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こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
犯罪組織と戦うメンバーさんの、戦闘パロ のお話(番外編)です
今回はワードパレットでリクエストいただいた3つの言葉(サブタイトルになってます)を本文中に使用してのお話になります
ERRORにしては珍しく焦る青さん視点
「たった一言 異常 はぐらかされ」
「そういやお前んとこのリーダー、なんか色々と大丈夫なの?」
昔の知り合いに久々に会って酒を酌み交わしていた頃、何かの話題の拍子にあちらからそんな言葉が飛び出した。
相手は同じ組織の人間で、昔本部の寮で一緒に過ごしたことのある仲間だ。
何年かぶりに近況報告も兼ねて、とあるバーで再会を果たしたところ。
グラスを傾けながらのそんな一言に、俺は思わずそちらを振り返った。
「色々と…って、何?」
ここでないこの話題が出るとは思っていなかった。
目を丸くした俺に、隣の男は小さく首を竦める。
少しだけ言い淀むように空気を飲んだから、あることに思い当たってしまった。
「あのこと? 前のチームのリーダーとどうこうって…」
組織内でないこの話題は絶えない。
勘違いと噂話に尾ひれがついてどんどん拡大し、恐らく今は真実でない話の方が出回っている。
相変わらず一番ひどい噂は、前のチームにいたときのリーダーと付き合っていてそのいざこざで彼を殺したのではないか、なんてものだ。
そう思って「くだらん」と付け足しながら鼻であしらった。
だけど隣の男は「前のチーム?何それ」と更に首を傾ける。
……違うのか? 俺の知らないないこの噂が、他にも出回っているということだろうか。
「上層部にすごい顔利くらしいじゃん、お前んとこのリーダー」
付け足された言葉に、「あぁ…」と小さく声が零れる。
確かにうちのチームは他チームの話と比べると、任務中の作戦に融通が利くことが多い。
そもそも俺が異動先からこっちの組織に戻って来られることになったときも、ないこが上に圧をかけたおかげだとあにきから聞いている。
「幹部たちが、あのピンクの言うことは結構聞いてくれるらしいって噂」
「それは噂っていうか…」
噂というよりも事実だ。
詳細は俺も知らないけれど、ないこが上の人間に一目置かれているのは本当なんだろう。
「お前…呑気すぎじゃない?」
グラスの中の氷をカランと鳴らした俺に、呆れたように隣の男は呟いた。
呑気?その言葉の意味が分からずに首を捻ると、また大きなため息が一つ聞こえてくる。
「枕営業」
ソルティドッグなんて割と万人受けするカクテルにもう一度口をつけ、思ってもみなかったそんな言葉をそいつは続けた。
「……は?」
余裕で数秒の間を空けてしまった俺の口からは、気の抜けた炭酸のような間抜けな声しか出てこない。
「そういう噂だよ。お前らのチームが他に比べて異常なほど融通利く予算が組めるのも、任務でやりやすいように配慮してもらえるのも全部あのピンクが幹部のおっさん共と寝てるからだって」
「…そんなわけ…」
ないやろ、と言いかけたのに喉からはひゅっと空気の音が漏れるだけ。
反論の言葉はうまく声に乗らなかった。
「チームのためにそんな身を削るようなことしてるんだったら、お前らが何とかしてやれよ……まぁ本当に幹部に気に入られててそういう関係持たされてるんだとしたら、もう手遅れかもしれないけど」
それが事実なら、幹部連中が手に入れた「玩具」をそう簡単に手放すわけがない。
そう言いたいだろう言葉は飲み込んだようだったけれど、俺にも想像は容易だった。
息を詰めるように唇を閉ざす。
その後の酒の味も、どんな会話を交わしたのかも結局この後思い出すことはできなかった。
「あにき! ないこは!?」
家に帰ってすぐに2人の部屋をノックした。
顔を覗かせたあにきにそう尋ねると、もう寝ようとしていたところだったのか半分くらい閉じかけた目で瞼をこすっている。
「ないこ? まろが夕方出て行ったすぐ後くらいかな、幹部に呼び出されたって言うて出かけたけど」
「!!」
「なに、どしたん」
もう時刻は真夜中。日付なんてとっくに越えている。
あんな噂通りの展開あるわけがない…とまだ信じたい気持ちがあったけれど、妙な焦燥感は拭えない。
「まろ?」と不思議そうに呼びかけてくるあにきに返すべき声も失ってしまっていたとき、玄関でがちゃりとドアの開く音がした。
そのまま階段を上がってくる音も。
そちらの方向を見やった俺の視界に、やがてないこのピンク色の髪が映った。
あいつはというと、自分とあにきの部屋の前に俺が突っ立っていることに目を丸くしたようだ。
「何してんの、まろ。おかえり」
「……ただいま」
今帰ってきたのはないこの方なのに、そんな不可思議な挨拶を交わす。
そんな俺らを見比べて、あにきは「ないこ帰ってきたしもうえぇ?」と欠伸をしながら部屋の中へ戻っていった。
「あ、うん…ごめん」
あにきに向けて小さく謝った俺のところまで、ないこは歩み寄って来る。
「なに? 俺に用事?」
目の前で繰り広げられる会話からそう感じ取ったのか、あいつは不思議そうにそう尋ねて首を捻った。
「…いや、用っていうか…」
歯切れの悪い返事しか出てこなかった俺を、ピンク色の瞳が訝し気に見上げてくる。
その目は少しだけ不機嫌そうにも見えて、表情は真顔から変えられることはない。
「急ぎじゃないなら明日でもいい? 疲れたんだよね今日」
笑みすら浮かべない理由は、確かに言葉通り疲れているだけかもしれない。
だけどそこで俺の前を素通りして部屋に入ろうとしたないこから、ふわりと覚えのない香りが舞った。
…なんだこれ…シャンプー? 石鹸?
どちらにせよ外から帰ってきたとは思えない類の香りだった。しかもないこが気に入って常時使っているものとは全く別の匂い。
「ないこ…お前、今日どこ行っとったん?」
尋ねると、部屋に入りかけたないこが一度こちらを振り返った。
眉を寄せて不思議そうに…だけど答えたくなさそうに唇が一度歪められたのは気のせいではないはずだ。
「急に上に呼び出されたんだよ。あにきから聞いてない?」
「いや、聞いたけど…」
「変なまろ。もういい?おやすみ」
話をぶった切るようにはぐらかされる。
一方的な挨拶を告げたかと思うと、俺の目の前でその部屋のドアはぱたんと閉められた。
まさかという思いと、そんなわけないと冷静になろうとする自分がいる。
いくらないこでもそこまで身を削るはずがない。
だけど確かに…その上層部との関係が俺と出会うよりも前から始まっていたものだとしたら、一度受け入れてしまっている以上、今でも断ることができなくなっている可能性はないわけじゃない。
「珍しいね、まろが一緒に来るって言うの」
翌日はないこがあにきと一緒に本部でのミーティングに参加する予定だった。
俺はそこに同行したことはなかったけれど、本部での様子を少しでも見られれば何か情報を得られるかもしれない、と今日だけはあにきに代わってもらった。
運転手を買って出た俺に、助手席のシートに深く身を沈めたないこはそう言いながらも膝の上でノートPCを開いている。
一晩寝て気分を切り替えたのか、昨日の疲れや不機嫌さはもう露ほども残されていなかった。
「…一回くらい見とこうかと思って」
「本部ミーティングを? おもしろいものなんてなんもないけどね」
けらけらと笑いながらも、車での移動時間中ずっと仕事をしている。
そんなないこを横目に、違和感を一つも逃さないかのように俺は注意深く観察を続けていた。
本部に到着したのは、予定よりもかなり早い時間。
渋滞を考慮して出たけれど、予想よりも道路は混雑なくスムーズだった。
大きな建物の中に入るとまだそれほど人は集まっておらず、割と静けさに満ちている。
「その先を右ね」
長い廊下の先を、ないこは顎で示しながら案内する。
カツンカツンと2人分の革靴の音が響いた。
だけどその途中に通りかかったとある一つの部屋の扉が大きく開かれたままで、初めて人の気配を感じる。
「……あ」
通り過ぎるときになんとはなしにその室内に目線をやってしまったんだろう。
ないこが小さく声を漏らした。
それと同時に、中にいた人間も数人振り返る。
ないこの視線を追うように俺もそちらを見やると、40~60代くらいだろう男たちが俺たちに気づいたところだった。
手前にいる俺よりも、その横に控えているないこを視界に捉えたようだ。
そのまま男たちはこちらへと近寄ってくる。
「昨日はおつかれさま」と、そのうちの一人がないこに声をかけてきた。
……こいつらが幹部連中か。
いかにもちょっと前まで戦闘員として前線で戦ってました、みたいな屈強な男もいれば、現場を退いて長いのかでぷりと脂肪を蓄えた腹をベルトの上に乗せた奴もいる。
「こちらこそ、昨日はありがとうございました」
にこりと営業的な笑顔を浮かべて、ないこはそう返す。
作られた笑顔だけど、相手にそうとは悟らせないのはさすがだ。
だけど次の相手の一言で、その笑顔が能面に張り付かせたようにぴくりとも表情を変えなくなったのに恐らく俺だけが気づいた。
「あの後大丈夫だった? 江崎さんの相手は大変だっただろうね」
そう言われても、人形みたいな顔で笑うないこ。
相手の言葉に明確な返事はせず、「会議の準備があるので失礼します」と恭しく一礼した。
くるりと踵を返すその後ろ姿に、男たちが「また声かけるからよろしくね」と、にやにやした笑みを浮かべながら言った。
「…っ」
本当ならその男たちの胸倉を掴んで全部問い質してやりたい。
だけどないこがさっさとその場を離れ始めるものだから、その後ろを追うしかなかった。
さっきまでよりも早足になるその歩調に追いつこうと速度を速める。
「ないこ」と声をかけようとしたけれど、身に纏う空気からおいそれと呼びかけることもできない。
やがて、さっきないこが案内してくれた突き当りの角にたどり着いた。
踵をきゅっと鳴らして右へ曲がる。
だけどその時、数歩先を歩いていたないこはちょうど向こうからやってきた人影にぶつかりそうになってしまった。
「…!」
驚きのあまり上げそうになった声を飲み込み、「すみません」と言いかける。
だけどその相手を見て、あいつは思わず絶句したように言葉をなくしたようだった。
40代くらいだろうか。
ぴしっと上等なスーツを着ていて、ネクタイからも品を感じる男。
背は俺と同じくらいの長身で、オールバックに細い銀縁の眼鏡。
インテリジェンスでクールな雰囲気を醸し出し、恐らく一般的に「イケオジ」なんて評されるタイプだ。
多少のことでは動揺したり取り乱したりはしない人間に見える。
「…ないこくん」
あちらも自分がぶつかりそうになった存在に気づき、そう名前を呼んだ。
ないこはないこで「……江崎さん…おつかれさまです」と返す。
さっき聞いたばかりの名前と一致したそれに、一瞬で脳が沸騰しそうになった。
『あの後大丈夫だった? 江崎さんの相手は大変だっただろうね』
下卑た笑いと共に聞いたその名前。……こいつか。
認識した瞬間に、男からふわりと覚えのある匂いがした。
香水に隠れてはいるけれど、昨日帰宅したないこから漂った、シャンプーだか石鹸だかと同じ香り…。
ここが本部であることや相手の立場なんかは全て忘れて、今すぐその首を掴んで壁に叩きつけてやりたい心境に駆られる。
だけど俺がそうするよりも早く、向こうが動くのが先だった。
手を上に上げようとした俺の前で、目標物が忽然と消えた。
その男がガバッと床に膝をついたからだ。
思わず目を見開いた俺の隣で、ないこが「は!? 江崎さん!?」と素っ頓狂な声を上げる。
「申し訳なかった…!」
冷静沈着、天変地異が起こっても動じなそうな目の前の男が、膝をついて土下座を始めている。
……何この状況。思わぬ展開に声を失っていると、ないこが慌てて江崎に手を伸ばす。
「やめてくださいこんなとこで…! ほら立ってください!」
腕を掴んで引っ張り立たせようとするけれど、男は床に手をついたまま頭を擦り付けようとする。
「私は何てことを…! 昨日はいつもより酔ったとはいえ、君にあんなことを…!」
「いいです! もういいですから! 俺なら大丈夫です!」
大丈夫なわけあるか! そう横から言いかけた俺だったけれど、江崎がついにないこの力にも負けない勢いで額を床につけて言葉を継いだ。
「本当に申し訳ない…! 家まで送ってくれた君に対して、頭から足までゲロをぶちまけるなんて…!!!」
「…ゲ………は???」
江崎の言葉を繰り返しかけた俺は、思わずないこを振り返る。
困りきったように下がった眉で、ないこは「…だからもういいです」と苦笑いを浮かべていた。
今度こそ江崎を引っ張り立たせる。
「気にしてませんから。二日酔いにならなかったんならよかったです」
「ないこくん~~~」
子供が親に縋るみたいに泣きそうになっているバカでかい成人男性を、あやすようにないこは「はいはい」とあしらう。
それから「皆さんあちらにお集まりでしたよ」と促して、江崎をさっきの幹部連中の方へ追いやろうとした。
「ないこくん、また来てくれる? 昨日の一件でもううんざりってなって二度と来なくなるとか…」
「ないですないです! また行きますから!」
だから早く行ってください、なんて言いながらないこはその背中を押す。
しぶしぶといった感じに歩き出す江崎の後ろ姿を、俺はぽかんと口を開けて見送った。
「……ないこ」
江崎の姿がさっきの幹部連中がいた部屋に吸い込まれていくのを見送った後、俺は小さく呼びかける。
「ん?」と振り返り困ったような顔をしたないこに、一番近くにある空き部屋を顎で指し示した。
「あの人たちさ、ボードゲームオタクなんだよね」
「……は?」
その空き部屋はこじんまりとしていて、長い机と椅子が数セット置かれているだけだった。
それに座ることもなく、入ってすぐのドアのところに立ち尽くす。
そんな俺にまた苦笑いを浮かべたないこは、一番手前の机に軽く腰かけながらそう言った。
「将棋とかチェスとか、何でもやんの。一回付き合ったら俺が結構強いからか気に入られて、それから頻繁に呼び出しがかかるんだよね」
「…いつも幹部に呼び出されるんて仕事やなくてそれ……?」
「仕事のときもあるよ。でも夜呼び出されるのは大体酒飲みながらそれに付き合わされる感じかな」
昨日もそれ、と続けてないこは太腿の辺りで自分の両手の指を絡め合わせる。
「そんで昨日は江崎さんがひどい酔い方して、家まで送っていく役目を他の人たちが俺に押し付けたんだよね」
「職権乱用やん」
「まぁ悪い人たちじゃないからいいんだけどさ。玄関で靴脱がせて入らせようとしゃがんだ瞬間に、上からゲロぶちまけられた」
「……最悪」
「しょうがないから服洗ってシャワーだけ借りて…ってやってたらあんな時間になったって感じかな」
あはは、と困り眉で笑って言うないこは、気分を害した様子はない。
恐らく昨日のあれも、不機嫌だったわけではなくてただ単に疲れただけだったんだろう。
…そりゃそうだ。
酔っ払いの介抱をさせられた挙句のその仕打ちは、相手に悪意がなくても言いようのない疲労感に苛まれはする。
「…で? まろは何を心配してたわけ? さっきめちゃ怖い顔してたけど」
俺のただならぬ剣幕には気づいていたらしい。
こちらを見上げるないこのピンク色の瞳をまっすぐ見つめ返すのは気が引けて、少しだけ視線を逸らした。
それから「…実は」と昨日聞かされた話を遠慮がちにかいつまんで説明する。
聞き終えたないこは思わずと言った感じに吹き出して、腹を抱えて笑い出した。
「『枕営業』!!!!? なに、俺って今そんな噂まで出てんの!?」
おもろい、ウケる。
なんて続けてげらげら笑うないこの声は、放っておけば廊下まで響きそうだ。
「…笑いごとちゃうわ」
不機嫌を露わに言うと、俺が本気で心配していたことが伝わったのか、ないこは「んんっ」とひとつ咳払いをする。
姿勢を正して場を取り繕ったかと思えば、やはり堪えきれないのかまたへらりと頬を緩ませた。
「好き勝手言う人間っているよなー、誰がするか枕なんか。ひがんでんじゃねぇよ。うちのチームが優遇されてんのはメンバーの実力だっつーの」
大体能力のない人間に限って「あいつらばっかりひいきされる」なんて言うんだよな。
そんな言葉を続けてから、ないこは「よっと」と反動をつけて机から離れた。
ドアの方へいる俺に向けて手を伸ばす。
「それに誘われたとしても、他の奴らと寝たりしないよ」
俺の横髪に触れながら、ないこは数センチの身長差を埋めるようにまっすぐこちらを見上げてくる。
ピンク色の瞳が楽しそうに揺らいだ。
「まろにしか触られたくないし」
そう最後にたった一言告げたかと思うと、踵を上げて唇を重ねてくる。
そのままくるりと俺の体ごと身を反転させ、位置を入れ替えるようにして自分の背をドアに押し付つけた。
…ほんまに、ずるいな。
瞬時にこちらの理性を失くさせるような誘い文句と、こういうことを平然とやってのけるところが。
誘われるようにないこの顔のすぐ横に手を突き、俺は今度は自分の意志でその薄い唇にキスを落とした。
コメント
3件
最後の会話尊すぎませんか!?桃くんが焦ってるのは分かるけど、青くんとは珍しい…無責任な噂は流さないのが1番!!どこの誰が流したんだ…wERRORの更新ありがとうございます!これからも頑張ってください!
ERRORの更新ありがとうございます!!✨✨ 冷静な青さんでも桃さんのことになると焦りが出てくるのがまたきゅんとしちゃいます💕 まさかの頭からゲロとは…想像の斜めをいってました😳‼️ 最後の青桃さんがてぇてぇです…!💕
いひひ。かわいすぎる🥰今日も主食ありがとうございました。w🐱くんは心配性ですね。かわいい。🍣くんもゲロを被ってそのまま帰るのもまあそりゃ疲れますよね。ERRORの更新定期的にあって嬉しいです☺️