テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
53
翌日昼前に達也が来てくれた。
ドアを閉め、玄関に立つ彼に――――
「わざわざ、来てくれてありがとう」
「少し、落ち着けたみたいでよかったよ」
「うん、まぁ……」
リビングにあるいつもの指定席の椅子に腰かける達也を尻目に、私は
キッチンに立つ。
どうしよう……。
気心の知れた友人でもあり恋人でもある彼が来てくれることに安堵感さえ
抱いていたというのに、何? これ。
初めての感覚。
彼と向かい合えない自分に、自身の戸惑いが大きくて――――
どうしよう。
気持ちがざわざわして、ドッキンドッキンして顔も強張りそうになるし
まったく落ち着けなくて、困る。
今、コーヒーを淹れて出せば、絶対手元が震えてしまう自信が100%ある。
だって、キッチンに立った今でさえ、身体中が緊張の塊になっているのだから。
こんなの誰に対しても経験がなくて、初めての経験だけど、身体中にこわばりが
出ているのが分かる。
どうして達也に対して緊張するのだろう。
後ろめたさなのか?
私はどうしても、ローテーブルを前にしてソファに腰掛けている彼に、いつものように
左手にあるベッドに腰掛けて向き合い、対峙することが怖くて仕方ない。
どうしよう。
そうだ、昼前だしコンビニへ行って缶コーヒーとお弁当を調達してこよう。
そうすれば時間稼ぎできるし、気持ちも身体も整えられるかもしれない。
うん、そうしよう。
「達也、私、ちょっとコンビニへ行ってくるね。
口に入れるもの買ってくるわ」
「悪い、俺、何か買ってくればよかったな」
「ううん、そんなぁ。
全然ぜんぜん。すぐだから、ちょっと待ってて。ごめんね」
私は薄物のジャケットを被り、そそくさと家を出た。
◇ ◇ ◇ ◇
そこには――――
ハイツの玄関を出たあと、ハイツ全体を捕らえると共に自分の部屋を見上げ
大きく息を吐く、里穂の姿があった。
コメント
1件
えっ、もう次の回?! 里穂のあの初めての緊張感、めっちゃ伝わってきた〜!! 達也くんが来てくれてるのに身体こわばって逃げちゃうとこ、すごくリアルで切ない😭💕「自信ある」って言い切ってるあたり里穂ちゃんらしいし、最後のハイツ見上げるシーンで胸がぎゅってなったよ…! 次が気になりすぎる〜⋆♡
AZ

91
277
ユナ語尾にゃん&関係者再募集中
97