テラーノベル
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翌日、社内。
——空気が、違う。
「……」
ジョン・ドウはデスクに座りながら、キーボードに触れては止まり、触れては止まりを繰り返していた。
(昨日……キス……)
思い出した瞬間、手が止まる。
(やばい……普通に話せる気がしない……)
少し離れた席。
ジェーンも、いつも通り資料を見ている——
ように見えるけど。
「……」
ページが、微妙に進んでない。
(……昨日)
思い出してしまう。
「……」
ほんの少しだけ、耳が赤い。
その時。
「いや〜おはようございますカップルさん」
にやにやしながら現れる
シェドレツキー。
「やめてください!!」
ジョンが即反応。
「なんの話かな〜?」
完全に楽しんでる。
「で?」
ぐいっと顔を近づける。
「進展あった?」
「ないです!!」
即答。
「嘘つけ」
「ないですって!!」
(あるけど!!)
「……うるさい」
ジェーンが低く言う。
でも今日は——
少しだけ効きが弱い。
「いやいやいや」
シェドレツキーは止まらない。
「顔で分かるって〜」
「分からない」
「分かる」
完全に絡みに来てる。
「昨日——」
言いかけた、その時。
「——ねぇ」
低い声。
空気が一瞬で変わる。
振り向くと。
そこに立っているのは——
ブライト・アイズ。
腕を組んで、じっとこちらを見ている。
「……」
シェドレツキー、固まる。
(来た……)
「またあんた?」
ブライトが少しだけ首を傾ける。
「懲りないね」
「いや〜これはその〜」
珍しく言葉が詰まる。
「うちの妹に何してんの?」
いつもの一言。
でも今日も圧が強い。
「雑談です!!」
即答。
「雑談ねぇ」
じっと見られる。
数秒。
沈黙。
(……これ、逃げた方がいいやつでは……?)
普通ならそう判断する。
でも——
「……」
シェドレツキー、なぜか一歩前に出る。
「……あの」
「なに」
ブライトが視線を向ける。
「ちょっと気になってまして」
「は?」
ジェーンが横で固まる。
「いや、その」
深呼吸。
「あなたのこと」
空気、凍る。
「……は?」
ブライトの目が細くなる。
完全にロックオン。
「強くてかっこいいし」
止まらない。
「ちょっと怖いけど、それもいいというか」
「おい」
小声で止める
デュセッカー。
「死ぬぞ」
「黙ってろ今いいとこなんだよ」
(良くない)
「……で?」
ブライトが一歩近づく。
圧が増す。
「何が言いたいの」
「……今度、時間ありますか?」
「は?」
完全に直球。
ジェーン、無言。
ジョン、フリーズ。
デュセッカー、顔を覆う。
数秒の沈黙。
ブライトはじっと見つめる。
「……あんた」
ぽつり。
「命知らず?」
「違います」
即答。
「普通に誘ってます」
また沈黙。
そして。
「……面白いね」
小さく笑う。
「普通、逃げるでしょ」
「いやまあ……ちょっと怖いですけど」
「正直だね」
「……でも」
ブライトが少しだけ考える。
「今はいいや」
あっさり。
「え」
「妹優先だから」
ジェーンを見る。
「……」
ジェーンは何も言わない。
「でも」
ブライトが指を立てる。
「その度胸は覚えとく」
にやっと笑う。
「また今度ね」
軽く手を振る。
去っていく。
嵐みたいに。
静寂。
「……お前」
デュセッカーが呆れる。
「何やってるんだ」
「いや〜ワンチャンあるかなって」
「ない」
即答。
「……」
ジェーンがちらっと見る。
「……バカ」
ぽつり。
でも。
ほんの少しだけ、口元が緩んでいる。
「……すみません」
ジョンが小さく言う。
「なんで」
「いやその……」
「別に」
短く返す。
でも。
その後。
ほんの一瞬だけ。
ジェーンがジョンの方を見る。
「……昨日のこと」
「……っ」
心臓が跳ねる。
「……忘れてないから」
小さく。
でも、はっきり。
「……はい」
それだけで十分だった。
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