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夜が濃いほどニュースの内容も暗くなる。テレビのリモコンを取り、画面を真っ黒にした。
どうしても気になってしまう。灯りを消した後も准は中々寝付けなかった。涼にベッドを貸して、リビングのソファに横たわる。逆にソファの方が落ち着くから不思議だ。
でも、何であんな。
人当たりが良くて無害そうな青年なのに、服を着ていては分からないだろう部分にいくつも傷や痣があった。あれは見間違える数じゃない。頭のネジはいくらか外れてそうだが喧嘩するような奴にも見えないし。
はあ、気になる……。
倦怠感も相まってため息をついた。しかしどれだけ頭を悩ませても意味はなく、寝不足だけ残して朝を迎えた。
「准さん、おはようございます! よく眠れましたか?」
「……うん」
未だ不安と混乱が頭の中で渦巻いてる准の悩みなど知る由もなく、涼は最高級のスマイルで起こしにきた。
「あれ、顔色悪いですね。あまり寝れませんでしたか。やっぱり准さんがベッドで寝た方が……」
「いや、それは関係ないから大丈夫だよ」
寝付けなかったのは完全に、自分の心配症のせいだ。
いいと言ってるのに、すいませんと言って涼は謝る。彼はしっかりシャツを着ているから、今の状態じゃ傷は確認できない。
でも赤の他人だし、一応大人だし、余計な詮索すんのもなぁ……。
彼を心配するにしても、現状情報が少なすぎる。一旦ゴチャゴチャ考えるのはやめにして、准は出勤の準備を始めた。朝食は昨日リクエストした通り、温かいフレンチトーストだった。
「ごちそうさま。美味かったよ」
「へへ。おそまつさまでした」
涼は笑顔で食器を片付ける。だけど、問題はここから。
「あ、あのさ。会社……マジでお前も行くの?」
「はい、是非ともお願いします。いやーもちろん中には入らないし入れませんが、近くまで。准さんが気になってるという男性をひと目でいいから見たいです!」
もう完璧ストーカーだ。やっぱり行くらしい。
職場だって超絶個人情報なんだけど、これまでのカンから彼はもう知ってそうだ。ここまでくると若干諦めが入って、准は涼と家を出た。
マンションの下に併設されてる駐車場へ。准が自車の運転席に乗り込もうとすると、涼は満面の笑みで指を鳴らした。
「そうだ、准さんあまり体調良くないみたいだし、代わりに運転しましょうか」
「免許持ってんの?」
「はい。俺も車通勤ですし」
「そうなんだ。でも免許証、今持ってんの?」
「今は持ってません。あ、検問されたら捕まっちゃいますね。あはは……」