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「おーいふっかさん、そんなとこ寝てたら風邪ひくで」
システムエラーによるトラブルの尻拭いをさせられ、やっと終わった夜中の休憩室。
向井がにやっと笑いながら、深澤の頭をペシッと軽く叩いた。
「いってぇなぁ……お前はほんとお節介だな」
そう言いつつも、深澤の声にはどこか緩んだ響きがある。
向井は椅子に腰掛けると、隣にいる阿部をちらっと見た。
「なぁ阿部さん。ふっかさんってさ、甘やかされたらすぐ調子乗るタイプやろ?」
阿部は少しだけ考えるように深澤を見て
「……まあ、そうかもしれないね」
と、短く答える。
「ほらなぁ!」
向井は楽しそうに笑って深澤の肩をぐっと抱き寄せた。
「うわっ、近い近い!」と言いながらも、離れようとはしない深澤のその光景に、阿部の胸の奥が小さくちくりと痛む。
なんでだろう。いつもなら気にならないはずなのに。
「トイレ!」と休憩室から廊下に出た深澤は、ポケットに手を突っ込んで小さく息を吐いた。
(……阿部ちゃん、やっぱ鋭いなぁ。俺のこと、見透かしてるみたいでムズムズする)
けれど胸に残る温度は、さっき阿部に囁かれた言葉じゃなくて。
「ふっかさんってほんま可愛いわ」
そう笑った康二の声。
(……なんでだろ。あいつの無邪気さに、俺、救われてんのかな)
自分でも気づいていないまま、深澤の想いは向井のほうへと傾いていた。