サイド ユメ
いつものように、あたくしは学校へ登校いたしましたわ。
いつもと違ったのは、クラスにレンがいなかったことと、レン以外のほとんどの人があたくしより早く登校していたことでした。
「おはよーございますですわ、皆さん!」
「……ユメちゃん」
言いにくそうにあたくしに近づいてきたのは、隣の席の女子でしたわ。
「……ユメちゃんが、自分で自分をいじめてたって、ホントなの?」
「?!」
なんで、どうして、そんなことを?
あたくしは、絶対にバレないようにしていましたのに。レンにバレたから、細心の注意を祓ったはずなのに。
「男子が、岡島さんと話してたのを見たっていってたんだけど……」
「っあ……」
視界に入るのは、クラスメイトの顔、顔、顔。
その表情から入ってくるのは、数多の思考。
『嘘って言って!』『気に食わなかったんだよね〜』『うちには関係ない』『痛いのに、そんなことするわけないじゃん』『俺、確かに聞いたんだぞ!』『早く静かに本読みたい…』『女子こっわww』『うざっ……』
嫌だ、こんなの、知りたくなかった!!
あたくしの、視界が滲む。自然と、体が震えてくる。
……きっと、これが自業自得というやつなのですわね。
自分の限界を知らず、高望みしたあたくしへの罰。人を嫌い、傷つけようとしたあたくしへの制裁。
あたくしは、あたくしのことを愛してもらいたかっただけでしたのに……。
それが、いけなかったというのでしょうか?
もう、あたくしの、居場所はどこにもないのですわね。
「……失礼、いたしますわ」
言い争いで騒がしくなった教室を尻目に、あたくしは小声でそう言って階段を駆け上がりました。
決心が鈍らないうちに。
神様がいらっしゃるのなら、もし、生まれ変われるのなら、
今度は、もうちょっとでいいですから愛される子になれたらいいですわね。
「アハハハハハ……」
乾いた笑い声と階段を登る音だけが聞こえますわ。
屋上のドアの鍵を回して開け、力を入れて押しました。
こんな日に限って、快晴なんて、ついているのかいないのかわかりませんわね。
……それもどうでもいいこと、ですけれど。
あたくしは涙を拭い、無理矢理口角を上げて、重量に逆らうように思いっきりフェンスを押し蹴りました。
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