もう明日が誕生日だ。
僕の誕生日は町の祭りがある日なのだ。
ついでに祝日だ。
つまり結構嬉しい。
誕生日に友達と祭りを楽しむ!
それはどんなに幸福か!皆わかるのか!
そういうや竹林さん誕プレくれるって言ってたよな。
ふと思った。
シャーペンとかかなあ。
と何か期待する。
ここ最近は竹林さんと隣の席で何か楽しい。
いつも憂鬱な登校道が色あぜている。
それもこれも竹林さんのおかげだ。
でもきっとこれは恋じゃない。
友達なんだ。
今日。
数分寝坊したがこれは想定内。
ちゃっちゃっと着替えて出かけた。
「竹林さん来てんのかなあ…」
なんて、つい思ってしまう。
今日はいつもより体が軽く、いつもならしない立ち漕ぎもしてしまう。
今日はいいことがある。
そう僕は願う。
着くともう穴山と穴山の連れは来ていた。
連れは雲隠才蔵というまあ、よくわかんない奴だ。
僕はあまり話したことがない。
「よー!」
穴山も今日はノリが良かった。
「さっき射的あったぞ!」
穴山も僕も射的が好きだ。
「行こ!」
すぐ行こうとすると、
「せ、拙者は!」
雲隠が何か言いたそうだ。
「トイレ行きたいです。」
ぷっ………………
「なんでトイレくらいでそんな堂々と…!!」
なるほど、穴山が好きになる気持ちもわかる。
トイレも射的も終わり、
適当にぶらぶらした。
「そういや雲隠って好きな奴いたよな!」
穴山は急な話題展開が少し無茶である。
「ええ!なんで、そんな話に!?」
雲隠も困っている。
でも、
「えー!誰!?」
今日の僕は庇わない。
「教えねえって」
「恋ってどんなんなん?」
何故これを聞いたか僕はわからなかった。
「そうだな、なんか、さ。
一緒にいて楽しいんだよ!」
穴山とは典型的に違う純粋な言葉だった。
それは自分にも当てはまるんじゃないかと脳みその一部で考え出す。
でも結果はでない。
その結果が出る前に竹林さんを見つけたからだ。
「あ、あのババア、来てたのか…」
ムカつく、
「ババアじゃねえよ!!」
やべ、なんでこんなに怒っちまったんだろ。
「な、なんだよ、」
穴山はこちらを睨んだ。
「すまん」
謝る。
「お前やっぱおかしくないか?」
言葉は僕の心臓に刺さる。
「そうかな…」
もう何もかも投げ出したい気持ちだ。
僕は下を向いた。
もう死にたいと思った。
何故こんなにも僕は辛くならねばならないのか。
これは恋ではない。
こんなにも恋は辛く、苦しいものではない。
もっとラブコメ漫画やアニメ、音楽のような美しいもの。
僕はきっとただ変なだけだ。
そう自分に言い聞かせた。
それから三、四時間経った。
竹林さんとは会っていない。
「誕プレ…」
ボソっと呟く。
その言葉は煙のように消えてゆく。
もう穴山たちとは解散となった。
寂しい。
それは穴山たちともっと遊びたかったとかそんなんじゃなかった。
僕は何故こんなにも1人の女性に惑わされるのか。
1人空の下で思いながらチャリを漕ぐ、
キュ、
ガラガラガラガラ
僕は祭りの会場へと戻った。
僕は何かに気づきかけた。
「竹林さんに会いたい。」
これは恋なのかなんなのか僕にはまだわからない。
でもその思いを大切にしたいと心の底から思った。
駐輪場に自転車を置き。
適当にベンチに座ることにした。
竹林さんの姿は見えない。
「もう帰ったのかな…」
その瞬間、竹林さんがトイレから出てきた。
「真田くん!?」
心の底から叫びたかった。
「もう帰っちゃったのかと!」
竹林さんは顔を赤くし、少し興奮気味で話した。
「これ、誕プレ!!」それは真っ赤なシャーペン。
「真田くん、真田幸村知ってる?
真田幸村って赤備えなんだよ?」
僕のそれは戦国武将真田幸村と同じ苗字だからと赤いシャーペンらしい。
「ありがとう!」
このありがとうで僕はわかった。
恋ってどんなものかと。
僕は今恋をしているんだと知った。
僕は竹林さんと一緒に話しながら死にたい。







