扉を開けて中に入る。
「ダリルっ! 取りにきたよ!」
無愛想なあのダリルの顔をしても今日のわたしのワクワクは下げることは出来ない。
「こっちだ」
それだけで外に出る。つまり練習場に用意してくれているのだろう。
以前と同じく的に大楯が置かれてあるが少し遠い気がする。とはいえここは街中、せいぜい15mといったところだ。
練習場の奥、人が邪魔しないところに飾られた弓。
手持ちの弓より立派で落ち着いた緑が美しい。ダリルが魔獣に持っていったものよりも大きい。
「まず俺が引いてみる」
なるほど、いきなり渡されるよりも性能を見せてくれた方が比較出来てわかりやすい。
というかまた、あの芸術のような筋肉の躍動を見れることに軽くテンションがあがる。うそ、めっちゃあがる!
ダリルが弓を構え、矢をつがえる。
ぐっと引く動作に前のめりに全てを網膜に焼き付けるつもりで見ていて、おかしな事に気づく。
その身には充分な力が込められ続けておりそれは想定している結果をたやすくもたらすはずが、時が止まった様に進まない。やがて
「──これはお前専用の弓だからな」
諦めて手渡してきた。
あの日の剛弓と違い潰されることはないけど……。
「なんてもの作ってくれたの⁉︎ ダリルに使えない弓がわたしに使えるわけないじゃないっ!」
叫んでしまった。無愛想だけでは下がらないハイテンションもさすがに振り切って逆サイドへ突き抜けた。
今日の朝からのご機嫌MAXはすべて新しい弓が手に入るからで、それが使えないものであれば、怒らないわたしも怒髪天かもよ⁉︎
ダリルはその無愛想を崩すことなく、アゴをしゃくってやってみろとジェスチャーで促す。
だいたい何言っても仕方ないのは巨鳥で空飛んでる時もそうだったからこういう時はその通りにするのが正解なのだ。
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