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【それで?】
🦈「でさ、そのときみこちゃんがね」
🍵「うん」
カフェのテーブルを挟んで、向かい合う。
甘い匂いと、ざわめき。
いつも通りの、ゆるい時間――のはずだった。
🦈「ほんと自由なんだよね、あの子」
こさめは楽しそうに笑う。
🦈「この前も急にさ――」
🍵「……うん」
すちは相槌を打つ。
でも、少しだけ間がある。
🦈「で、結局こうなって――」
🍵「……へぇ」
会話は続いているのに。
なぜか、どこか噛み合っていない。
🦈「‥すっちー聞いてる?」
🍵「聞いてるよ」
🦈「ほんとに?」
🍵「ほんとに」
淡々とした返事。
こさめは少しだけ首をかしげるけど、また話を続ける。
🦈「それでね――」
(……長い)
すちは、こさめを見ながら思う。
楽しそうなのはいい。
笑ってるのもいい。
でも。
(ずっと、その話)
自分のことじゃない。
こさめの視線も、言葉も、全部“別の誰か”に向いている。
🍵「……」
すちはカップに口をつけながら、少しだけ考える。
🦈「でさ――」
まだ続く。
🍵(……いいけど)
別に、止める理由はない。
ない、けど。
🦈「――だからほんと面白くて」
こさめが笑う。
その瞬間。
すちは、ふっと手を伸ばした。
🦈「……え?」
こさめの口元。
ちょん、と。
🍵「……クリーム」
指先で、軽くすくう。
🍵「ついてた」
🦈「……っ!?」
一瞬で、思考が止まる。
何が起きたのか理解する前に――
すちはそのまま、指を口元に運んで。
ぺろ、と。
舐めた。
🍵「……甘い」
🦈「……は?//」
こさめ、完全に固まる。
音も、空気も、一瞬止まったみたいに。
🦈「……す、すち、さん?」
🍵「なに」
何事もなかったみたいな顔。
でも、目だけ少し細めている。
🦈「……なにしてんの」
🍵「クリーム取っただけ」
🦈「そうじゃなくて!」
声が一段上がる。
周りの視線を気にして、慌ててトーンを落とす。
🦈「なんで……今……//」
🍵「……」
すちは答えない。
ただ、じっと見ている。
さっきまでとは違う、少しだけ強い視線。
🍵「……それで?」
🦈「……え」
🍵「さっきの話」
🦈「……」
続けろ、ってこと。
でも。
🦈(無理……)
頭が真っ白。
さっきまで何話してたかも、飛んでる。
🦈「……な、なんで‥その」
小さく、問い返す。
すると、すちはほんの少しだけ肩をすくめた。
🍵「……長かったから」
🦈「……は?」
🍵「ずっとその子の話」
🦈「……」
図星。
言い返せない。
🍵「……別にいいけど」
続けて言う。
🍵「こさめちゃんが楽しそうなら」
その言い方が、やけに静かで。
🦈「……」
こさめは、少しだけ黙る。
🦈「……やきもち?」
ぽつりと、試すように言う。
🍵「……さあ」
否定もしない。
肯定もしない。
でも。
さっきの行動が、全部答えみたいで。
🦈「……ずるい」
🍵「なにが」
🦈「そういうの」
🍵「普通に取っただけ」
🦈「普通じゃない!」
また声が大きくなる。
慌てて周りを見て、こそこそ小さくする。
🦈「……ほんとに、なに」
🍵「……」
すちは少しだけ視線を逸らしてから、
🍵「……今は俺といるんだから、」
小さく言う。
🦈「……え?」
それだけ。
こさめは少しだけ視線を落として、
🦈「……ごめん」
小さく言う。
🍵「別に謝らなくていいよ」
🦈「でも……」
🍵「……それで?」
もう一回。
今度は、少しだけやわらかい声で。
🍵「さっきの続き」
🦈「……」
さっきより、近く感じる距離。
🦈「……もういい」
🍵「なんで」
🦈「忘れた」
🍵「嘘でしょ」
🦈「ほんとに」
ちょっとだけむくれた顔。
でも。
🦈「……じゃあ」
こさめが少しだけ身を乗り出す。
🦈「別の話する」
🍵「うん」
🦈「すっちーの話」
🍵「……なにそれ」
少しだけ驚いた顔。
🦈「いいでしょ」
🍵「……いいけど」
🦈「さっきのお返し」
にやっと笑う。
さっきとは逆の、少しだけ余裕のある顔。
🦈「……んで、なに話せばいいの」
🍵「なんでも」
🦈「雑だね」
🍵「いいの」
🦈「んじゃあ‥すっちーがこないだ公園で小学生に轢かれたところの話でもするかぁ」
🍵「‥なんで知ってるの」
🦈「な〜いしょっ」
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