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一通り報奨金の支払いまで終えて、ジョンが商業ギルドに向かった後。
そういえばC級冒険者の一般的な依頼を、まだ見たことがなかったなと気付いた。
幸い講習生はギルドの事務室付近に見当たらない。
なので俺は、C級の依頼掲示板を見に行ってみる。
なかなか面白そうな依頼が張ってあった。
『採取・捕獲業務(C級・D級)。内容:魚「インガンダ・ルマ」の捕獲。
報酬:250,000円(生食可能)、125,000円(解凍して生食可能な鮮度で冷凍)
依頼元:ホウトン村・猫獣人互助組合
内容:猫獣人特有の病気の特効薬とされている魚「インガンダ・ルマ」の捕獲および配送。
この「インガンダ・ルマ」は海産魚であり、かつてはアクラ沖等で2~3年に一度程度捕獲実績があった魚である。しかしここ数年は水揚げは見られず、猫獣人の間で不安が広がっていた。
「インガンダ・ルマ」を捕獲し、ホウトン村へ配送する。「インガンダ・ルマ」は生食が一番効果がある事から、捕獲後はできる限り生食可能な状態でホウトン村へ搬送願いたい。
なお「インガンダ・ルマ」の詳細については別資料参照』
そう、魚の捕獲という依頼だ。
これこそ釣り人兼冒険者である俺にふさわしい依頼だろう。
しかし俺は「インガンダ・ルマ」という魚を知らない。
だから捕獲可能かどうかも、現時点では判断不能だ。
ここは確認する必要がある。
幸い冒険者ギルドは空いている。
今なら話を聞いても問題ないだろう。
だから俺は依頼票を外して、そして受付へと持っていく。
「すみません。この依頼について詳細を知りたいのですけれど」
「はい……あ、これは、少々お待ちください。担当者を呼んで参ります」
何となく予感がしたが、とりあえず深く考えずに待つ。
一分ほどで予想通りの人が姿を現した。
「これは私が説明するのニャ。という事で、面談室に行くのニャ」
そう、ミーニャさんだ。
「すみません、装備の片付けや収納の最中に」
「いいのニャ。これは猫互助会の業務なのニャ」
狭めの部屋へ入って、そしてミーニャさんは薄手のファイルをテーブル上に置く。
「内容そのものは依頼票の通りなのニャ。そしてエイダンならホウトン村までの運搬も問題ないのニャ。だから必要なのはインガンダ・ルマについてなのニャ。ニャら資料を読むのが一番早いニャ」
そう言ってミーニャさんはファイルをぱらぱらめくり、あるページを開いて俺の方へ向けた。
「インガンダ・ルマの説明ニャ」
どれどれ。俺は精緻なイラスト入りの説明に目を走らせる……
◇◇◇
体長は1m以上、重さも20kg超と大きく、体色は黒茶色。顔というか頭部分はマグロをゾンビにしたような外見か。
この外見と大きさには覚えがある。前世で引きが強いことから、スポーツフィッシングの対象とされていた魚だ。
確かウィークリーバカンスフィッシュなんて呼称でも呼ばれていた気がする。
ただこのウィークリーバカンスフィッシュ、よく似た生態でよく似た形状の魚2種類をまとめて呼ぶ名だ。
片方はオイリーボトムフィッシュ、もう片方はソームスフィッシュというのが一般名だった。その違いは……
念のためにミーニャさんに確認してみる。
「おそらくこれと似た魚は2種類いると思うんです。背ビレや腹ビレから尾ビレにかけて、トゲトゲになっている魚と無い魚が。どちらかなのか、あるいはどっちでもいいのか、わかりますか?」
「その通りなのニャ。エイダン、よく知っているのニャ。まさにその魚で、そしてどっちでもいいのニャ。どっちも食べれば一緒なのニャ」
良かった。この2種類は生息域や習性がほぼ同じなので、釣り分けるのは無理なのだ。
さっき言った以上の違いはないはずなので、多分大丈夫だと思ってはいたのだが。
それにしてもウィークリーバカンスフィッシュが治療薬か。
いったいどういう病気なのだろう。
前の世界ではウィークリーバカンスフィッシュは、あくまでスポーツとしての釣り対象魚だった。
食べて美味しいとは聞いた気はする。
一方で、薬になるという話は聞いた覚えはない。
むしろウィークリーバカンスフィッシュは食べ過ぎると、何かまずいことがあった気がする。
詳しくは覚えていない。
しかしその『まずいこと』故に、ウィークリーバカンスフィッシュと呼ばれていた気がする。
でもまあ、それはそれとして。
「インガンダ・ルマは半常時依頼なのニャ。入手できたら、近くの冒険者ギルドに行って手続きするのニャ。その後ホウトン村へと搬送になるのニャ。エイダンの魔法収納を使うのニャら新鮮さは問題ないのニャ」
つまり期限はなく、いつでも受け付けるということか。
明明後日の22日までは暇だから、まずはこの依頼で動いてみる。
そして万が一3日間で終わりそうに無ければ、また後でと先送りすることが出来るわけだ。
これはこれで、なかなかありがたい。
「わかりました。釣り上げたら、まずは冒険者ギルドに連絡すればいいですね」
「その通りなのニャ。この辺りの海沿いの冒険者ギルドと漁業組合には連絡をつけているのニャ。だから問題はないのニャ」
「わかりました。それじゃ釣れる態勢を作るため、装備を調えようと思います」
「了解ニャ。吉報を待っているのニャ。あと捕れすぎた場合のお裾分けも期待しているのニャ」
それを冒険者ギルドで言っていいのだろうか。
まあ面談室で話している分には他には聞かれないけれど。
さて、インガンダ・ルマことウィークリーバカンスフィッシュを釣るためには、今まで以上の装備が必要だ。
何せこの魚、本来は深海魚。
だからそれなりの場所まで船で出る必要があるし、竿やリール、糸も深海対応の物にしなければならない。