どうやって帰ってきたか覚えてないくらいには傷ついている。あのまま翔太くんといたら、きっと俺は許してしまう。
阿部ちゃんと過ごす未来が翔太くんの幸せならそっちを選べばいい。
両方選ぶ未来なんて、俺にはあり得ない。
翔太くんが決める事だ。俺に選ぶ権利なんてそもそもない。翔太くんしか愛せないんだから。
もっと優しく愛せばよかった?
何がいけなかった?
インターホンが鳴りモニターを覗くと、先ほどまで一緒だった翔太くんの姿がそこにあった。
蓮 🖤 『ごめん帰って。しばらく会いたくない』
翔太💙 『開けてくれるまで待つ』
蓮 🖤 『迷惑だ。お願い帰って』
折角の休日が台無しだ。外を見るとどんより曇り空。俺の心と同じ色してる。暫くすると降り出した雨がより悲しさを誘った。
雨が降り出して2時間ほどだっただろうか部屋の窓から外を覗くと 目の前の公園のベンチに見覚えのフードを目深に被った男の子が雨に打たれている。
蓮 🖤 『何で帰らないんだよ』
翔太 side
ベンチに座ってどのくらい経ったかな。急に雨が止んだかと思ったら目の前には傘を差した亮平が立ってた。なんで蓮じゃないの?
亮平💚 『翔太大丈夫?立てる?蓮から連絡もらって迎えに来てって』
翔太💙 『もう、迎えにも来てくれないんだ・・・それだけの事をした。もう許してもらえないんだ』
亮平💚 『翔太?何があったの?とにかく家に帰ろう?風邪ひくよ』
翔太💙 『嫌だここで待つから亮平は帰って。これは俺の問題だから』
亮平💚 『でも、翔太ちょっと?大丈夫しょうた?しょうた!!』
蓮 side
けたたましくインターホンが鳴る。うるさいな何度も押すなよ。モニターには今一番見たくない顔が映し出されている。〝ほっといてくれよ・・お願いだから〟
蓮 🖤 『疲れてるんだ!帰ってくれ』
亮平💚 『開けて蓮、翔太も居るから』
蓮 🖤 『何度も言わせないで帰って迷惑だよ。翔太くん連れてどっか行って』
亮平💚 『翔太意識ない。早く開けて。すごい熱なの!』
先ほど熱っぽかったのを思い出した。風邪気味な上に3時間近く雨に打たれてたんだ。
亮平💚 『蓮解熱剤ある?あとタオルとお水も・・・早くして』
蓮 🖤 『救急車呼んだ方が・・・』
亮平💚 『息はしてる。救急車簡単に呼べないでしょ。毛布とか暖かい洋服ない?』
蓮 🖤 『いや、全部クリーニング出しちゃってて何もないよ』
阿部ちゃんがずぶ濡れの翔太くんの服を脱がせていく。言われたものを阿部ちゃんに渡すと、水を含んで口移しで翔太くんに解熱剤を飲ませている。
俺は何もできずにボーっと突っ立っていることしかできない。カタカタと震える翔太くんは血の気がなく蒼白だ。ずぶ濡れの髪の毛を俺がタオルで拭いた。阿部ちゃんは自分の服を脱ぐと翔太くんに抱きついた。
蓮 🖤 『何してるの阿部ちゃん!』
亮平💚 『ちゃんとその目で見ておくんだね。蓮には翔太を愛する覚悟がないんだよ!』
震える翔太くんを温めるように阿部ちゃんが体を擦り付けてる。ほんの少し唇に色が戻ると翔太くんが意識を取り戻した。
翔太💙 『蓮』
亮平💚 『翔太わかる?もう大丈夫だから。ここ蓮の家だからね安心して寝てていいよ』
翔太💙 『蓮…寒い…寒い』
亮平💚 『蓮の名前呼ぶ翔太を抱く気持ち、蓮には理解できないでしょ?いつだって翔太は蓮が一番。分かっていても翔太から離れられない。俺もどうかしてる』
阿部ちゃんは泣きながら翔太くんを抱きしめて温め続けてる。大事な物を取られないように、子供が宝物を隠すように小さくなった翔太くんを愛おしくそうに抱きしめている。
蓮 🖤 『俺が変わるから、そこどいて』
亮平💚 『今更何?電話を俺にかけた時点で蓮は俺に翔太を託したんだよ。バトンは受け取った。覚悟がないのにこれ以上翔太に触れないで。好きや愛だけでは翔太を幸せになんて出来ないんだよ。このまま抱いてもいいけど?そこで見とく?』
翔太💙 『蓮、、れん…』
蓮 🖤 『俺を呼んでる。阿部ちゃんごめん。そこ俺の場所だ』
阿部ちゃんは傷ついた目をしてる。こんなになってまで俺の名前を呼び続ける翔太くんを不憫に思っているのだろう。優しく大きな手で翔太くんの頭を愛おしそうに撫でると、脱いだ衣服を手に取りベットから降りた。〝隣の部屋にいるからなんかあったら呼んで〟そう言って部屋を後にした。
翔太💙 『寒い….うぅぅぅ゛』
カタカタと震える翔太くんが、涙を流して手を彷徨わせている。
翔太💙 『れん….待って….うぅぅぅ゛行かないで…』
衣服を脱ぐと翔太くんに跨り背中を掬うと抱き寄せ、背中を摩った。
蓮 🖤 『ここに居るから。どこにも行かない』
翔太💙 『うぅぅぅ゛れん…れんなの?』
蓮 🖤 『うん、そうだよ』
翔太💙 『許して….お願いごめんなさい….ごめんなさい』
蓮 🖤 『翔太くん・・・』
阿部ちゃんの言う〝覚悟〟の意味も〝許して〟と懇願する翔太くんの言葉にも正解が見つからないまま、ただただ愛おしい翔太くんを抱いた。寒さに悶え、高熱にうなされる翔太くんが泣きながら必死に背中にしがみついている。意識を手放さないように必死に呼吸を整えながら俺を感じてる。不謹慎なのは分かっている。さっきまで意識のなかった翔太くんを抱くなんて俺こそどうかしてる。でも、今翔太くんを抱かないと後悔する気がした。
翔太💙 『あああぁ…ごめんなさい..』
翔太くんはずっと泣きながら謝罪し続けた。俺は応えることができずに無言で翔太くんを抱いた。
リビングに戻ると、阿部ちゃんが温かいコーヒーを淹れてくれた。キッチンを覗くと美味しそうなスープが出来上がっている。
亮平💚 『普段料理しないから、美味しいか分からないけど・・・翔太が起きたら食べさせてあげて』
静まり返った部屋に、コーヒーを啜る音が響く。
亮平💚 『翔太は?』
蓮 🖤 『解熱剤が効いてる。眠ってるよ。熱も幾分下がってる』
亮平💚 『俺は・・・謝らないよ蓮。翔太から聞いたんでしょ?バカね隠せないんだから』
蓮 🖤 『ずるいって言ったんだ・・・正直に話して俺から許しを乞おうとした。話した方が楽だよねって。俺は翔太くんを責めてばかりだ』
亮平💚 『翔太と別れて蓮。俺が翔太を守るから。俺は蓮みたいに束縛しないし、もっと自由に翔太らしくずっと笑顔でいさせてあげられる』
蓮 🖤 『翔太くんと最後までシタの?』
*亮平💚 『さぁ?それを蓮に応える義務はないでしょ。第一それを聞いてどうするの?だから覚悟がないって言ってるんだよ*』
蓮 🖤 『翔太くんは誰にも渡さない。それだけは譲れない。阿部ちゃんを責める気はないよ。逆の立場ならきっと俺も同じ事をしてるだろう』
亮平💚 『悪いのは俺で翔太じゃない』
蓮 🖤 『阿部ちゃんが守ろうとすればする程、翔太くんを許せなくなる』
亮平💚『今日は帰るけどやっぱり翔太を迎えに来た方が良さそうだ。・・・翔太に申し訳ないから一つだけ・・・挿れてない。俺を拒んだ。蓮の名前を叫びながら喘ぐ翔太に挿れる程、俺も腐ってない。でも次は最後までするから』
阿部ちゃんが帰ったリビングに雨音だけが部屋に響いた。降り続く雨の音に梅雨の訪れを感じる。一向に止むことのない雨が全てを流してくれればいいのに。
今俺の頬を伝う涙を拭ってくれる人はいない。
コメント
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この回とか、マジで阿部ちゃんの愛深くて泣ける💚
めめあべでしょぴを取り合うストーリーがとにかく新鮮だし、いつか書きたいなと思う。 この話の抱くって、暖めてるってことだよね?え?性的な意味?
【愛すると言う事】 こちらをメインstoryに変更しました🙇♂️ 雨模様呼んでくださった方すみません💦 愛していただける作品づくりに励みますので応援いたたげると嬉しいです💙