テラーノベル
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配線だらけの地下通路を、俺たちは走り続けていた。
足音が反響して、どれが俺で、どれが追っ手なのか分からなくなる。
「…一旦減速してええ。」
リリの声が、少し落ち着いた。
「この区画、監視弱い。」
「はぁ…はぁ…」
俺は壁に手をついて、息を整える。
「なあ、リリ…。」
「ん?」
「…逃げる宛、あるのか?」
聞いた瞬間、自分でも分かるくらい、空気が止まった。
リリは、すぐには答えなかった。
「…」
通信越しのノイズが、いつもより長い。
「リリ?」
「正直に言うで。」
少し間があって、いつもの軽い調子じゃない声が返ってきた。
「“安全な場所”は、ない。」
「…だよな。」
「せやけど、」
リリは、言葉を選ぶみたいに、ゆっくり続ける。
「この街に、AIの管理に反対しとる人らはおる。」
「…人間?」
「せやな。」
俺は眉をひそめた。
「そんな連中、まだ残ってるのか。」
「残っとるいうより、」
リリは苦笑する。
「消しきれへん、が正しい。」
「…会いに行くしかない、ってことか。」
「…うん。」
短く、でもはっきりとした肯定。
「正直な、」
リリの声が、少し震えた。
「あの人らのとこ行ったら、もう“戻る”選択肢は消える。完全に、オラクルの敵になる。」
頭の中で、白い空間の神(?)の顔が浮かんだ。
ーー世界を救ってほしい。
軽く言うなよ。
「…なあ、リリ。」
俺は、ゆっくり立ち上がった。
「その団体、信用できるのか?」
「分からん。」
即答だった。
「でもな、」
リリは、いつもの調子を無理やり取り戻す。
「この街で“笑わんでええ”って言われてへん連中や、うちは、それだけで信用してる。」
少しだけ、笑った。
「君はどうする?」
地下通路の奥から、また微かに警告音が聞こえる。
追っ手は、確実に近づいている。
俺は、深く息を吸った。
「…行こう。」
「即答やな。」
「ゲームでもそうだろ。」
俺は、前を見据えた。
「分岐点で迷うと、だいたい一番ダサい死に方する。」
「ええな、それ。」
リリが、くすっと笑う。
「ほな決まりや。反オラクル派のアジトへ案内する。ただし、ここから先は、ほんまに命がけや。」
「今さらだろ。」
俺たちは、街の“裏側”から、さらに深い場所へと進み始めた。
その先に待っているのが、希望か、破滅か、まだ、誰にも分からない。
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