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 グラウンドに笛の音が響く。シャトルランの始まりだ。


「……はっ、はっ……もう、限界……」


 鈴は息を切らしながら折り返す。すぐ隣では、輝が笑顔で並走していた。


「鈴ー!まだいけるって!ほら、腕振って!呼吸浅いぞー!」


「う、うるさいな……!なんでアンタ、こんな楽しそうなのよ……!」


「そりゃ鍛えられるって最高じゃん?つーか、お前のカバンにダンベルとプロテイン入れといたし、今さらだろ」


「はあああ!?今日肩おかしいなと思ったの、それのせいなのね!?」


「筋力足りてないかなーって思ってさ!」


「やめてくれる!?こっちは生身なんだから!」


 怒鳴りながらも、鈴は輝に合わせて足を動かし続ける。悔しいけど、彼のペースに引っ張られると、不思議と最後まで走れそうな気がする。


 ふと、輝の顔を見ると、真剣な横顔に変わっていた。


「俺さ……昔、大事な子、守れなかったんだ。だから今度は絶対、守れる強さが欲しい」


 その声に、鈴の胸がチクリと痛む。


「……輝 、バカだけど、そういうとこズルいよね」


 鈴はぽつりと呟き、少しだけ顔を背けた。


「え?今、褒めた?なあ 、褒めた?なあ!」


「調子乗らないで」


 シャトルランは終わらない。でも、鈴の足は、まだ止まらなかった。

ゲームのヒロインに転生したが攻略対象が残念なイケメンしかいません

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