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1-3 家族
🦊side
翌日
雲ひとつない青空に眩しい太陽が昇る。
こんなに晴れ晴れしい気持ちになったのはいつぶりだろう。
…いい匂いがする。
誰が朝ごはんを作っているのだろうか。
匂いにつられてやってきたキッチン。
?「ん?誰や?」
そこにはふくよかな男性が9人分のご飯を用意していた。
🦊「えっと…」
?「あぁ、もりこーが言うとった子か!」
🍄「俺は、トントン」
「よろしくな」
昨日聞いた名前だ。
🦊「茯です、よろしくお願いします」
🍄「朝ごはん用意するから座って待っとって」
🦊「はい、ありがとうございます」
しばらくして扉の軋む音が響いた。
🐹「おはよぉ」
🍄「おはようさん」
🐹「トントンはいつも早いなぁ」
🍄「お前らが遅すぎんねん」
「ほら、茯?やっけ?」
「その子も、もう起きてんぞ」
こちらを見据えた彼の瞳は眠気に満ちていた。
夜遅くまで起きていたのだろうか。
🐹「おぉ、茯も早いなぁ」
…?
頭をぐしゃぐしゃにされた。
これは、いた、ずら?
…でも、何故か気持ちがいい。
🦊「!…」
🐹「ごめん、嫌やった?」
🦊「ううん、もっかい、!」
🐹「出たw」
「初めてか?w」
🦊「うん、!」
🍄side
まるで兄妹のようだ。
それが、2人の第一印象だった。
これから一緒に色んなことをして、時には泣いたり、喧嘩したり、そして笑いあって、まるで本物の家族のようになっていく。
2人にはそんな未来が見えた気がした。
🍄「随分懐かれたみたいで」
🐹「嬉しいわー」
🦊「うれしい…」
少女は少し照れくさそうにはにかんでいた。
俺にも慣れてくれるとええな。
🐹side
全員が起床し、自己紹介タイムが始まった。
🐹「俺は最高コーラ、もりこーって呼んでな!」
⚾「シャオロンでーす」
🐦「鬱ー」
「呼び方はなんでも」
🕶「ショッピですー」
🍄「トントンデェース」
👓「エーミールと申します」
🎳「ゾムでーす」
やる気あんのかこいつら。
🐹「ちーのって奴と、ひょうたろうって奴は遠くのほうに出張行ってるからしばらくは帰ってこーへんけど、今は名前だけでも覚えたって」
🦊「分かりました」
「私は茯です」
「初めてのも多いので、色々迷惑かけるかもしれませんが、宜しくお願いします」
茯は礼儀正しく、深々と頭を下げた。
うちの奴らとは違って、まだ中学生だというのにしっかりしている。
🐹「茯は偉いなあ」
⚾「おとんかお前は」
🕶「だんだん家族に見えてきた」
🦊「家族…」
茯は眉間に皺を寄せ、少し目に涙を貯めた。
“家族”に関して嫌なことがあったのだろう。
これから一緒に過ごす仲間として、茯の今までも多少は知っておく必要がある。
茯を困らせたくはないのだが、仕方がない。
🐹「なぁ、茯」
「家族について教えてくれへんか?」
🦊「!…」
1-4
🦊side
嫌だった。
家族について話すことも、私の過去を知られることも。
また飽きられてしまう。
また捨てられてしまう。
また…
あぁ、そうか。
私は家族が嫌いなんじゃない。
怖いんだ…
🦊「私には元々名前はありませんでした」
「今名乗っている『茯』とは師匠がつけてくれた名前で、すごく気に入ってるんです 」
🐹「師匠…」
🦊「うちの血族は皆、優秀な人でした」
「けど、私が生まれてから絶不調になってしまったんです
私は生まれつき体が弱く、家族の支えがないと生きて行けませんでした。
他の子達とは違う環境に置かれていましたが、 両親や兄弟まで巻き込みたくなくて、色んなことに挑戦しました。
勉強、芸術、音楽、様々なことをやってきました。
けれど、誰も認めてはくれなかった。
どれだけ努力を重ねても、才能には勝てなかったから。
そして両親も兄弟も私を忌み嫌い、南の国へ置き去りにしました」
⚾「置き去り…?!」
🎳「よりによって南…」
🦊「はい…」
「でも、南の国で我が師匠に出会ったんです。
異種族の私を快く受け入れてくれて、どんな時でもすぐに駆けつけてくれました。
師匠は勉強も運動も全てを迅速かつ丁寧に行う完璧主義者でした。
街中では一際目立っていて、ちょっとした有名人でした。
でも、ある時
師匠が忽然と姿を消したんです。
耳飾りと、置き手紙だけを残して。」
🐹side
🦊「置き手紙には、
『心配しないでおくれ。』
とだけ書いてあったのです。」
「私は、悲しみや怒り、よく分からない感情まで込み上げてきました。
それと同時に、それだけ師匠が大好きだったことに自分でも驚きました。」
茯は少し寂しそうに笑った。
そしてピアスをチリンと揺らし、 1粒の涙を流した。
🦊「また、会えるといいな…」
1-3 1-4 Fin.