テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「(今日、流石に誰かからは誕プレあるよね…?)」
私は、今日という日を恐れていた。
今日は、私の誕生日。
本来ならおめでたい日だが、私には素直に喜べなかった。
なぜなら…
友達から、自分の誕生日を忘れられているかも知れないからだ。
私はクラスの中でも3軍くらい。
大して目立たず、友達も一人二人しかいない。
ましてや、誕生日なんて覚えてもらっていないに違いない。
それにもっと不安な要素が一つ。
私の友達に、すごく関わりづらい人がいる。
一言で言うと、「自己中わがまま女子」。
なんで友達になってしまったんだろうと、今でも後悔し続けている。
それくらい酷くて、自分が良ければ全て良しと思っている。
そんな友達に、誕生日を祝ってもらえるだろうか?
「はぁ……」
重いため息を一つ、吐き出した。
更に、今日は最悪な日だと決定づける事がある。
それは…
七海(ななみ)の誕生日と被っているという事。
七海はクラスの1軍プラスそのリーダーで、私には手の届かない立ち位置。
話したことすら無いけれど、誕生日はなぜかしっかり覚えている。
「(これが、高嶺の花ってやつね… 学校行きたくないなぁ…)」
だけど時は流れる。
視界が歪むくらいの猛暑の中を、20分ほど歩かなければならない。
これが苦痛で苦痛で仕方無い。
意識がもうろうとしつつ、私は学校に向かった。
―――学校に着いて
私は上靴を履き、いつもと同じように階段を上る。
そこで運悪く、自己中女の代名詞・寧(ねい)と出くわしてしまった。
「あ、ね、寧…」
「ん、萌夏じゃん。おは。てか今日ってさ、…」
「!(もしや、覚えてくれてる…!?)」
私は一瞬期待した。
だけどその期待は、すぐに裏切られることになる。
「今日ってさ、七海の誕生日だよねー?プレゼント持ってきてるっしょ?」
「え…」
「は?もしかして無いの?やっばw」
「いや、あ、あるよ!あるけど…すごいものじゃ、無いよ?」
「別に誕プレなんて、凄くなくて良いのよ!ちょ、見せて!!」
そう言いながら寧は、私の持っていた紙袋を強引に掴み取る。
そして何の躊躇も無く中身を取り出し、紙袋を放り捨てた。
「私優しいから、七海に届けてあげる!感謝しなさいよ?ほら、ありがとうくらい言えるでしょ?」
「…ありがとう。」
「そう、それで良いのよ!萌夏みたいなのは、こうして上の立場の人に頼ればいいのよ!」
「じゃあねー!」
寧は、早足で立ち去っていった。
もちろん七海に届けてくれる訳は無いだろう。
だとしても失礼すぎるし。
あの中身は手作りのエプロンで、あれだけは絶対に取られたくなかったのに―――。
それに、私の誕生日は忘れているんだろう。
いや、そもそも知ってすら無いのかも。
「友達って、こんなに浅い関係なの…?」
私は、「友達」という言葉の意味を もう一度考え直した。
―――七海の誕生日会
今日は、七海には内緒で誕生日会を開くことになっていた。
今――昼休みに行うことになっている。
そして七海が居ない間に、皆はどんどん誕生日会の準備を進めている。
「(こんなに大きな行事にしちゃうだなんて、七海は凄いなぁ…)」
少し羨ましく感じたその時、七海が教室に入ってきた。
その瞬間、静まり返っていた教室は一変。
クラッカーの音が鳴り響き、たちまち七海の耳に降り注ぐ。
七海は驚いた表情を見せ、皆にたずねた。
「これ、どういう事…?」
その言葉に、皆は笑いを見せる。
「七海〜w もしかして、忘れてる?w」
「何を?」
「バー・ス・デー!」
「あぁ〜!そう言えば今日だった!忘れてた〜w」
てへ、と言わんばかりの笑顔を見せると、場の雰囲気は和らぐ。
「(こんな存在になれたら…どれだけ良いだろう…)」
私は一人でそう思った。
―――そして、七海には色々なサプライズが待ち受けていた。
バースデーケーキや皆からの祝の言葉…
どれも素晴らしいものばかりで、私は何もそれを知らなかった。
ただ見ているだけだった。
たぶんこの企画を考えたのは陽キャの子たちだから、私は参加さえもさせてもらえない存在に違いない。
なんとみっともないんだろう。
「…」
一人だけ暗い顔をしていると、とある男子生徒が私の耳元で、笑いながらこう話した。
「お前は今ここに居てもしょうがねーから、廊下にでも居たら?」
「! …っ」
意外にもキツイ言葉で、私の心に深く突き刺さった。
「(私って、必要ない人間なの…?)」
私は何も抵抗できなかった。
心に傷が付いた。
だけど…
もう、弱い人間だなんて思わせない…!
私の心は急に燃えてきた。
そして、男子に強い言葉を投げかけた。
「私は死んだほうがマシですか。生きる意味なんて無いんですか…生きる希望を無くすんですか…っ!」
「そんな事言うくらいなら… あんたが廊下に立ってたらどうなのっ!!」
その言葉に、男子は衝撃を受けたらしい。
少し動揺しつつも、言葉を返した。
「は?お、お前何言ってんの?俺は、俺は陽キャなんだし、この企画に関わってるから、抜けるなんて無理に決まってるだろ!
お前みたいな存在、このクラスに居ても居なくても変わらねぇんだよ!!」
「っ…(こんなに楽しい空気なのに、私達だけ荒れてる…)」
私は、ついに廊下に押し出された。
誰も気づいてくれなかったけど、尻もちをついた時、ふと七海の姿が目に入った。
ついに、目がばったりと合ってしまった。
今さっきまで笑っていたのに、私達の現場を見て 真剣な目つきに変わった。
そして、こちらに向かって走ってきた。
場は騒然とした雰囲気になる。
すると、七海は驚きの行動に出る……!
そんな大きな衝撃音とともに、男子生徒は倒れた。
何が起こったのか分からなかった。
そして、七海は私の耳元でこうささやいた。
“アイツらを、私と一緒に成敗させない?”
コメント
1件
ストーリー多すぎ。あと頑張りすぎ