「……えっ?」
部屋に入ってきたのは、人が良さそうな女性と厳しそうな男性だった。
「貴方がロア様で合っておられますか?」
女性が零(ロア)に語りかける。
零は記憶を頼りにロアになりきる。
というかロアなのだが。
「我はロア・ダークネスであるが……何の用だ?」
中二病のような言い方になってしまったが気にしないでおく。
すると女性が口を開いた。
「ロア様、初めまして。私はこの城で働く“レイチェル・スタル”と申します。そしてこちらの男性は……」
女性の隣にいた男性に目が行く。
「私は自己紹介くらい自分でする。ロア様、私の名前は“ラグレス・アルス”です。以下お見知り置きを。」
女性の方はレイチェル、男性の方はラグレス。
忘れないようにしっかりと胸に刻んでおく。
2人は仲が良いのかなと勝手に想像していると、レイチェルが気まずそうに話し始めた。
「ロア様、とても残念なお知らせなのですが、ロア様のお父様である魔王様、ヴラド・ダークネス様がお亡くなりになられました…」
言葉が出なかった。
まだ父に会えてないのに亡くなってしまうとは…
だが亡くなったと急に言われても何をすればいいのか分からない。
転生したばかりだしこの世界の文化も何一つ分からない。
何かお見送りでもするのかなと考えていると、ラグレスが口を開いた。
「そこでロア様にお願いがあるのですが、次期魔王として就任していただけないでしょうか?」
ロアは口をポカーンと開けた。
急に魔王になりませんかと言われてもピンと来ない。
というか魔王って何すればいいのだろうか?
魔王と言われると勇者と戦うイメージが強い。
正直戦い方もイマイチ分からないし、そもそも自分が魔王として成し遂げられるのだろうか?
思い出してみれば自分は魔王の娘。
自分が魔王の座に就かなければ他の者達が魔王の座を狙って争うかもしれない。
__よし、答えが決まった。
「分かった。我、魔王になる。」
するとレイチェルがにぱぁと笑顔になり、ラグレスは口角が上がり感情を抑えきれていない。
するとレイチェルが話し始めた。
「かしこまりました、ロア様。早速で申し訳ないですが、みなの前で演説を行って頂けないでしょうか?」
演説…
確かに魔王になったならば自己紹介くらいはしなければいけない。
だけど自分はコミュ障だ。
大人数の前で話すなど緊張して倒れてしまうだろう。
__いや、ここは体を慣れさせよう。
自分に甘えずにここは演説を……
「すまないが、断らさせてもらう。」
口が勝手に……ッ!!
適当に理由をつけて話そう…
「みなの前だと我を暗殺しようと企む者もいるだろう。『我が魔王に就任した』ということだけ伝えてくれ」
ラグレスがお辞儀をして話しかけた。
「かしこまりました、陛下。」
陛下なんてそんなかしこまらなくてもいいのに……
するとレイチェルがドアの前に近づいた。
「私達は報告をしに行きます。陛下はこの後ご自由に過ごしてくださいね。」
確かに報告は早いほうがいいだろう。
2人がドアを開けると『失礼しました』と言い去って行った。
「しっかし、魔王か……」
魔王と言われるとプレッシャーがかかる。
今ここにいるのは魔界というらしく、人間がいるのは人間界というらしい。
そしてよく見るファンタジー小説と同じく、勇者がいるらしい。
正直戦いたくない。
よし、この魔王の権力を使いこなして世界平和を目指そう。
争いなんて必要ないもんね。
と考え事をしていたが、段々と暇になってきていた。
気になっていた部屋にある冷蔵庫を覗いてみる。
冷蔵庫には水のペットボトルが入っており、その他には、真っ赤な液体が入ったパックがたくさんある。
この赤い液体はなんなのだろうか?
気になってパックを調べてみると、血の匂いがした。
そういえば自分は吸血鬼族と獣人族のハーフ。
ロアは血液パックを飲むと倍ほど力が強くなるらしい。
よくよく考えれば獣人族らしく耳と尻尾が生えているし、爪は長く尖っている。
吸血鬼らしいところは、牙が尖っているし、翼が自由に出したりしまったりできる。
あと吸血鬼は魔力を使って魔法を使うことができるらしい。
危ないので窓から外に向かって火を出したいと念じると火の玉が出た。
他にも試してみたがバリアや水も出せるらしい。
よくゲームで見る強化魔法も使えた。
そんな風に自分の事を探索していると、部屋にノックがかかった。
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