異変発表から2年後。
少し肌寒くなってきた。
リビングには食欲を掻き立てるような香りとトン、トンと包丁で材料を切る少し心地よい音が響く。
あとは塩をちょっとだけかけて、完成。朝ごはんができたのでアメリカを起こしに行く。
昨日の夜、俺の家にアメリカが駆け込んできた。
いつもの屈託のない笑顔も、無鉄砲な発言をする口も、その時は閉じていた。
ただただ頬を濡らし、俺に縋ってきた。
昨日まで全球凍結を回避すべく、研究と対策に奮闘していた彼のそのひどく落胆した様子に戸惑った。
いや、正確には1か月ほど前かもしれない。最近のアメリカはどこか焦っているような、隠したいなにかがあるように見えた。
俺は極力何も聞かず、布団と風呂を貸し、匿った。
「アメリカ、朝だぞ」
「ん~…まだ寝る」
…布団に頭までくるまってしまった……
「起きないと飯冷める」
「あとちょっとだけ…」
「一人で寂しく飯食いたいならいいけど」
「ん゛-、起きる…」
二人でリビングに降り、向かい合って椅子に座る。
「うまそう」
「けっこう上手にできた」
「ふーん」
他愛もない会話をしながら、昨日聞こうと思っていたことをふと口に出す
「そういえば昨日なんで来たんだ?」
「えっ、今聞く?」
「別にいいだろ」
「…あー、俺からは言いたくない。」
そう言い、アメリカはテレビをつける。
映っていたのはニュース番組。
無駄に重い表情のアナウンサーから語られたのは、
「地球は数年以内に必ず凍結する」
という世界の誰もが目を背け続けた事実だった。
宇宙へ逃げる手段は、たとえほかの星に逃げても、環境が悪すぎて意味がないとのことだった。
今までやってたことが、無駄になってしまった上に理不尽な現実とこれから起こることを予想して、逃げることしかできなかったんだろう。
「余命宣告された気分だろ?」
「あー、実感沸かねぇからまだ平気。」
「あっそ」
俺の政府は研究とかやってたらしいが、アメリカみたいに化身自身が関わってるわけじゃないから実感がわかない。
…もうこの事はあまり聞かないでおこう。
全球凍結まで、あと■年■日
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