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怪物
『ここは…?』
『…』
『君は…?』
『…』
[彼]はしっかり僕を見据たあと、ゆっくり深呼吸して言った。
『お眠り…今は目覚める時じゃない。』
「はっ…!」
一人だけの部屋に荒い息が響く。カーテンが防ぎきれない陽光が僕を刺している。
また、また始まった。昨日も一昨日もあった今日が。
「おはよう。」
もちろん、返してくれる人なんていない。今日は朝早く一番乗りで教室に入った。教室には光で反射した綿ぼこりと使い古された机と椅子が、黒板には落書きが。そして辺りには一番乗りにしか感じられない新鮮な空気が満ち足りていた。
また、始まる。
休み時間、眠たかったから寝ようとして
ある話が耳に入った。
「またA国が爆発予告したんだって~w」
「まじ?wあの国が?www」
「しかも!アレが落ちてくるのここら辺なんだってwww」
「まじ?wwwウケるwww」
「大変らしいよwww」
「えーっwワンチャンデマじゃね?www」
「マジマジwww」
ふぅん。あの非公認国家、また何かしてかすんだな。気を付けとこ。最近ニュースで話題になっているらしいな。あの爆弾の爆風に当たると大体死ぬらしいけどたまーに自我を失った化け物になるらしい。そいつら人間だったころの記憶を無くして本能のまま動いてるっぽい。しかも銃とか刀とか効かないらしい。中でも人喰種?ってやつは死体とか生きた人間とかむさぼり食ってるらしいけど。詳しい所は知らない。
いつも通り。
変わらない毎日。
騒がしいクラスメイト。
美味しい給食。
難しい勉強。
いつも通り。
いつも通りだったら、良かったのにな。
五時間目、ボーッと先生の話を聞いているとスマホの警報が鳴り響いた。皆のスマホからも鳴っていた。そこであの休み時間の話がフラッシュバックする。嫌だ…嫌だ死にたくない。恐怖が皆を襲う。そして僕は見た。A国のアレが降っていく所を。僕らが当たり前に過ごした町は光と煙に包まれ、僕はふわふわとした感覚に包まれた
「あっ、これ死ぬな。」
自分の死さえ他人事のように感じてなんだかむなしくなった。
死にたくないな…
こんな世界
こんな展開
逃げてしまえたら…
『出口はあるよ。』
まばゆい光に囲まれて暖かいなにかに包まれたような気がした。
ふと目を覚ましたらそこには学校なんてものなくて見渡す限り荒れ地が続いていた。足元に水溜まりがあったからなんとなく覗いてみた。
そこには
『夢の中のアイツ』が水面に写っていた。
その瞬間背中に激しい痛みが走った。僕はそのあと意識を手放した。
そう、あれが。あれが僕…いや、「僕ら」が出会う引き金となっていた。まさかこんなことになるなんて。
『こっちが夢だったら良かったのに。』
人々は僕らのことをこう呼んだ。
怪物と。