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ピコピコ
暗闇の中で何度かスマホが震える。
その音を何度望んでいたことだろう…!
こんなに楽しい眠れぬ夜はいつぶりだろうか。
今すぐにその通知を読みたい気分を押し殺して、私は眠る選択肢をした。楽しみは明日にとっておきたい。
日付が変わり、アラームが鳴ると私は直ぐに目を覚ました。
通知。そうだ通知を確認しなければ。
朝食を作るでもなく、課題の確認をするでもなく、私の頭はそれでいっぱいだった。
SNSを開く。
案の定、賞賛の声が沢山だ。ああ、この時のために生きているようなものだった。
私の脳は脳内麻薬をドバドバと分泌してその褒め言葉の嵐を受け止めていた。
しかし、それはたった一つのリプライでぴたりと止まった。
【なんか、美大に進学したにしては前よりも画力落ちている気がします…。お怪我でもしたんですか?すごく心配です…。】
何だろうかこれは。
すごく心配です?…余計なお世話すぎない?
私の頭は賞賛の嵐に浸ることから、このリプライにだけムキになることを選んでしまった様だ。
【美大だからといって、いつも絵を描いている訳では無いので、、今やっと絵を描ける時間が取れるようになったので、これはリハビリみたいな物です!】
イライラする気持ちを押し殺しながら、やんわりやんわりと答えた。
スマホの画面を暗転させ、ベッドに放り投げ、途方に暮れる。リプライの言葉が頭の中で何度も木霊した。
画力落ちてる気がします、画力落ちてる気がします、画力落ちてる、落ちてる、落ち…。
ぴこん。
暗転していたスマホに、通知が一通届いた。
リプライから1分も経っていないのに、もう返信が来たのだ。
【美大生なのに、絵を描く時間が無いなんて事があるんですか…?】
だああ。
うるせえなコイツ!
私はもう、そいつに返信することを諦めて、ブロックをした。
朝は頭に浮かんだ絵のラフ画を描いてから学校に行こうと思ったのに。
パソコンを立ち上げる気すら失せた私は、まだ時間を余しているのにヤケクソのまま外へ繰り出した。
行くあても無いので近所のカフェに入り、トールサイズのカップ一杯で大盛のラーメンと同等のカロリーをした甘ったるいフラッペを啜った。
頭の中はこの一言でいっぱいだ。
「クソが。」