テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
〜昨日見た夢を共有するSNS〜通称”Dシェア”
五年前リリースされたそのアプリは、若者を中心に大きな反響を呼び、瞬く間に人々の生活に浸透していった。
朝、目が覚めた直後。
まだ現実と夢の境目が曖昧なまま、その内容を投稿する。
意味の分からない断片。
理由のない恐怖。
妙に鮮明な光景。
それらを整理する必要はなく、正確である必要もなかった。
むしろ、曖昧なままであることが、このSNSでは価値とされた。
人々は夢を語り、他人の夢を覗き込み、そこに自分を重ねた。
歩夢が目を覚ますと、列車はすでに静岡駅を通過していた。
車内は静かで、規則正しい振動だけが身体に伝わってくる。
窓の外には、知らない街並みが流れていた。
自分が夢を見ていたのかどうかは、覚えていない。
目を閉じていた時間があった、という感覚だけが残っている。
「……もうちょっとか」
ポケットからスマートフォンを取り出すと、メッセージアプリの通知が一件表示されていた。
送り主は妹だった。
「おにいちゃん、がんばってね!」
「東京ついたら連絡して!」
そのすぐ下に、続けてもう一件。
「さっきDシェアで見た夢おもしろかったから送るね!」
文の下には、リンクが貼られている。
主人公は少しだけ画面を見つめ、それから指でリンクをタップした。
列車は一定の速度で走り続けている。
東京へ向かって。
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