『貴方想い、散りゆく恋』〜身分違いの恋だとしても〜※6話の後の主様とそれぞれの担当執事で番外編を作ってます。
番外編 〜フルーレ side〜
『主様、新しい生地を仕入れたんです。コレで主様のお洋服を作りますよ!』
『フルーレ…うん。ありがとう。』
(笑ってくれているけど、まだ元気なさそうだな……。)
地下執事部屋で俺は布を広げ主様と談笑していた。
『主様にはこの色がいいと思って…。』
『フルーレ。無理に私のこと元気づけなくてもいいよ?』
『え?』
『フルーレに申し訳ないよ。私の個人的感情にフルーレまで巻き込む訳には…。』
『…。』
俺は布をテーブルに置く。そして、主様の頭を撫でる。
『何言ってるんですか。俺は執事です。
落ち込んだ時こそ、俺を頼ってくださいよ。』
『フルーレ…。でも…。』
『俺は主様に頼られるのが嬉しいんですよ。執事としても。男としても。』
ニコッと微笑む。
『…分かった。そしたら…。この新しい布で……私へ洋服作って欲しい。』
『はい!よろこんで!他に何かありませんか?ここはこうとか…。』
『うーん、そしたら…。』
主様に頼ってもらうことこそ、俺の生きがい。貴方の笑顔が私は大好きですから――。
番外編 〜ベレン side〜
『よしよし…。今は俺に甘えていいからね。』
別邸2階の俺のベットに座り、膝枕をする。
『ありがとう…ベレン。』
『ん。少し落ち着いた?』
『うん…。』
『ふふ、良かった。俺でよければいつでも甘やかしてあげる。』
『…ベレンはどうしてここまでしてくれるの?』
『え?』
(そんなの…主様が好きだからに決まってる。…だけど、そんなこと言えるわけない。)
『執事だからだよ。主様が泣いてるのが嫌だからね。』
『そっか…。』
俺の気持ちを伝えられたらどれだけ楽だろうか――。
『ありがとね、ベレン。』
私は起き上がる。
『あ、う、うん。』
『私、諦めないよ。フィンレイ様が
どう思ってるのか……ちゃんと確かめる。』
『そうだね、それが一番いいかも。』
ズキズキと胸が痛む。
『じゃあそろそろ部屋に戻るね。』
『……。』
――行かないで。
グイッ
俺は主様を引き止める。
『ベレン…?』
『…俺じゃダメかな?』
『え……?』
『俺なら泣かせないし、ずっと甘やかしてあげられる。だから…。』
『ベレン……。』
私はベレンの手をそっと握る。
『私もベレンのことは好きだよ。でも…。私はフィンレイ様が好きなの。だからベレンの気持ちには応えることはできない。』
『っ…。ありがとう、主様。ちゃんと返事してくれて。』
『うん。』
わだかまりが消えた気がした。ずっとモヤモヤしていたものが、綺麗にかき消されて――だけどそれが少し悲しくも思えた――。
番外編 〜ルカス side〜
主様に本当の事を話すべきだろうか。
執事としての一線を越えてるのかもしれない。
これは私の我儘。伝えてしまえば、貴方はもう私の事は見てくれないでしょう。
私は貴方の執事としてすべきことをするだけ。
コンコンッ。
『はい。開いていますよ。』
ガチャ
『夜遅くにごめんね。ベリアン。』
『ルカスさん…?』
私はベリアンの部屋を尋ねた。
『明日…グロバナー家に行こうと思ってるんだ。』
『!フィンレイ様のこと。ですね。 』
『うん。主様のことを傷つけたことは許す訳にはいかない。主様の執事としてちゃんと話さないといけないからね。』
『分かりました。明日の朝、皆さんを食堂に集めましょう。』
『あぁ。ありがとう。』
……なんて。2人が両想いなのは私だけが知る事実。このままでもいいなんて思ったけど、私が望むのは主様の笑顔……それを守るためなら私は自分に嘘を吐く。
翌朝――。
『主様はまだ寝ています。今のうちに話すことを話しておきます。』
『ルカスさんから話は聞いています。フィンレイ様に話をするんですよね?』
『うん。主様の執事として話をしておかないと。』
『フィンレイ様にも何か事情はあるんだろうが、主様を泣かせたのは許せないな。』
『そうだな。グロバナー家の当主として責任はとってもらおう。』
『屋敷を空ける訳にはいかないから…何人かは残さないとね。』
話し合いの結果――。
グロバナー家に行くのはベリアン、ハウレス君、ナック君、ラト君に決まった。
『ラト、貴族に対して失礼のないようにね……。』
『えぇ。大丈夫ですよ。主様が悲しむことはしません。』
『おや、ルカスさんは行かないのですか?』
『私は後から合流するよ。 』
『??』
フィンレイ様が主様を好きというのは
私だけが知ってること。一緒に話に行ったら
ややこしい事になる。
こうして、執事達はグロバナー家に向かう――。
本編へ続く!
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