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私
にとって最も親しい友は恋人でも家族でもない。
親友と呼ばれる存在であろうか? 少なくとも私が大切に想っている存在であることに変わりはないのだが……
果たしてこの想いは友情と呼べるものではあるだろうか? 私は今年高校に入学したばかりの15歳。
つまりは高校生デビューということになる。
これまで通っていた中学校では友達らしい友達はいなかった。
別にいじめられていたとかではないけれど、誰かと親しくなる機会が無かっただけだ。
クラス替えがあった直後ということもあり、まだ誰も知り合いがいない状態だった。
とはいえ同じ中学出身の生徒がいたこともあって徐々にではあるが新しい環境にも慣れてきた頃のことである。
ある日の下校途中のことだった。
「あのさぁ、突然だけど俺達付き合わない?」
目の前にいる男子生徒から唐突に告白された。
顔立ちはそれほど悪くはないが特別良くもない平凡なタイプだと思う。
特にこれといった特徴の無い普通の少年であった。
おそらく今まで一度も話したことも無い間柄だと記憶している。
それなのに何故このような事態になっているかというと―――
***
<数分前>
「……なんであんたみたいな奴がモテんのよ?」
「知らんわ! こっちだって好きでモテてる訳じゃないんだよ!」
昼休みになると僕はいつものように親友である桐島拓哉と共に昼食をとっていたのだが、今日に限っては彼の周りに人が集まってきてしまったせいで完全に一人ぼっちになってしまった。
一応こちらにも話しかけてくれるクラスメイトがいないわけではないが、やはり皆遠慮しているようで遠巻きに眺めているだけだ。
ちなみに桐島は女子からの人気が高い。
背が高くて運動が出来て成績も良いうえに顔立ちも整っているため、入学してからまだ一ヶ月しか経っていないにもかかわらず既に二桁を超える告白を受けているらしい。
しかし当の本人は異性に興味が無く、誰とも付き合ったことがないそうだ。
それどころか未だに初恋すらしていないとか。
一体どういうことなのか理解に苦しむが、そういう人種がいることも事実なので否定はできない。
とはいえ、さすがにここまでくれば気になってしまうというものだろう。
そこで僕は思い切って聞いてみたのだ。
お前はどうやって女の子を口説いてるんだ、とよく訊かれるのだが答えは非常にシンプルだ。
「デートして食事でも奢ればいいんじゃない?」
という感じである。
これは別に自慢とかそういうわけではなくて、普通に事実を述べているだけであって決して高尚ぶっているわけではないことを理解してもらいたい。
例えばお金持ちであれば高級レストランへ連れていけば喜ばれるかもしれないし、お金が無くても手作り弁当を用意したり、サプライズパーティーを開いたりするだけで十分に喜んでもらえると思う。
つまり相手のことをどれだけ大切に想えるかという気持ちの問題なのであって、そこに性別なんて関係ないんです。
それに世の中には同性同士で愛し合っている人達もいるらしいですしね。
というかそもそも同性愛とかいう概念自体をおかしいと思うんですよ。
だって普通に考えてみてくださいよ? 例えば自分が異性に対して恋愛感情を抱いたとするじゃないですか。
でもその恋心を成就させるためにはまず付き合って恋人同士になる必要がある。
そうなるともうその時点で自分は異性を愛していることになるんじゃないでしょうか? じゃあその先に進んだ場合は? さらにそこから進んで結婚した場合、そこでようやく自分も同性愛者の仲間入りということになるのでは? いやむしろそれだと順序が逆な気が……
「あの~、すみませーん! 聞こえてますかぁ?」
そんなことを考えながらぼけぇっと窓の外を見つめていた時、突然誰かの声が教室内に響き渡った。
驚いて視線を前に向けてみるとそこには一人の女子生徒の姿があった。
肩にかかるくらいの長さの明るい茶髪をした彼女は背が高くスタイルが良く、顔立ちも整っていてかなり可愛かった。
ただ一つだけ残念なことと言えば胸の大きさが平均以下ということだろうか。
まあそんなことはどうでもいいんだけどさ。
とりあえず今問題なのは彼女の存在そのものについてだ。
え? 誰だよお前って?