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「現在ハッカーは武装集団と共に逃げている」
「まぁ。それは大変。アレクシア。仕事の話もう聞いてる?」
「はい。ひととおり」
「オッケ~。そう!昨日話してたブツそこに置いてあるから帰り持って帰ってね~」
お店のカウンターには鮮花のアニメ漫画オススメコレクションセットが紙袋に入れられておいてあった。
「パノプティコンシステムからの情報は?」
「既に最優先事項として首都圏中央連絡自動車道のネットワークにアクセスして、ドローンを併用して逃走ルートを限定してます」
「張り切ってるね。珍しい~」
「シュタージシステムに一瞬でも差し込めるハッカーだ。是が非でも殺しておきたいのだろうな」
「道理で」
「思ったより、日本の平和にとって危機的状況なのだろう。敵は5人から10人程度。全員プロだ。死神部隊のものと思われる完全武装したアンドロイドも確認した。更に武装装甲車だ。ライフルも確認した。気を付けろ」
「ヘビィな任務だぜ」
「パノプティコンシステムからドミネーターのモードをデコンポーザーに固定。強襲型ドミネーターを装備したエージェントαも出動している」
「エージェント?」
アレクシアが首を傾げる。
「簡単に言えば男の子版エージェントだね。生物学的に女より男のほうが力強いから、攻撃的な任務を担当している。後女の子のほうが都会に紛れても油断させやすいっていうのもあるし」
「なるほど」
「アレクシア、ちゃんと昨日届いた次世代型制服を着た?」
「はい」
「よし、銃も実弾とドミネーターを持ったし、閃光手榴弾と手榴弾も持った。瞬間展開装甲盾も動く。準備完了。行くよ、たきな」
鮮花とアレクシアはリニアモーターカーで羽田空港に向かっていた。席でたきなは作戦説明の確認を行っている。
「相手の予測逃走手順は以上です。最後は羽田についたところを一斉に攻撃して対象を抹殺します……って聞いてますか?』
「うん。依頼主凄腕ハッカーでしょ ?どんな人かな~? やっぱり眼鏡で痩せて小柄な男かな?カタカタ。ッターン!」
「アニメ映画の見過ぎですね」
アレクシアは自身の昼食に口をつける。
「アレクシア。何それ?」
「ゼリー飲料です」
「いやいやたきなさ~今の状況分かってるのかな?」
「ハッカーを抹殺するべくリニアに乗ってます」
「そう! その前にお昼食べとかないと」
「今食べてます」
「え~? それが? リニアだよ? 駅弁食べようよ~ちょっと食べる?」
「結構です」
「まーまぁまぁまぁ! そう言わないで! 煮卵おいしいよ。はいあ~ん」
鮮花の煮卵がたきなの口に運ばれる。
「おいしい?」
「おいしいです」
「はいおいしい~!」
いえーい! と鮮花は笑顔を浮かべる。
「降りますよ」
「おー!」
駅弁を食べ歩きながら、リニアモーターカーを降りた。
「そういえばタナトスさん、例の写真はどうなったの?」
『ふぁ、え? ああ、そうね。イレギュラーから提出された例の写真の解析結果が出ました、やはり作戦開始時刻の3時間前とのことです、偽の取引時間を掴まされるとは……我々もヤキが回ったな、結構ボケてるな。特定できるか? まだ時間がかかりますが必ず。みたいな会話してるんじゃない?』
「タナトスさん物真似うまい!」
『褒められても嬉しくないわね。これくらい合成音声なら簡単に再現できるし』
「いや〜司令と秘書さんの台詞の選択上手かったよ。実際言ってるって」
『まぁ、私は天才だし。これくらいはね』
「千束、来ましたよ」
「うわ、ゴツい車……って!?」
二人は羽田空港に入り、二階に潜んで入口の真上に立つ。羽田空港には一般市民が沢山いるが、それに紛れまれた対ハッカー殲滅部隊が各地に配置されているのが見て取れた。
そして爆発と共にハッカー達は現れた。
武装集団は武装装甲車に装着されているガトリング砲やロケットランチャーを乱射しながら羽田空港に突っ込んだ。一般市民を虐殺しながら、飛行機へと直進していく。
ガラスや建物が粉々に砕けて、そこらじゅうに火の手が上がる。
「ちょっとちょっと!! ドミネーター!!」
『執行モード、デストロイ・デコンポーザー。対象を完全排除します。ご注意ください』
「いいから!! 撃って撃って撃って!!」
「まさかこんな方法で抜けてくるんなんて」
羽田空港に待機していた対ハッカー殲滅部隊が次々と強襲型ドミネーターや、持ちうる全ての火器で武装装甲車を攻撃する。
エネルギー砲撃が数十台の武装装甲車を爆散させているが、自律運転させているのか絶えることなく武装装甲車が入り込んでくる。
「こんな物量作戦なんて!?」
アレクシアが銃撃しながら悲鳴のような声を上げる。
鮮花は端末に向かって叫ぶ。
「駄目です!! 数が多すぎます!! 他の部隊も攻撃してますが、圧倒的に人数が足りていません!!」
『ここには約百名の重装備部隊を配置していたのだけれど、それを上回る数で突破してくるなんてね』
「タナトスさん!! 羽田空港の全部の飛行機を破壊して!! 海外に逃げられるよりはマシ!」
『パノプティコンシステムやシュタージシステムからも同様の提案があったわ。そこにまもなく多数のミサイルが到着するわ。およそ30秒後』
「私達に死ねって!? 遅いよ連絡!! アレクシアへ!! 逃げるよ!!」
「はい!!」
二人は窓ガラスをぶち破り、たきなをつれて二階から飛び降りる。リコリス制服のパワーアシストシステムによって衝撃もなく着地する。そして走って、羽田空港から離れる。
「アレクシアっ危ない!!」
「えっ!?」
アレクシアを地面に叩きつけて、瞬間展開装甲で銃撃を防ぐ。
そこには人形の巨大ドローンの姿があった。
《お前で28人目、恐れるな、死ぬ時間が来ただけだ》
「死神部隊!? 何故ここに!? 羽田空港に突入したんじゃないの!?」
『情報解析が終わったわ。戦闘用ドローン・アーマードコアVD型・軽量二脚・パルスマシンガンとショットガン両手に装備。肩部にはヒートロケットと、サブウェポンにヒートブレードを所持しているため瞬間火力が高い機体。N・死神部隊3番機よ。油断していると死ぬわ』
「了解! ありがとうタナトスさん」
「くっ、どうします? 鮮花」
「正面対決、援護して」
「なっ!? 戦闘用ドローン相手に無謀です!」
「大丈夫、私はイレギュラーと呼ばれる所以、見せてあげるから』
どの道、取れる選択肢は多くない。迷って被害を大きくするよりは、賭けでも決断した方がいいだろう。
「アレクシア、弾薬は残ってる?」
「リロード用のならスモーク一発、通常弾頭が二発です!」
「おーけー。なら、行くぜ」
鮮花の持つアサルトライフルの弾が無くなった。鮮花が手早くそれを投げ捨て、ハンドガンに持ち替えてから両手のそれをバラ撒く。
弾幕の勢いが弱くなってしまったからか、更に距離を詰められた。油断すると、死神部隊・Nの一足飛びでブレードの射程内に入れられてしまいそうだった。
ハンドガンを乱射、牽制の弾幕とグレネードの弾頭を撃ち抜くという2つの目的を達成する。
炸裂した弾頭から煙が一帯を包み込み、三人の姿も煙に紛れて見えなくなった。時間にすれば一瞬だが、その一瞬を見逃す無能は此処にいない。
《煙幕か》
鮮花は早くは走り出した。鮮花が勢い良く煙の中に飛び込み、敵に目掛けて一目散に突撃する。戦闘用ドローンと鮮花はドミネーターを使った近接戦闘で死神部隊三番機・Nと渡り合う。
《つ、強い》
もちろん彼とて側を通る敵を見逃しなどしない。足音から進行経路を予測して、その道を塞ぐように移動すると、予想通りにやって来た鮮花に向かってブレードを振った。
「アレクシア!!」
「了解!!」
鮮花の弾丸がブレードと衝突し、大きくのけ反る。
とっつき。正式名称はパイルバンカー。
スカートで隠れる太ももに巻き付けられたホルダーに格納してあった、小さなそれを手に取ると、迷うことなく鮮花は突っ込んだ。
《なッ……!?》
反応が遅れてしまう。咄嗟にブレードを振り回して距離を取らせようとするが、その頃には全てが遅かった。
回避行動を取ろうにも、アレクシアの援護射撃が邪魔で動く事も出来ず──
「くっらええええ!!」
速度が乗った渾身の右ストレートにパイルの破壊力が乗り、凄まじい威力を持った一撃が彼の腹部を捉えた。
対人でぶつけていい威力ではない。マトモな人間であれば、ぶつけた場所に大穴が空いて即死である。しかし、そこは戦闘用ドローンだ。まだ半壊させるが、完全破壊とまではいかない。しかし衝撃までは無効化できない。
装甲を粉砕されながら吹き飛ばされた際に片手から離れ、空中を舞ったブレードを鮮花は掴んで距離を詰めた。
「……!」
《おおおおお》
地面に倒れた際にメインカメラを強打したのか、相手は焦点が定まっていない。そして、そのすぐ近くには、もう一振りのブレードが転がっている。どうやら倒れた衝撃で手が離れたようだった。
それを取ろうと地面に這わせていた腕部を切り飛ばし、鮮花が戦闘用ドローンのコアにブレードを添える。
決着はついた。
「終わりだ」
メキャッ、と音と共に死神部隊三番機・Nの闘用ドローン・アーマードコアVD型は機能停止した。
背後ではミサイルが到着し、羽田空港が爆炎を上げていた。
「これで終わり、かな」
『周囲に微量の生命反応を確認。気をつけて』
「了解」
タナトスの指示に従って、生命反応がある場所に近づくと、そこには黄色のキャリーケースがあった。
アレクシアが銃を構え、鮮花が開ける。
そこには女の子がいた。
「誰、ですか?」
「目標のハッカー・ヴォルデモートだ」
「ヴォルデモートは数十年前からいる老人では?」
「襲名式なんでしょ。さて、殺すか捕獲するか。逃げる前に殺すか、撃って」
アレクシアが発砲した。
女の子は血を流して死亡する。
『状況終了。お疲れ様』
「ひー、しんどかった」
「ですね」
「帰って美味しいもの食べよう。それにもしかしたらこの功績でファーストクラスになって本部に復帰できるかもよ?」
「本当ですか!?」
「こんな大事件引き起こしたヴォルデモートを始末したんだもん。報酬は多いよ〜」
「期待してます」
二人は雑談しながら帰宅の準備を進めた。