テラーノベル
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童貞ということ、同性愛者ということ。どちらも、涼にとっては軽侮の対象なのかもしれない。そう思うとさすがに黙ってられず、彼と正面から向き合って叱りつけた。
「人を馬鹿にすんのもいい加減にしろ! 大体、お前はすぐそうやって下ネタに走るけど……!」
けど。
……その先の言葉が出てこない。息を飲んだ。
ある事に気が付いて、准は完全に固まってしまった。
「准さん? どうしました?」
動けない自分を、涼が心配そうに見つめてくる。しかしそんな事を気にする余裕は准には無かった。
これは……いや、でも。いやいや、ちょっと待て。
何だ……っ。
戸惑いを隠せない。見てはいけないものを見てしまったような気分に苛まれたが、心を落ち着かせて何とか言葉を発した。
「……とにかく、大人をからかうな。早く服着ろ。そんで寝ろ。いいな?」
涼から目を逸らし、返事も待たずに脱衣所から出た。少し鼓動が速い。
何だよあれ。
リビングに戻ってから深呼吸し、冷静に考える。
彼の前で頭が真っ白になったのは、驚いてしまったからだ。
涼の身体には、痛々しく刻まれた傷がいくつもあった。
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