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とある日の昼下がり、パリの街並みを眺めながらアーサーは歩いていた。先日からフランスでの泊まり込みの仕事があり、それが一段落ついた所だ。今は自分からはあまり出向いた事がない腐れ縁の家へと向かっている。その腐れ縁ことフランシスもこの件に関わっており、折角こっちへ来るのなら飯でも食ってけと、昼食を共にする約束をしたからだ。
しばらく進んでいくと、やがて花で彩られた玄関先が見えた。前まで行き、呼び鈴を鳴らす。
が、いくら待っても出てこない。アイツが言い出したくせに留守だったらぶん殴ってやろうかな、と思いつつ、全く遠慮しないスタイルで連打する。それでも中から一向に音の気配がない。数分待ったがやがて諦め、試しにドアノブを捻ってみると、思ったよりも簡単にドアは開いてしまった。
がちゃりとドアが開くのと同時に、足に見慣れた金髪が寄りかかってきた。
「っっうわっ!?」
それは紛れもない、フランシスだった。意識がないのかぐったりとしており、いつもの彼からは想像がつかないほど顔色が悪かった。
「っおいどうした!?なんでこんな所に、、なあ起きれるか?」
何回か声をかけてみても、苦しそうな唸り声しか出さないため、とりあえず引きずってリビングに運ぶことにした。
ソファーに寝かせると、数分後瞼がゆっくりと開いた。瞳はぼんやり宙を見つめると、ばっと見開いてこっちを見た。起き上がってもまだ状況を理解出来てないのか、横にアーサーがいることに対して混乱しているようだった。
「、、、え、は、なんで、お前、ここに、 」
「なんではこっちのセリフだ。よくもまあ来客だっつうのに玄関先でぶっ倒れてくれたな」
「、、、まじ?俺倒れてた?」
「ど派手に」
「まじかー、、、」
「 、、おい、髭、額出せ。」
「え?ああ、うん」
そういうとアーサーは、髪をかき分けて額に手を当てた。
「、、、お前熱何度だ」
「え、いや別に、今朝体温計で測った時は平熱だったけど」
「、、、その体温計ってこれか?」
「うんそうだよ、ずっと使ってるやつ」
「、、、これ30年ぐらい前の奴だぞ、、、??」
「、、、いやほら、ここ最近体調崩すことも少なかったし、、?どうせ俺たちはすぐ治る身体してるじゃん」
「だとしてもだ。、、、なんで新しいものはすぐ欲しがるのにこういうのだけ持たないんだよ、、、、、、」
アーサーは溜息をひとつ吐いた。目の前にいるフランシスは酷く居心地の悪そうに目を逸らす。よく見ると、いつも見せつけてくる髪は少し乱れているし、顔や目の付近はほんのりと赤い。常に気高く振舞っている彼からは想像がつかないほど、今は弱っている様子だった。
いくら腐れきった縁の相手でも、一応は病人だ。言い合いに発展しても暴力は控えておこう。、、、というかその前に、今コイツは言葉で殴りあえるほど気丈じゃないな。
「、、、あ、そういえば飯は食ったのか?」
「あー、、、朝は食欲なくて、、、」
「じゃあ何かは口に入れておいた方がいいな。何食える?」
「、、、えっまさか坊ちゃんが作んの!?!?」
「?なんだよ、だってお前まともに動けねぇじゃねぇか」
「いやいやそういう問題ではなくてですね、あのスコーン黒焦がし大会ぶっちぎり優勝のアーサーくんが作ったらうちのキッチンが病院送りになっちゃわないかなーっt」
「おいこら髭どういう意味だ」
「ちょっ、!いひゃい!いひゃいから
かおひっぱふのやめて!」
熱で痛みに敏感になっているからか、さすがに頬を引っ張るのには寝を上げたようだ。弱っているひとを痛めつける趣味は無い。ぱっと手を離して続けた。
「、、、はぁ、、、まあ認めたくはないが俺の作る飯には安心していい。なぜかって、最強の助っ人を呼ぶつもりだからな。」