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#怪異
イキリ火の玉
946
トンネルを抜けると街灯もなにもない真っ暗な道。車はやけにガタガタと揺れている。
「おい、止まれ」
梶は静かな声で命令した。ミニバンはハザードを点けて止まり親分たちが乗る後ろの外車も同じように止まった。
「安田、ここはどこだ?」
梶は運転席の禿頭の巨漢、安田に訊いた。
「え、え、あの、あれ?」
安田がカーナビを見ながら首をかしげていると外車から長髪が降りて梶のもとにやってきた。
「どうしたんっすか?」
「なにかおかしい。木村、ちょっと周りを見てこい」
「あ、はい」
長髪の男、木村は周囲の様子を探りにいってすぐに戻って来た。
「真っ暗でなんにもないですね」
「……木村、お前は車に戻れ。おい、お前らはそいつらが逃げないようにちゃんと見張っていろよ」
そう言って梶は車を降りた。絶望していた努もそのおかしな様子に気づいて窓の外に目を向けた。だが、街灯もなく後ろの外車のライトが届かない先は何も見えない。
これから殺されるかもしれないという恐怖と今のなにか変な状況に混乱していると間もなく梶が戻って来た。
「安田、とりあえず車を出せ」
「は、はい」
ミニバンは走り出したが後ろの外車はトンネルを出た所にあるちょっとした広場に停まったままだった。
ミニバンは少し走ると中央に一軒だけ家がある広場に出た。家を迂回して進むとすぐに深い森にぶつかり道がなくなった。半ば森に突っ込んで無理矢理Uターンをして来た道を戻る。
途中、いくつか分かれ道はあったが車はそのままトンネルの前まで戻って来た。
「トンネルを戻るぞ」
梶が携帯電話で外車を運転する木村に連絡すると二台の車は暗いトンネルの中に戻っていった。やけに長く感じるトンネルを抜ける。
「止まれっ!」
初めて梶が大きな声を出して安田は急ブレーキを踏んだ。外車も急停車して親分に何か言われたのか木村が慌ててやってきた。
「どうしたんっすか?」
「……ここ、さっきの場所だ」
「え?」
「戻って来ている」
「え? え?」
「安田、もう一度トンネルに入れ。木村もついてこい」
梶の命令に困惑しながらも安田は車を動かし木村の運転する外車もそれに続いた。同じように長いトンネルを抜けて同じ場所に出ると、さらにもう一度トンネルに戻って通過した。
「おいおい、なにをやってんだ?」
車を停めるとさすがに親分と愛人のミサが外車から降りてやってきた。
「すいません、オヤジさん、どうにも様子がおかしい」
梶はミニバンから出て頭を下げた。
「おかしいって?」
「ちょっと様子を見てきます。おい……ガキ、お前も一緒に来い」
最初、自分が呼ばれているとはわからなかった。
「おい、お前だよ」
隣の沢村に小突かれてようやく気づく。
「へ? ぼ、僕?」
「いいからすぐに来い」
まさか暗がりに連れ込んで殺される……一瞬そう思ったが、すぐにそんな雰囲気ではないことに気づいた。沢村に手枷を外されると努は素直に車を降りて梶の横に並んで歩いて行った。
コメント
1件
うわ、これ完全に異世界転移とかのパターンじゃないですか? トンネルを何度通り抜けても同じ場所に戻ってくるっていう不気味さがたまらないですね。梶さんが冷静に対処しようとしてるのに状況がおかしくなっていく感じ、読んでいてじわじわと恐怖が募りました。そしてなぜか努くんだけが連れ出される……ここからどうなるのか、設定の仕掛けがすごく気になります! 次話も楽しみにしてます。