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――それから、二年。
私は、五歳になった。
「セラフィナ様、髪が少し伸びましたね」
リリアが、櫛を通しながら言う。
「ほんと?」
「はい。とても綺麗ですよ」
(きれい、また いわれた)
最近、よく聞く言葉。
鏡の中の私は、
前よりも少しだけ――
(おねえさん)
赤い瞳は変わらない。
でも、前よりはっきりしている気がする。
魔界城を歩くと、
みんな、目を逸らすようになった。
(なんでだろう)
「セラフィナ様、こちらです」
クロウが、少し前を歩く。
背中が、大きくなった。
(くろう、おっきい)
私は、ちょこちょこと後を追う。
「クロウ」
「はい」
「みんな、にげてく…」
クロウは、少しだけ言葉に詰まってから答えた。
「……怖いのです」
「わたし、こわい?」
「いいえ」
即答だった。
「あなたは、誰よりも――」
言いかけて、止まる。
「……大切です」
私は、よく分からないまま頷いた。
「ふぅん」
その時。
城の門が、静かに開いた。
「……?」
見覚えのある気配。
(あ)
胸が、少しだけ高鳴る。
「……ひと?」
人間界からの使節団。
その先頭にいたのは――
「ノエル」
自然と、名前が口から出た。
王子ノエル・クラーク。
十歳だった彼は、
今は十二歳。
背が伸びて、
顔つきも、少しだけ大人びている。
「……セラフィナ」
その声が、少しだけ震えた。
「大きくなったね」
「うん」
私は、にこっと笑う。
その瞬間。
周囲の空気が、揺れた。
(……まずい)
クロウの気配が、一段階、鋭くなる。
「また、あえた」
「……あぁ」
ノエルは、ゆっくり膝をついた。
目線を合わせるために。
(なんで ひざ つくの)
「……アルトも、来てる?」
「いるよ」
ノエルの後ろから、
もう一人の少年が現れる。
勇者アルト・ヴォイド。
彼もまた、背が伸び、
目の奥に、強さを宿していた。
「……久しぶりだな」
少し照れたような声。
「ひさしぶり」
私は、二人を見比べる。
(ふたりとも、かわった)
でも――
(ちゃんと、わかる)
「私たちおともだちだよね?」
五歳の私が、首をかしげて言うと。
ノエルとアルトは、同時に息をのんだ。
「……あぁ」
「もちろんだ」
その返事が、
どこか必死だったことに、
私は気づかなかった。
ただ。
胸の奥が、また
ぽわっと あたたかくなった。
それが何なのかを知るのは、
もう少し先の話。
こうして。
五歳になった姫は、
何も知らないまま――
また、運命と再会したのだった。