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処女の私からするとどうあれ、初恋の人に抱かれるならば、抱かれたい。向こうに気持ちが無くても最初の相手が、好きな人ならば嬉しいに決まっている。
と言う女の気持ちと。
そんなのは不純だと。身勝手だと。契約妻をちゃんと断らなければと、言う理性に頭が板挟み状態でぐちゃぐちゃになり、次の言葉が出て来なかった。
すると黒須君が立ち上がり、私の隣に座った。きしりと、微かに軋むソファの音。
びっくりして黒須君の顔を見つめる。
眼鏡の向こう側に、切なげに私を見つめる瞳と視線が合い。胸が熱くなり。
どきんと心臓が高鳴ると、膝に置いてあった私の手の上に、黒須君の優美な手が重なった。
「く、黒須さんっ?」
手の暖かさや、近い距離に声が上擦ってしまった。
「いきなり、こんなことを言われて戸惑うのは良くわかる。それに俺が櫻井さんの好みじゃない。性的な対象として見れない。セックスの相手としてお断り。ならば、それでいい。俺としては櫻井さんが快く、契約妻を引き受けてくれたら何も問題ない」
ダメ押しかのように。重なった手をぎゅっと握られる。
「こんな事は弁護士として相応しくはない。信頼に欠けるかも知れない。そんな俺の私情に巻き込んでいるのだから、出来るだけ櫻井さんの気持ちに寄り添いたい」
黒須君の言い方はまるで私を口説き落としている口調みたいで、胸がドキドキする。
さらに何か言おうとした黒須君を「あのっ」と、遮る。
(黒須君の気持ちは分かった。私を対等に見てくれている。ちゃんと考えてくれている。でも、これ以上はまた気持ちが揺らいでしまうから。ちゃんと自分の気持ちを言わないとっ)
そう思い。黒須君に体を向き直した。
「その。黒須さんはとても素敵です。カッコいいです。黒須さんに言い寄られて、断る女性なんて居ないと思います。えっと、あの。せ、性的魅力だって。とても、あると思います」
言っていて恥ずかしい。
じっと見てくる黒須君の視線が肌に突き刺さるようで。誤魔化す為に、机の上のグラスを空いている手で、手に取り。水をごくごくと飲む。
「──あの頃と変わらないな。可愛い人だ」
ぷはっと、飲み終えて「失礼しました」と、また向き合う。
今、何か言われた気がしたけれども、とにかく最後まで自分の気持ちを伝えたかった。
「それに、そう。弁護士という立派なお仕事。こんな豪邸に住む経済力。どれを取っても凄くて。雲の上の人で。だから──私みたいな普通の一般人には荷が重くて、契約妻は務まらないかなって」
「……櫻井さん」
「だって、私。本当に普通の家庭で育って。得意と言えばお花を活けるぐらいで。料理も普通。見た目も……そんな普通の私が、黒須さんの隣に居たら。黒須さんにいずれ迷惑掛けるんじゃないかなって。黒須さんに恥ずかしい思いをさせるかもしれない。だから」
「だから、契約妻は無理だと?」
こくりと頷く。
でも弁護士の依頼は母を説得して、引き受けて貰うつもりです──。
と、言おうとしたら。
すっと手首を掴まれて、そのままソファに押し倒された。
長い指先に掴まれた手首。
鼻先に微かに香る、甘やかなムスクの香り。
黒須君の整った顔が間近に。黒須君の一挙手一投足に胸が高鳴るばかりで、新たな熱が体に広がる。
均整の取れた体が。ずっと好きだった人の体が直ぐそばにあると思うと、声が出なかった。
「俺に性的魅力を感じるのならば一度、試したらいい。それから断ってくれても構わない」
「た、試すだなんて」
「嫌ならばはっきりと『嫌』だと言ってくれ」
伏目がちに言う黒須君。
眼鏡越しに長いまつ毛が影を落としている様は、色香そのもの。それに対して、抗う術なんて持っていなかった。
「っ……な、なんで。私に、そこまで」
だって、黒須君は私のことを覚えてないよね。もしかして。今の私に一目惚れなんて──と思ったけれども。都合良過ぎる。そう思った瞬間。
黒須君の返事はなく。
手首を戒められたまま、キスをされてしまった。
キスは初めてでは無かった。
大学生のとき一度経験した。しかし、それは昔過ぎて体温も、相手の人がどんな顔をしていたかサッパリ思い出せないもので。
食事会の終わり。駅まで送って行くと言ってくれた人に、掠めるようなキスをされた。
そんな予感はあったから、キスも予定通りの印象だった。
それよりも周囲の目が気なってしまい。逃げるように家に帰り。その人ともなんだか、気まずくてそれっきり。お付き合いに発展することは無かった。
だから、キスは誰としてもそんな感じかなって思っていたのに──。
ふわりと黒須君の唇が触れあい。ソフトタッチで呼吸に合わせるかのような、優しいキスは暖かく。気持ち良くて驚いた。
その癖、掴まれた手首は強くて振り解けそうにない。両足にいつの間にか割り入れた、黒須君の足のせいで身動きも取れ無かった。
「んっ、ふっ」
思わず唇から吐息が漏れた瞬間。僅かに開いた唇の隙間に、滑り込むように黒須君の舌がぬるりと、侵入した。
舌で丁寧に口腔内の粘膜を舐め上げられ、今まで感じた事のない刺激に早くも涙腺が緩む。
「んんぅっ」
さらに舌を絡め取られ。くちゅっと水音が響く。柔らかなキスは淫らな刺激と快感に変わり。
背筋がゾクゾクして体から力が抜けて行く。
「ん……ンッっ、ぅ」
「柔らかい唇だ」
黒須君のそんな感想すら、心が高鳴り体を震わせしまう。早くも呼吸が乱れて『嫌』だなんて言えない。
掴まれた手首はいつの間にか、手先に移動して指が絡みあい。まるで恋人同士のようにキツく絡みあっていた。
(私、黒須君とキスしてる。好きな人とのキスってこんなに気持ちいいの? 知らなかった)
初めての快感と充足感に体が震えると、黒須君は私が怯えているのかと思ったのか。そっと唇を離し。頬に軽くキスをしながら。
「怖がらなくていい。気持ちのいい事しかしない。櫻井さん……いや、真白。舌を出して」
「──っ」
真白。
初めて下の名前を呼ばれた。それだけでまた体が喜びに震えた。もう、何も考えずに言われた通りに自ら舌を差し出す。
すると、ちゅるっと舌を強く吸われた。粘膜が擦り上げられ、先ほどよりぐちゅりとした深い音が口から漏れた。
互いの境界線を打ち消すようなキス。
もうこれはキスなんかじゃなくて、酷く淫らな行為だと思うと体の真ん中に熱が籠り始める。
絡みあった右手の手が解かれ。
黒須君の手がするりと、シャツの中に侵入して、お腹を撫であげる。
その長い指先が器用にブラの下に滑り込んだと、気付いた瞬間には。
くにゅりと、既に硬くなっていた乳首を指の腹で押し潰された。
「んっ!」
そのまま、乳首をくにゅくにゅと指の腹で円を描くようにまぁるく、もて弄ばれ。胸を柔く揉みしだかれる。
「あ、んっ……!」
堪らず、絡み合っている舌を引っ込めて声が出てしまった。自分の口からこんな喘ぎ声が出るなんて知らなくて、恥ずかしくて口を硬く結ぶ。
「真白は着痩せするタイプなんだな」
そんな事言われてもわからない。ただじっとこちらの反応を伺われているようで、恥ずかしくて顔を横に逸らした。
すると私の反応を引き出そうとするように、ブラを上にぐっと上げられ、ニットも捲られてしまい。
黒須君の目の前に両胸が露わになった。
既に両胸の先端はしっかりと起立していて、恥ずかしくて仕方なかった。
「み、見ないで下さい。恥ずかしい」
「何故? 綺麗な体だ。しかも母親思いの優しい心の持ち主。それに少し触っただけで、こんなにも色っぽい反応をするなんて、男なら誰でも妻になって欲しいと思う」
「そ、そんなことは、」
「ある」
断言された直後。左胸の先端はぱくりと、黒須君の口の中に収まってしまった。
「あんっ!」
初めての刺激に声を殺せなかった。
ちゅっと吸われながら。黒須君の淫らに動く舌先が、乳首を優しくころころと舐め回すのがはっきりと分かった。
「あ、ぁっん。く、黒須さん。そんな風に吸ったら、私。おかしくなるっ……!」
「──ダメではないんだな」
「!」
クスリと笑われてしまい、カッと顔が熱くなると。反対の側の胸に黒須君の手が添えられて、くりっと乳首を摘まれた。
そしてまた、乳首に再びぬるりとした熱い舌が充てがわれ、両胸の愛撫が始まった。
ぴちゃぴちゃとイヤらしく。硬くなった乳首の乳頭や、乳暈を熱い舌で丁寧に舐められたかと思うと、歯で甘噛みをされる。
片方の胸も緩急つけた、巧みな指の動きで揉みしだかれ。両胸に感じる口と手の動きで身悶えして、腰が揺れる。
「あぁんっ、あっ……、やっ。あぅっ」
「その喘ぎ声も、吐息も。楚々とした容姿から出ていると思うと堪らなく淫らだよ。真白」
淫ら。
その通りだと思った。
黒須君が私のことを忘れていても、このように胸を愛撫されて、下腹部に重くも甘い疼きが渦巻いているのを否定出来ない。契約妻の断りもちゃんと出来なくて。
ただ、黒須君が与える快楽に翻弄されるのが、どうしようもなく気持ち良かった。
せめて、隠していること以外は嘘偽りのない気持ちを伝えたくて。
「み、淫らでごめんなさい……わ、私。その初めで。まだ、しょ、処女なんです。でも黒須さんが触ってくれるのが気持ち良くて……」
思わず素直な気持ちを吐露してしまうと。
「処女?」
意外だと言う声が返ってきた。
ピタリと黒須君の動きが止まり、そっと顔を覗き込まれた。
(あ……引かれた?)
この年で未経験とか、面倒臭いと思われても仕方ない。
「こんな素敵な女性が、今まで独り身だったなんて信じられない──誰か好きな人が?」
なのに、そんな風に思ってくれて胸がキュンとした。
いっそこのまま、本当のこと言ってしまえばいいのかと一瞬、迷ってしまうと。
黒須君は切ない吐息を吐いてから。
「いや。言わなくてもいい。済まない野暮だった。今、他の男の名前なんか聞きたくない。真白、君が誰を想っていてもいい。俺をその男の代わりだと思ってくれても構わない」
「黒須さん……わ、私は」
「真白。言って。俺に抱かれるのは嫌じゃない?」
首元のネクタイをしゅるりと解きながら、切な気な瞳を向けられるとその先のことを想像してしまい。
気がつくと唇は「嫌じゃない」と紡いでいた。
そして、また唇が重なった。
黒須君の唇は私の唇を離れて、首筋の頸動脈をなぞるように舌を這わせていた。
「はぁ……あぁ。黒須さん。それ。とっても、き、気持ち良いです」
「素直で可愛い過ぎる」
首元に顔を埋め、そんな言葉をくれる黒須君が愛しくて仕方なかった。
恋焦がれた人に求められる喜びと、快楽に素直に酔いしれる。
(もう、こんなチャンスは無いかもしれない。夢みたい。最初は黒須君がいい。ずっとずっと抱かれたいと思っていたの。好き。大好き)
ずるい自分の本心を隠して、黒須君の背中に手を回す。
すると、黒須君の手が胸からお腹。お臍からその下。器用にボトムのファスナーを下に降ろし。長い指先が下着のクロッチの部分に触れると、微かに──ぬちゅっと言う音がした。
「もうしっかりと濡れているようだな」
「い、言わないで」
「こんな濡れやすいなんて、真白は感じやすい体なんだろう」
それは、ずっと好きだった人に触れられているから。
黒須君だからこそ、少しの刺激でも感じる。
とっても気持ちがいい──と、頭にふわふわとした言葉が浮かぶのも束の間。
下着越しに蜜壺の入り口をぐっと押す刺激を感じ、言葉があっと言う間に霧散した。
「ひゃ、そ、そんなところ」
「真白の良いところが知りたい」
黒須君の言葉が終わるや否や。蜜壺の入り口にもう一段階強い刺激が来た。
それは指先が的確にぐちゅりと、蜜壺の入り口を下着越しにグニグニと刺激し。蜜壺から強制的に蜜を溢れさすような行為だった。
すぐに溢れた蜜は黒須君の指先により、ぐじゅぐじゅと淫猥な音を立て。下着のクロッチ部分に擦り付けられて、下着は濡れそぼる。
しかも下着越しと言え、強すぎる刺激に息が乱れるばかり。
「あうっ、く、黒須さんっ、そ、それは」
「あやと」
「えっ」
「真白の夫の名前だ。絢斗と呼んで欲しい」
黒須君はそう言って、指先はクロッチ部分からより敏感な部分。快感で膨らんでしまった花芯へとつつっと、移動して。布越しにこちゅこちゅと指の腹で花芯を擦り出した。
「あっ!、あっんぅ!」
「さぁ、名前を呼んで」
蠱惑的に笑う黒須君。
これは意地悪をされているんだと思った。でも、その意地悪すら。ときめく要因でしかない。
「あ、あやっ」
呼ぼうとした瞬間にかりっと花芯を引っ掻かれた。
それは下着越しだからこそ、もどかしく。
神経がより過敏になる気さえした。
息がはぁはぁと荒くなる。
「ほら、早く呼んで」
なのに、黒須君の指は止まらず。花芯を布越しにじくじくと淫猥に苛める。その度にじゅわっと蜜壺から蜜が溢れる。知らずに内太ももが震える。
「あ、んっ。あっ。あやっ……!」
「直接触ったら、ちゃんと呼んでくれるのかな」
すると、黒須君の手が下着を横にずらして直接、花芯に触れた。
「ひゃっんっ!」
「真白のここも可愛い。俺に触られて健気に存在を主張しているのが、愛らしくて堪らない」
全てが可愛いと言いながら、指先は蜜壺からとろりと溢れた蜜をにゅるっと掬い。
滑りを帯びた指先は一本から二本に増え。その二本の指の間で、蜜に濡れた花芯をこちゅこちゅと音を立てて柔く挟みながら擦る。
「ぁんっ、そんな。エッチなこと、しないでっ……!」
口ではそう言っても、よりクリアになった愛撫が堪らない。これが快楽と快感だと初めて知った。
堪らずに身を捩ると「逃げないで」と、乳首をちゅっと吸われた。
(だ、だめ。それ以上は刺激が強くて、目の前がチカチカしちゃうっ)
学生時代に見惚れてしまった、あの黒須君の手が。形の良いあの唇が。
私の体に触れて乳首を淫らに吸っている。
自分でも触れたことのない、私の秘所に触れている事実に気持ちが昂って仕方ない。
もう気持ち良すぎて頭がおかしくなる。
花芯を直接刺激され、快感を呼び起こされてしまった体は火照ってしまい。蜜壺から次から次と、じゅわじゅわと蜜が溢れて。
体の奥──子宮が甘く重く。疼く。
「ほら、真白。君の夫の名前は?」
ゆっくりと乳首を甘噛みしながら、私を見上げる黒須君に逆らうなんか出来なかった。
「あ、絢っ……斗、さんですっ」
「そう。俺が伴侶。真白の夫。真白は俺の妻で間違いないね? 間違い無かったら返事をして」
優しい声色に反して指先は執拗に、花芯を指でにゅるにゅると捏ねるから、掠れた声で──。
「はい」と、返事をしてしまった。
すると黒須君はほうっと、感嘆のようなため息を吐いた。
「嬉しいよ。真白。真白はなんて可愛いんだろう。顔を赤くして……色ぽっくて。いやらしくて。淫ら。こんなにも愛らしい妻を可愛いがるのは、夫としての俺の役目」
黒須君が「これで契約妻は成立だな」と、言ったその瞬間に。
じゅぶりと蜜壺の中に長い指先があっさりと侵入した。
「ぅんっ」
「真白、痛い?」
首を横にふるふると振る。
長い指先がゆっくりと入り口近くの肉壁を撫でる。
痛みなどはなく。快感がより鋭い喜悦に変わって、返事が出来なかった。
(ゆ、指。気持ちよくて、ぞわぞわする。私の体変になっちゃった。しかも、もっと奥に触って欲しいって思ってる)
じゅぶりじゅぶりと、膣内を堪能する指先に翻弄される。
「中はもう、とろとろになっているな。しかも指一本挿れただけなのにキュッっと締め付けてくる」
真白は中まで可愛いと、耳元で囁かれる。恥ずかしてたまらないのに嬉しい。黒須君のしなやかな体に抱きつく。
また蜜壺から蜜が溢れる。
そして、ふいに。
散々可愛がられた花芯を親指で押し潰された。
「ぁんンっ!」
外からの突然の刺激。
今まで体に溜まっていた、快感がいきなり発散するような錯覚。
思わぬその刺激にビリッと電流が走るような、感覚が全身に駆け巡ったあと。
(あっ、だめ。いっちゃっう──)
声も出せずにびくんと大きく体がしなり。
すぐにふわりとした浮遊感に包まれた。
その後、体の力が一気に抜けて──意識がゆっくりと高いところから深いところに落ちて行くのが、気怠くも気持ち良かった。
「っ、真白。今のでイッたのか。こんなに感じやすい身体だなんて……」
ちゅぷんっと、蜜壺から指が引き抜かれる。
それに対してもう声も出なくて。肩で大きく息を吐くのみ。瞼を開くのも億劫。
「真白……もう。絶対に離さない。真白が俺を忘れていてもいい。過去なんてどうでもいい。今度は身体も心も全て手に入れる。真白、愛してる。好きだ。もう離すものか──俺なしで居られない体にしてやる」
そんな言葉が聞こえたような気がした。
最後にまた、愛してると言われたような。
でも、それを確かめる術なんか無くて。
意識は暖かな闇に包まれた。