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「真ちゃんを乗せてあげてください、熊に襲われちゃいます」紗栄子は観光客達に訴えた
「乗せたいけどもう乗れないよ、熊もあの人の存在に気付いてないから、やり過ごすしかない」
紗栄子から目を逸らし観光客の一人がそう言った、他のものも恐怖のせいか何も口にしない。
頭が、、、スマホを開くにはあの頭があれば顔認証で解除される。。
何を馬鹿な事を考えているだ、生命かけるところじゃないだろ。
ニュースで熊の被害を聞くのは大抵老人だ、人類として最高潮に達している今の肉体なら、熊はおよそ150cm、俺は180cm俺に分が有るはず。
いやいや、相手は日本で確認されている唯一の猛獣だ。
「あの人、ちょっとずつ熊の方に向かっていってない?」
「何を考えているだ。。。」観光客には、真一の行動が気狂いのように見えていた。
パキっ!
真一は足元の木の枝をふみ、その音に気が付き熊が真一の方を向く。
「やばい。。。」真一は思い出した、熊は逃げるものを追う、死んだふりは無意味。
「わぁー!」大声を上げながら熊の方に走り出す。
熊は立ち上がり両手を広げて威嚇し出した。
「グァー」熊も負けじと唸り声をあげ、前足を地面に着くとそのまま真一めがけて走り出す。
「あの人、熊に食われるぞ」
「真ちゃん、逃げて」
「ピーポー、ピーポー」
警察車両と救急車両のサイレンが響きわたる、熊は方向転換し、トンネルの向こう側に走りだした。
「熊が逃げた」
「あの人、そのまま熊を追いかけてトンネルに入って行ったぞ」
真一は恐怖よりも熊が置いて行った、黒い塊を確認しにいったのだ。
「何やってんだ俺は」
熊はトンネルの出口の茂みの奥へと消えて行った。
「はぁ、はぁ、はぁ」
暗いトンネルのなか、マネキンのカツラのようになっている、頭部の前まできた。
明らかに髪の毛だ、乱れて顔ははっきり見えないが、人の頭だ。
真一は恐る恐る手を伸ばし、毛先を指でつまむ。ゆっくりとちょっとずつ毛をかき分ける。
「大丈夫か?」
トンネルの入り口付近から警察官と思われる人が、真一に向かって話かける。
まずい時間がない、勇気を振り絞り、髪をかき分け、顔があらわになった。
「彼方。。。お前なのか」
頭部は行方が分からなかった大輝の彼女の彼方であった。
「おーぃ、大丈夫なのか?」警察官達がこちらに迫ってくる。
「彼方、ごめん」
真一は、正気のない彼方の頭を掴み、スマホのロックを解除する。
時間がない、着信履歴を確認する。大輝や知らない女友達らしき履歴しかない。
警察官がすぐ背後まで駆け寄ってくる。