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金属音が響く。
冷たい光の下、白衣の軍医たちが黙々と準備を進める。
部屋の空気は不自然なほど静かで、痛みに備える気配さえ排除されていた。
処置台の上。陸はすでに拘束されている。
両腕はベルトで固定され、足首も、胸元も。逃げられる余地など最初から与えられていない。
「……や、やめ……っ、やだ、やめて、やめ――」
言葉にならない声が漏れた瞬間、口元に固いものが押し込まれる。
猿轡だ。口を閉ざすための、ただの布ではない。噛みしめても、声が外に漏れないように調整された本物。
陸の瞳が、大きく見開かれた。涙がにじみ、喉の奥から悲鳴のような音が漏れる。けれど、誰にも届かない。
「……準備完了しました。開始します」
無表情な軍医の声。
目の前には、祖国様がいる。
その瞳には何の感情もない。怒りも、慈しみも、誇りも――何も。
「……はい、では、始めてください。ああ、彼の泣き声は、記録には残さなくて結構です」