私の名前はリッカ。
孤児だったところを院長先生に引き取られて育った。
私の生まれた国は平和な国で戦争なんかなくて……だから私がこんな危険な仕事に就いているなんて信じられなかった。
だけど現実は非情なもので、今まさに私は危険極まりない遺跡調査の仕事に就いていた。
「ねぇ、大丈夫?」
「え? あぁうん! 平気だよ!」
そんな私に声をかけてきたのは同僚のイカリだった。
彼女は私が今一番会いたくない相手でもあった。
「おい、お前!なんで泣いてんだよ!」
「……なんでもないよ。」
「嘘つけ!泣き虫め!」
そう言って私の背中を叩く彼女。
その衝撃に思わず咳き込む。
私はいつもそうだ。
小さい頃から何かあればすぐ泣く癖があった。
泣けばどうにかなると思っていて、それが間違っているなんて知らなかった。
だから、よく母さんや父さんに怒られてばかりいた。
『あんたが泣くたびにこっちまで恥ずかしくなるわ!』
『もう二度と人前で泣くんじゃねぇぞ?』
でも、私は泣くことをやめられなかった。
だって、誰かに優しくして欲しかったのだもの。
彼女はそう言って泣いた。
誰からも愛されず、蔑まれて育った彼女にとって、その優しさは麻薬だったに違いない。
だから、彼女が求めたのは、ただそれだけのことだったのかもしれない。
『ねぇ、お願いだよ』
『私を助けておくれよ』
『ねぇったら!』
暗闇の中、必死に手を伸ばしながら懇願する幼い姿。
『助けてくれるよね?』
それはきっと、彼女に巣くう闇そのものなのだろう。
『ねェ……?──』
***
「ん……」
意識を取り戻し、ゆっくりと目を開けた時。最初に見えたものは見知らぬ天井であった。
ここは一体どこなのかと疑問に思いつつ起き上がろうとするが、何故か体が動かない。よく見ると体中をロープのようなもので縛られているようだ。
そこでようやく自分が誘拐されたことを思い出した。
(そうだわ!確か突然現れた黒い化け物に捕まって……)
意識を失う前に見た光景を思い出して、彼女は思わず息を飲む。
(あのままじゃ本当に死んでいたかも!?)
そう思った瞬間、背筋に冷たいものが走った。
そして同時に思い浮かぶのは、さっきまで一緒にいた仲間たちの顔だった。
まず最初に思い出したのは、黒髪の女性――マシロのことだ。
彼女も自分のように化け物に襲われてはいなかっただろうか? 慌てて周囲を見渡すと、少し離れたところに倒れている人影を見つけた。
その人物を見て、安堵のため息をつく。
そこに倒れているのは間違いなくマシロ
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