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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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千歳は買い物に行って、俺は突発的に狭山さんとリモート打ち合わせをしている。どうしても唐和開港綺譚の筆が進まなくて、漢方系の面白い話を聞きたいとのことだ。
思いつくことをそれなりに話したのだが、〈面白いのにうまく話に落とし込めないよー!創作脳が働かないよー!〉と嘆かせる結果になってしまった。
「お役に立てなくてすみません」
〈いえ……和泉さんの話はすごく面白いです……僕が悪いんです……〉
狭山さんは顔を上げ、〈そういえば〉と言った。
〈発表があるまでここだけの話にしてほしいんですけど、【子供騙しじゃ騙せない】が全年齢コミカライズの運びになりまして〉
「え!?」
【子供騙しじゃ騙せない】は狭山さんが裏垢で書いてるTS男子エロ小説である。
「え、あれ、スライムとか触手とかでロリが毎回ぐちゃどろになってるのに!?」
俺はびっくりした。アレをどう全年齢にするんだ!?
〈エロ方面に振らないこともできるので〉
狭山さんはサラッと言った。ぐちゃどろにはなるんだ……。
狭山さんは詳しく説明してくれた。
〈てんころの担当さんが、その、ちょっとこういう単語口に出すのはばかられますが、メスガキわからせ界隈を掴めそうだから全年齢版を、って言ってくれましてね〉
「へえー」
【子供騙しじゃ騙せない】は最強ガチムチエージェントが8歳の美少女にTSしてしまって、組織の事務をやってる冴えない女性と同居する羽目になった話である。しかしその冴えない女性こそ、かつて名を馳せた伝説のエージェントなのだ。8歳少女なのに毎回任務を舐め腐って失敗してエロい目に合う元ガチムチエージェントを、冴えない女性が変装美女伝説エージェントになって助ける、が毎回お決まりの展開である。元ガチムチエージェントは伝説のエージェントに憧れてて、助けてもらって毎回喜んでるけど、同居してる冴えない女性がその伝説のエージェントとはずっと気づかない。あと、その冴えない女性は元ガチムチエージェントが冴えないって言ってるだけで、そばかす太眉爆乳爆尻で一部の人にぶっ刺さる見た目である。俺は主にこの人のエロにお世話になっている。うーん、確かにロリエロ抜きでもいけるな……。
「まあ確かに、話の流れとしてはエロ抜きでも転がせそうですね」
〈あと、主人公が任務を舐め腐ってるの、大体が男として生まれ育った偏見からくるので、それが毎回わからせられて女性に助けられるのは女性読者も見込めると担当さんがアドバイスくれて〉
「あーなるほど! 確かにいつもそうですね!」
〈少年誌程度のエロは入りますけど、まあ全部成人キャラに任せる感じで〉
「なるほどなるほど」
ていうか。
「狭山さん、唐和開港綺譚書くのとてんころのコミカライズ監修と唐和のコミカライズ監修とこどだまのコミカライズ原作の仕事してたんですか?」
〈てんころのアニメ宣伝打ち合わせと篩建築事務所分所の仕事もありました〉
狭山さんは、なんでもない顔で言った。篩建築事務所分所とは、緑さんや金谷さんがいる事務所で、お祓い専門のところだ。え、俺、狭山さんがそんなに忙しいのに、千歳のことも頼んじゃってたのか、うわあ……。
「うわー、そこに千歳のことまで頼んじゃってすいません」
〈いや、あれも篩建築事務所分所の仕事のうちですから〉
「でも唐和の筆進まないの、明らかにオーバーワークですよ。狭山さん家事もしてるんでしょう?」
兼業主夫にもほどがある。
〈そうですねえ、人に言われると身にしみますねえ……〉
狭山さんは目をつぶって天を仰いだ。俺は言葉を続けた。
「フリーランスだと、仕事あるうちに受けなきゃ! ってなるのはすごくわかるんですけど、もうちょっと見直したほうがいいんじゃないんですか? 体が一番だし」
〈そうですねえ……でもどの仕事も他の人すごく関わってるし、先延ばしにできるのが唐和4巻くらいしか……〉
「それはそうなんですけどね……」
その夜、狭山さんはTwitter(現X)とMisskeyとBlueskyにこう投稿した。
「唐和開港綺譚、4巻まで間があくかもしれません。スケジュールが詰まりすぎてて、詰め込みすぎると体調がまずくなりそうだからです。すみません」
千歳はそれを読んでがっかりしていたので、俺は慰めた。
「まだあんまり表に出せないだけで、狭山さんすごく仕事してるから、待ってればいろいろ読めるよ」
『それはわかるけど』
「狭山さんが体壊さないのが一番だよ、面白いの書く人が体壊して続きが絶望的になるの、すごくつらいよー」
すごくつらいんだけど、小説でも漫画でもよくあるんだよな……。
千歳は眉毛を寄せた。
『それはやだ!』
「でも割とよくあるんだよ。狭山さんはやばくなる前に対策打って、体壊さないように続き書こうとしてるわけだから」
『むー……。じゃあ、時間空いても楽しみに待ってますって、出版社にファンレター出す』
「素晴らしい」
俺は拍手した。千歳は自分の気持の発散をうまく出来てるし、それを人の利益になる方法で出来てる。作家にとって、出版社に届くファンレターって、いろいろな意味で命綱だからな……。
ていうか、千歳は割と、自分で自分の気持ちをなだめる方法見つけられる人なんだな。だから、俺、千歳の近くにいて安らげるし、安心できるんだな。
コメント
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狭山さんの働きすぎ具合にびっくりしました……どの仕事も断れない真面目さが伝わってくるぶん、「先延ばしにできるのが唐和4巻くらいしかない」の台詞が刺さりました。体調優先で延期を宣言するところ、ちゃんと読者に伝えてくれて安心しましたね。千歳ちゃんがファンレターを出すって自分で気持ちを切り替えられるのが素敵で、和泉さんの「だから安らげるんだな」って締めにじんわり。面白い作品を書く人が体を壊さず続けられる世界であってほしいです。