昼は、気持ちのいい青空が広がっていたのに
夜は土砂降りの雨
俺は雨の中、1人、佇んでいた
目の前に広がる光景を見つめながら
目の前は、色とりどりの傘で埋め尽くされている
でも、その中で一際目立つ傘があった
色は紺色だけど、俺の目にはそれしか入っていなかった
傘に入っているのは2人の男女
背の低い女の人が傘に入り
もう1人が傘を持っている
その、男の人は、
「ひかる__」
俺の、彼氏だった
俺が呟いた名前はすれ違う人々に吸い込まれ、彼らには届かない
2人は壁際により、楽しそうに笑いあっていた
それもそうか、
俺らは、男同士だし
照も、俺なんかより女の人の方が良かっただろうに
所詮は、男同士なんだから
同性で恋なんか、できるはずがない
なのに、
諦めきれない
今もこうやって、彼らを見つめている
雨で髪が、服が濡れるのも構わず
ただ、見つめていた
すると、照だけがこちらに向かってきた
女の人は近くにあったコンビニに走っていった
俺は、動けなかった
照がこちらに目を向ける
俺はまずい、と思って目を背けるけど、完全に目が合った
俺は、ずっと下を見ていた
でも、俺の視界に靴が入り込み、冷たい雨が遮られた
顔を上げると、彼の顔があった
「風邪ひくよ」
そう言ってふんわりと微笑む
でも、俺はそんな笑顔を信じられなかった
俺の事なんか、もう好きじゃないんだ
でも、なんでこんなに優しくするの?
ねぇ、なんで?
色んな想いが混ざりあって、
それが涙となって出てくる
「どうした?」
俺の涙を拭おうとして近づいた手を、俺は払い除ける
「え、?」
俺は何も言わずに走り出した
「ちょっ……!!」
彼は追いかけてきた
なんで、そんなことをするの、?
俺の事なんか、好きじゃないくせに__
段々と人気がなくなり、もう今は誰もいない
俺らを除いて、
「なんでっ……」
「それはこっちのセリフだよ」
息を整えながら言う
振り向き、彼の目を見る
「さっきの人と仲良さそうだったな」
「あれはッッ……!」
「もういいよ、」
「言い訳なんか、聞きたくない」
そう言って、また、彼に背を向ける
「待って…!!」
腕を掴まれる
「離して」
「違う、あれは、浮気なんかじゃない」
「じゃあ、あれは誰だよ」
「……」
彼は俺から目をそらす
「ほら、やっぱり言えない」
「言い訳なんか、聞くんじゃなかった」
「時間の無駄だった」
「妹だよ」
俺の言葉に被せるように言う
「俺の、妹」
「…また、言い訳かよ」
「違う!!」
「なんなら、今確認したっていい」
そう言って、スマホを取り出し、誰かに電話をかける
『もしもし?』
女の人の声が聞こえる
「あのさ、お前って俺の妹だよな?」
『え?何当たり前のこと言ってんの?笑』
「ほら、」
どうだ、と言うように俺に目を向ける
「さっき俺と一緒にいたよな?」
『いたよ?今帰り道だけど』
でも、この人が嘘をついているかもしれない
俺の思いが通じたのか、
「ビデオ通話にしていい?」
『え、なんで?』
「俺の彼女が妹だって信じてくれなくてさ」
『彼女なんていたっけ?』
『まぁ、いいけど』
そう言って、ビデオ通話にする
画面に現れたのは、
『うわっ、びしょ濡れじゃん』
『傘は?』
「ちょっとあってね、」
間違いなく、さっきの人だった
『ふーん』
『風邪ひかないようにね』
「うん、ありがと」
『てか彼女は?』
「え?ここにいるけど」
そう言って俺は照に背中を押される
「彼女の佐久間大介」
『……え、え、そういうこと?』
なんかニヤニヤしてる気がしないでもない
「なにニヤついてんだよ」
『別に〜?』
『じゃ、もう家着くから』
「うん、ごめん、ありがと」
『はーい、またね〜』
「また、」
通話が切られる
「ほら、言った通り」
「……」
俺は、申し訳なくて、
目を下に向ける
すると、彼に抱きしめられる
「えっ……ちょ……」
「…俺、正直嬉しかった」
「何が…」
「嫉妬、してくれるんだなって思って」
「嫉妬してんの、俺だけかと思った」
「…何それ笑」
思わず、笑ってしまう
「ねぇ、」
「ん、?」
「不安な時は、今みたいに言葉にして」
「そうしたら、俺が不安を取り除いてあげるから」
「だから、」
一旦、そこで言葉を切って、俺の目を見る
「俺と、これからもずっと一緒にいてください」
その言葉が、妙に心に響いた
心がじわじわと暖かくなって、
温かい涙が溢れ出る
「はい…!!」
今できる精一杯の笑顔を作る
そして、彼の胸に顔を埋める
「やっと見れた」
耳元で囁かれる
「何を…?」
「笑顔が。」
「…お前のせいだかんな」
「ふはっ笑ごめんごめん」
「ん、」
「…!?」
笑ってる彼の唇に、俺の唇を重ねる
「…珍しいじゃん」
「たまには、ね?」
「そうだね」
そう言って、また、笑顔を見せてくれる
その笑顔が、本当は、大好きなんだ
そして、雨が降り注ぐ中、俺たちはもう一度、唇を重ね合わせた
一生、離れないと誓って__
『はいオッケー!!』
声が響き渡る
照はすぐに俺と距離を取る
……なんか視線感じるんですけど
振り返るのが怖いって人生で何度感じることなんだろう
あんまり感じることないよな
そして、勇気を振り絞って振り向く
すると、そのまま死ぬんじゃないかっていうぐらいの視線を感じる
いや、もう死ぬかもしれない
その出処はもちろん康二
「……こぉ〜じぃ〜」
最大限の愛想を振りまいて康二に近づく
そして、康二に抱きつく
力を最大限出して
そうでもしないと照が殺される
やめろ、早まるな康二
「さっきのめめの気持ち、分かったかもしらんわ」
康二のものとは思えない低い声で言う
さっきとは阿部ちゃんと康二でやったやつ
抱き合った2人をめめが引き剥がしたやつ
あれはまだいい
こっちは……
もう……
KISSまでしちゃってるから……
うん……
わかるっちゃ分かる
分かりたくないけど
康二から殺気が溢れ出てる
照は、逃げてる
照なら康二止められんじゃね
そう思って康二を見れば怖いことこの上ない
これは照でも無理だ
コメント
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やっぱり、ニコイチは神すぎる♡ ニコイチって唯一無理だよね、マジで
ニコイチィィィィィ!!!!! 好きです((唐突))
好きィィィ♡!!