テラーノベル
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深夜三時。
五つ星ホテルの心臓部とも言えるコントロールルームは、幾十ものモニターが放つ青白い光だけが不気味に揺らめく、薄暗く静謐な空間だった。
佐久間「ん〜、やっぱり阿部ちゃん、制服の着こなし天才的だなぁ……」
ヘッドセットを傾け、いくつもの監視カメラの映像が並ぶ巨大なマルチモニターを食い入るように見つめているのは、セキュリティスタッフの佐久間大介だ。本来は館内の不審者や安全を監視する仕事なのだが、今の彼の視線は、最上階のスイートルームが並ぶ高級廊下の映像に完全にロックされていた。
画面の向こう、カチッとした高貴なウェイターの制服を完璧に着こなし、ワインや高級料理を乗せた銀のワゴンをスマートに押しているのは、ルームサービス担当の阿部亮平だ。一見、誰にでも優しくスマートなホテルマン。だが、カメラの向こうで1人きりになった瞬間、阿部はふと、廊下の天井隅にある防犯カメラのレンズへと真っ直ぐに視線を合わせた。まるで、モニターの裏側で自分を熱心に「監視」している恋人の存在を、すべて見透かしているかのように。阿部は美しい微笑みを崩さないまま、ワゴンの影で、自身の指先をすっと三本立ててみせた。カメラ越しにいる佐久間にだけ分かる、秘密の合図。
――「30分後、そっちに行く」
というサインだった。
佐久間「うわぁぁ! 今、絶対に俺のこと見て合図したよね!? カッコよすぎて心臓に悪いわ!」
佐久間は画面の前で一人、顔を真っ赤にして身悶えした。無自覚に可愛いけれど、阿部に対する執着は人一倍強い佐久間にとって、この画面越しの逢瀬は、深夜勤務の何よりの特効薬だった。その時、コントロールルームの自動ドアが静かに開き、台車を押した男が入ってきた。
ラウール「佐久間くん、お疲れ様。ルームサービスへ届ける予定の追加アメニティを、台車で運んできたよ」
現れたのは、ホテルのポーターを務める最年少のラウールだ。上品な制服をまとい、業務用のリネンやアメニティのミネラルウォーターをテキパキと棚に収めていく。
しかし、その脳内は100%ガチの腐男子だった。ラウールは台車の影から、佐久間がさっきまで阿部のモニターを凝視していた様子をバッチリと捉えていた。
ラウール(……きた!! 監視する側(猫)が、実はスマートなウェイター(鬼)の手のひらで完璧に転がされている最高の設定……! 30分後にここが『開演』するわけね。僕、アメニティの在庫チェックという名目で、絶対にここを動かないから……!)
ラウールは心のメモ帳に最高級の期待値を打ち込みながら、部屋の隅の暗がりに台車を止め、気配を完全に消した。そして正確に30分後。カチャリ、とコントロールルームの重い防音ドアがノックされた。
阿部「夜勤、お疲れ様。ルームサービスです」
入ってきたのは、トレーにアメニティの高級ミネラルウォーターと、深夜の軽食を乗せた阿部だった。
佐久間「阿部ちゃん! 待ってたー!」
佐久間は嬉しそうに椅子から飛び起き、阿部へと駆け寄る。
阿部「佐久間、お腹空いたでしょ。これ、僕からの差し入れ」
阿部がスマートにトレーを机に置くと同時に、佐久間は慣れた手つきでコントロールパネルを操作した。自分たちのいるこの部屋の、録画スイッチを「オフ」にするためのルーティンだ。カチャリ、と録画停止の赤いランプが消え、完全な死角が完成した、その瞬間。阿部の雰囲気がガラリと変わった。いつもの優しい笑顔の裏に隠されていた、猛烈な独占欲の妖気が溢れ出す。阿部は佐久間の細い腰をがっしりと抱き寄せると、そのまま巨大なコントロールパネルの機材へと力強く押し付けた。
佐久間「ひゃっ……!? あ、阿部ちゃん……?」
ボタンやスイッチが並ぶ冷たいパネルの上で、佐久間は阿部の強固な身体に完全に閉じ込められる。驚きで丸くなった佐久間の瞳をじっと見つめ、阿部がその耳元へ唇を寄せ、低く楽しげに囁いた。
阿部「……It’s showtime.」
それは、いつもは「見守る側」であるはずの佐久間大介を、阿部亮平という一人の男の熱い視線と愛撫で完全に支配するための、真夜中の開演の合図だった。
佐久間「阿部ちゃん、待って……! そこ、録画は止めたけど、他のモニターが全部生きてる……!」
阿部「いいよ、誰も見てないから。佐久間はいつも、カメラ越しに僕のことばかり熱心に『監視』してるでしょ。……今度は僕が、佐久間の可愛いところ、1秒も見逃さずに全部監視してあげる」
阿部は佐久間のパニックを愛おしむように微笑むと、運んできたお酒の甘い香りと、アメニティタオルの清潔な香りが満ちる薄暗い空間の中で、佐久間の唇を深く、深く塞いだ。無数のモニターが放つ青白い光に照らされながら、完璧なスマートさを脱ぎ捨てた阿部の激しい愛に、佐久間はただ翻弄され、熱い吐息を漏らすことしかできなくなる。
ラウール(……はぁぁぁ、尊すぎて脳内の機材がショートする! 監視カメラの死角を作ってからの、コントロールパネル押し付け目隠しハグ……! ポーターの特権(暗がりの台車の影)で、最前列で拝ませていただきました。この画面越しの立場逆転ノロケ、今夜の日記に永久保存……!)
アメニティの棚の影に隠れ、完全に気配を消してスマホの網膜にそのすべてを焼き付けていたラウールが、音もなく涙を流しながら大興奮していることなど、二人は知る由もなかった。きらびやかなホテルの静寂の裏側で、青白い光の檻に閉じ込められた狭い空間の中、2人だけの特別なショータイムは、夜が更けるまでどこまでも甘く熱く、続いていくのだった。
雑談部屋でもお知らせしましたが夏休みが明けるので
毎週火、水、金、土の20時くらい
に更新します!
これからもお願いします
コメント
1件
うわあああ尊すぎる!!😭💕 監視する側の佐久間が実は阿部ちゃんの手のひらで転がされてる構図、最高すぎる…!「It's showtime.」の一言で完全に空気変わるの、反則級にエモいです!!ラウールの隠れオタク視点も面白すぎて、アメニティの影で涙しながらスマホに収めるシーン、めっちゃ共感しちゃった…笑 ホテルの裏側で繰り広げられる秘密の逢瀬、続きが気になりすぎます!!めかぶぷりんさん、素敵な作品をありがとうございます🌸✨
すのだて⛄️🍙
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