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1コメ……!千冬ちゃァん!しなないでぇぇ!!
目が覚めると 、そこは真っ白な空間の中に寝転がっていた。
あれ 、俺死んじゃった ?
起き上がり、周りを見渡せば、無の空間が地平線に広がっていた 。
何も無い。真っ白で 、酸素すら感じない。温度も湿気も何も無いところで、寂しいところ。
「どこ。ここ、」
周りに人気なんてなくって、孤独を感じた。
「なんにもない、壁もないなんて、建物ひとつもたってないや、」
東京にいたはずの俺はどこか分からないところにひとりで孤独を感じさせられていた。
爆弾で 、俺は、死んだのかもしれない。
でも、三途の川も何も無かった。ただただ無の世界。
「誰かーーーーーーー!!!」
そう叫んでみても、帰ってくる声は何分たっても来なかった。
ここがもしも死後の世界ならば、何年も前に死んだ父はどこへ行ったのだろう。どこにいるのだろう。
自分自身ここが死後の世界とは思えなかった。
死んだ人も、誰もいなかったから。
どうやって帰るのかも分からないまま 、その場に寝転んだ 。
上を見つめても 、やっぱり、上にも無の空間が広がっていて 、ここにずっと居たら気が狂いそうだった 。
「俺消えちゃったのかな、」
なんて呟いても誰もそうだとも、違うとも言ってくれず、ただ、独り言をつぶやくしか出来なかった。
「… 家に帰りたい 、」
孤独が俺を追い詰めて 、息の根を止められそうになる 。これが死後の世界だとは信じたくはないが 、
もしここの管理者がいたとして 、俺に
「お前はもう死んでいる」
と言ったならば 、俺は信じざるおえなくなるんだような、
それでも 、場地さんや 、たけみっち 、
皆を守れたなら、みんなの役に少しでもあったならば 、副隊長として 、心から嬉しいな 。
赤く点灯するランプに『手術中』の文字を見つめ、全員が何も無い床を見つめているなか、
1人ぽつぽつと泣いている彼の母親を見ていると、
心臓の部分がぎゅっと締め付けるように苦しくなる。
そんな母親の横で彼女の背中を擦りながら「大丈夫 、大丈夫ですよ、」と辛い顔を隠して 、
必死に、無理やり作りだした笑顔で微笑みかける彼の顔は 、見てる方も 、きっと彼女の母親でさえ、
さらに苦しめていた 。
彼だって本当は辛いのに 、先程運ばれてきた時、彼の口からポツリと、捨てるように吐き出された言葉が、
今も脳裏に染み付いて離れない 。
『俺は 、分かってたのに 、』
それを言いた時は 、彼の方をバッと見つめて彼の目の奥を見つめた 。
彼の目には、光はなかった 。
親友を救えなかった 。分かっていたはずなのに 。
それは俺だって何度も経験しても 、何度やったとしたとしても、辛さは同じくらいに変わらない 。
変わるわけが無い 。大切なものが失うのは辛く 、苦しいということは俺だって知ってる 。
その現場を何度見たとしても 、分かりきっていたとしても 、
何度だって涙は出てくるし、死にたくなるほど辛い。
今回の手術だって、生き返るんだよな ?千冬 。
「圭介くん 、千冬は 、どうして 、?」
そう泣きながら震えた声で問いかけてきた彼女に俺たちは黙り込んだ。
「抗争で 、一番初めに彼奴は動いたんです 、」
彼女の背中をさする手を止め、彼女の問いに答えたのは場地くんだった。
「彼奴は、毒ガスも、爆弾を見抜いて 、俺たちを助けたんです 、」
「そっか、あの人の思いがあの子にもあったのかもね、」
そう口元を緩ませ 、目尻に皺を寄せた彼女はまるで 、ピンクのカーネーションのようだった。
「あの子の父親はね 、見知らぬ女の子を迷わず 、すぐさま助けるために自分よりも遥かに大きなトラックに飛び込んだの 。」
「その女の子は助かったけど 、あの人は帰らぬ人となかったね、」
「あの子は 、尊敬もしていたし 、若くして無くしたものだから 、寂しさもあったはずよね、」
「でも、私が落ち込んでいた時は 、あの子は必ず何も喋ったりはしなかったけれど 、私のそばにいた 。」
「何を話せばいいか分からなかったんだろうね 〜、」
「見守っててくれてた 。私が泣き出した時はあの子はそっと背中を撫でてくれた時は驚いたな〜、 笑」
息子のことを考え、彼のことを思いながら俺達に話していた 。その姿はどこか懐かしいように彼女の目は何も無いところを見つめて、薄く目を開いていた 、
いつも彼の家に遊びに行った時の彼女の目はいつでも残業なのか、パートなのか、いつも疲れ切っていて、
それでも 、その目の奥に優しさがあって 、いつも暖かった。
でも今は、優しさはもちろんあるけれど 、辛さなのか、悲しさなのか、目が濁っているように見えた。
「千冬 、お願い 、」
そんな声が神頼みでしかないことを語っているように思えた。いや、もう俺らにやれることはないんだ。
神に願うことしかない。祈ることしか出来なかった。
どうか。どうか神様 。お救い下さい。
そんな声はどの国でも、どこにいても聞こえてくるだろう。でも、今ある現状で、今ある光景、
その願いには物語がある。他人事ではない。
本当に助けて欲しいものでも神は救ってくれない時がある。それを人々は勝手に神のせいにして、勝手に恨んで、勝手に 、勝手に …
運のせいにして 、「どうして、」と心で何度も泣き叫ぶ。
そんなの、分かってる。
人々はみんな平等なんだから 、その人だけが恵まれるわけでも、特別な訳でもない 。
そう言える世界とは到底言えないな、
世界は不平等だ 、
平等な社会って、いつ来るんだろう。
あぁ、そうだな、二度と来ないさ。絶対、もうずっと来ない。
でも、神に祈ることしか出来ない。できる限りの事はしたい。
お願いします 、神様 。
どうか 。どうか 。彼を 。
お救い下さい _______ 。