれくらい、跳べる)
(あと、どれだけの線を見れば――)
目を開けると、炎が揺れていた。
帝辛が、柱から目を逸らさないまま、唇を噛んでいる。
「……すまぬ」