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岩本「・・・おい」
背後から、怪訝な顔をしている岩本が声をかけた
楽屋でスマホを見ていた佐久間が、突然の声に驚いて振り返る
佐久間「照かぁ、なんだよ?」
岩本「・・・見えてんぞ、首んとこ」
佐久間「え、え、え?・・・・・・あぁ!!!!」
指摘の内容に気づいた佐久間は、途端に真っ赤な顔で手で首の後ろを隠した
目黒のキスマークだ
髪に隠れてると思っていたが、運悪く隙間から見えていたものを岩本が見つけてしまった
佐久間「あ、あの、これは・・・、虫が・・・」
岩本「・・・今、冬だと思うけど」
佐久間「う・・・・・・」
岩本は呆れながら、自分のネックウォーマーを渡した
佐久間「お、サンキュ・・・」
岩本「せめてハイネックとか着てこいよ」
佐久間「・・・ごめん」
佐久間はもうなんの反論もできなかった
岩本「・・・てか、今から撮影なんだけど」
佐久間「・・・・・・はい」
岩本「どうすんだよ、ヘアメイクで絶対バレるぞ」
佐久間「・・・どうしよう」
岩本「なんでそんなリスクつけてくるんだよ・・・」
ぐうの字も出ず、佐久間はただ俯くだけ
指摘はごもっとも、自身らの欲望だけを優先した結果だった
このご時世、いつどこから情報が漏れるかわからない
恐ろしいことに、スタッフですら信用がない時もある
なのに、こんなリスクをつけて仕事に来るなんて、噂を流されるためとしか思えない
10年以上も芸能活動やってるのに、こんな初歩的ミスをやらかすとは岩本も思ってなかった
岩本「佐久間だけのせいじゃないのは、わかってんだけど」
佐久間「いや、オレも油断してたんだよ・・・」
目黒を庇ってるんじゃなくて共犯だ!と、佐久間は言いたかったが、情けなさを感じて、それ以上は何も言えなくなった
その様子に岩本は、呆れ顔でため息をついた
岩本「・・・今日の撮影のテーマ、春先のデートコーデだったはずだから、タートルネックとかがあるかもな」
佐久間「そ、そうだったっけ・・・?」
岩本「ちゃんと事前資料見とけよ」
佐久間「ご、ごめん」
岩本「今日は知り合いのメイクさんもいるから、こっそりファンデーションテープもらっといてやる。口が固い奴だから大丈夫だろ」
佐久間「・・・何から何まで、ホントにごめん」
佐久間は面目なさすぎて、再び俯いた
岩本「・・・しっかりしろよ、アイドルなんだろ」
佐久間「・・・・・・」
岩本「俺はお前らに、変な噂の標的になってほしくねぇんだよ」
佐久間「・・・・・・」
岩本「わかってんだろ、憶測とか妄想で偽情報が流れたら、下手すると芸能人生終わっちゃうのも」
佐久間「・・・うん」
岩本「きちんと仕事をやった上で、みんなに報告してケジメつけろよ」
佐久間「え・・・・・・」
想定外の岩本からの言葉に、佐久間は顔を上げた
岩本「変な噂になるくらいなら、ちゃんと公表しろって言ってんだよ」
佐久間「照・・・」
岩本「でもオンオフは分けろ、お前ら2人とも」
佐久間「はい・・・」
鋭い眼差しで釘を刺してくる
威圧感に、佐久間は思わず小さくなってしまう
そのオーラを纏ったまま、岩本はヘアメイク担当と会うために楽屋を出ようとして、踵を返した
ドアノブに手をかけた時、扉に向いたまま小さな声でつぶやいた言葉を、佐久間は聞き逃さなかった
岩本「・・・幸せになってほしいんだからな」
さっきまでの厳しい声ではなく、どこか優しくて、温かいものだった
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この日の夜、佐久間は目黒に対して、当面の間は手出し禁止だと言い渡した
ただ、その「当面」は、結果的に3日程度で終わってしまい、目黒にとっては長く感じたようだが、佐久間にとっては短いものだった
(当然のように、ガマンが効かずに押し切られてしまった)
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コメント
1件
ああ、岩本さん……! 最初は呆れと叱責でガツンと来たのに、最後の「幸せになってほしいんだからな」が優しすぎて胸がギュッとしました。アイドルとしての立場も、先輩としての愛情も、両方抱えて佐久間を守ろうとしてるところが本当にじんわり沁みます。顔が赤くなったり俯いたりする佐久間の情けなさも、すごくリアルで、目黒くんへの「手出し禁止も三日で終わり」のオチに思わず苦笑い。この距離感、めちゃくちゃ好きです。