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来たときは気づかれないように高い塀を乗り越えてきたけど、帰りは二人で中から鍵を開けて堂々と外に出た。
ただ、門の外に例の警部が待ち構えていた。雄大邸内の異変に気がついたわけではなかろうが――
「さっきのお嬢ちゃんじゃないか。この屋敷から出てきたが、いったい何の用があったんだ?」
「ちょっと回覧板を届けに」
陛下、さすがにその言い訳は無理がありすぎます! そもそも暴力団員のような反社会勢力は町内会に入れないはずでは?
「回覧板? それなら仕方ないな」
陛下の雑な言い訳を信じるの? セランティウスの関係者なだけあって、この警部も実は残念な人なのかもしれない。
「あれ。さっき会ったときは白いドレスだったのに、今は赤いドレスなんだね」
赤いドレスなんじゃない。白いドレスが血に染まっているだけだ。百人のヤクザを切り刻んだ凶悪犯罪者だとバレれば陛下が逮捕されてしまう。わたくしの心はパニックを起こしたが、陛下は涼しい顔をしている。
「お色直しです」
お色直し? 結婚式じゃあるまいし。でも警部は興味なさそうにそれもスルーした。夜でよかった。明るければさすがに人の血だとバレていたに違いない。
「それよりお嬢ちゃん、中でひどいことされたりしなかったか?」
それは大丈夫。陛下はひどいことをした方だから。屋敷の中にいる百人は全員入院が必要な重傷を負っている。入院期間は短い者でも数週間、長い者なら数ヶ月にも及ぶはずだ。