テラーノベル
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窓際に座っている,
肩に着きそうな髪が,
少し空いている窓から吹いている風に靡かれて,
顔は見えないけれど,
鬱陶しそうにしている細い指が,
なんとも目に留まる。
なんだろうな。
これが『恋』なのかな。
なんで初恋が,
『貴方』なんだろうな…
みんな私のことを「天才」って言う。
でも,本当は違う。
裏で頑張ってるだけ。
私は天才なんかじゃない。
なんで誰も見てくれない?
誰かは私のことを,
「自分の“努力みたいなの”を見てもらいたいだけでしょ」
「え,つまりそれって自慢?」
「だろうね」
「まぁ,そうじゃなきゃこんなことしないだろうね」
って。
教室の机にしまってあるピックを指差して言う。
まるで嘲笑うかのように。
でも貴方は違った。
私のペンだこを見てこう言った。
「新しい曲作ってるの?できたら聞かせてよ」
毎日放課後に,空き教室で試行錯誤していたのがバレてたみたい。
今日も楽譜に筆記音を鳴らす。
できれば弾き語りにしたいから,私の想いも綴る。
ねぇ,できたら聞かせてよって,言ってたよね。
それってつまり,
私の想いを受け止めてくれるってことだよね…?
みんな私の努力を,「天才」という二文字で終わらせる。
結局は誰も見ていないくせに。
そういうところだけは善人ぶって。
お世辞を言っておしまい。
私の気持ちなんて見向きもせずに。
聞いてくれないくせに。
きっと貴方はこれを聞いたら,私とは口をきいてくれなくなるだろうな。
どれだけ優しい貴方でも,気持ち悪いって思うと思う。
だからもう諦めてるんだ。
私の恋は,貴方にこの曲を聞かせたらこれでおしまい。
「好きだよ」って言う代わりに,曲で気持ちを示すんだ。
こうすればきっと,
私の恋に蓋を閉められるから。
煩わしいな。
目の前に貴方がいるだけで涙が出そう。
ここで終わりにはしたくないけど,
こんな恋,気持ち悪いってわかってた。
だから,
自分を否定するためにも,
こうしなくちゃいけないんだ。
「靡くカーテンに,」
「貴方の耳が触れて,」
「鬱陶しそうな指に」
「目が,留まる」
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