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「フランスはどうでしたか?」
そう問いかけられ、萌音の表情が和む。
「すごく楽しかったです。大学の紹介でドレスのオーダーや裏面を取り扱う工房に勤めたんですけど、いろいろな経験をさせてもらえて、作るだけじゃなく、作り替えることの楽しさも知ったというか……すごく勉強になりました」
「そういえばホームページにもレンタル以外に、オーダー、セミオーダー、リメイクって書いてありましたよね。全て受けているんですか?」
「私に出来ることがあるのならお手伝いしたいなって思って。ただ職人は私一人なので、限度はありますけどね」
すると翔は口元に手を添えて何やら考えごとをしてから、何かを閃いたかのように笑顔になる。
「あの、もしよろしければ今度萌音さんの職場を見に行ってもいいですか?」
「えっ、職場ですか? というかさっきの建物ですが……」
「ええ。是非中に入って見てみたいんです。ダメでしょうか?」
「そんなそんな! でも何も楽しいことはないと思いますが……それでも良ければ是非いらしてください」
「本当ですか? じゃあお言葉に甘えて明日とかどうでしょう?」
「明日ですか⁉︎ だ、大丈夫……です。あっ、でもかなりごちゃごちゃしていて……」
「それはお仕事を頑張っている証ですよ。むしろそういう場面を見たいなぁと思って」
「……翔さん、本当にあの頃と変わってないですね……こんな私に優し過ぎます……」
「そうですか? まぁ強いて言うなら、頑張ってる萌音さんを見たいから、かもしれませんね」
私をキュンとさせることをサラッと言って退けちゃうんだから……本当にずるい。
萌音は頭の中で明日の予定を確認していく。今週は明後日の午後にレンタルの試着と、あと土曜日に来客があったはず。でもそれ以外は作業日のはずだった。
「わかりました。何時頃が良いとかありますか?」
「ありがとうございます。では昼間はいかがですか?」
「大丈夫です」
あっという間に決まった予定に驚きつつも、前菜が運ばれてきたのでそちらに気を取られてしまう。
「春野菜のゼリー寄せ、農園のベビーリーフのサラダになります」
それを見た途端、萌音の瞳がキラキラと輝き出す。彩り鮮やかな野菜たちがゼリーに閉じ込められ、蝋燭の灯りに光っていた。そのまわりに散らしたベビーリーフからは柑橘の香りが漂い、ドレッシングの味が想像出来る。
「素敵……しかも美味しそう……」
「ここのシェフの腕は一級品ですからね。しかも野菜はほとんどがうちの農園で育てたものなんです。地産地消だから、すごく新鮮ですよ」
ゼリー寄せにナイフを入れ、一口食べると頬が緩んだ。
「美味しい!」
「ふふ。それは良かったです」
「翔さんはいつから農業を始められたんですか?」
「始めたのは四年前くらいですが、なかなか上手くいかなくて。軌道に乗ったのは二年前くらいですね」
「じゃあ私が渡仏してすぐくらいですか?」
萌音が言うと、翔は口元に笑みを浮かべる。
「きっかけは萌音さんなんです」
驚いたように目を見張り、翔をじっと見つめた。