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ゆゆゆゆ
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路地の奥。
足音は、もう聞こえない。
表通りの喧騒も、少し遠い。
マフィオソは立ち止まる。
振り返らない。
振り返る必要がない。
「……なるほど」
小さく、呟く。
エリオットの反応。
チャンスの行動。
その両方を、頭の中でなぞる。
(選んだ)
確かに、あの瞬間――
エリオットはチャンスを選んだ。
だが。
(“拒絶”ではない)
あれは、拒絶じゃない。
“独占”だ。
見たくない。
他に触れるな。
つまり――
(繋がりは切れていない)
むしろ。
「深くなったな」
静かに、笑う。
選ぶという行為は、
境界をはっきりさせる。
だが――
完全に切り分けることはできない。
あの場で、
エリオットは“違い”を認識した。
そして同時に、
“両方を知っている状態”に留まった。
「良い兆候だ」
指先を見る。
(残っている)
ほんのわずかだが、
確かに。
エリオットの“感覚”が。
キスの余韻。
それは、
一方的なものではない。
「君は、まだ私を切れていない」
むしろ――
「切る気がない」
断言できる。
チャンスのやり方も、理解している。
強引に遮断する。
関係ごと断ち切る。
だが。
(遅い)
あの段階で、それをやるのは。
エリオットは、
もう“知ってしまった”。
違いを。
重なりを。
そして――
“足りなさ”を。
「一度でも、それを感じたら」
小さく、息を吐く。
「戻ることはない」
湿った空気に、言葉が溶ける。
「彼だけでは、満たされない」
それは、
チャンスの敗北ではない。
むしろ逆だ。
(彼は“純粋すぎる”)
だからこそ、
“混ざらない”。
その安定が、
いずれ“物足りなさ”になる。
「時間の問題だな」
歩き出す。
影の中へ、ゆっくりと。
「次は」
ほんの少しだけ、
楽しげに。
「どこまで壊れるか、見せてもらおう」
そのまま、
完全に姿が消える。
深い闇の中へ。