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愛日
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室内でじっとしている西矢を暫し見つめ、阿部が声をかける。
💚「あの。何か飲みませんか? この部屋の向かい側に給湯室があるので、好きに使っていいですよ」
「……怖くないのか?」
💚「何がですか?」
「ずいぶん、呑気だな」
💚「あなたはいい人だと思うし、みんなのこと信じてますから」
「言い切るんだな」
💚「ええ、言い切りますよ。俺は情報集めしかできなくて、実際に動くのは仲間のみんなだから。信じる事が俺の戦い方というか……って御託並べてますけど、長年の仲なので、もう言葉なんかいらないんですよ。みんなならやってくれるって知ってますから」
「……変な奴」
💚「よく言われる」
「自信満々に言うな……じゃあ、ちょっと淹れてくる」
💚「いってらっしゃぁい」
「……ホントに緊張感ないな」
呆れたように言ってから西矢は部屋から出て行き、阿部はそれを見届けてから、ふぅと息をついた。
すると、スマホが着信を知らせ、手に持たせてもらったスマホを親指で器用に操作してスピーカーに切り替える。
💚「どうしたの?」
💛『阿部、わかったことを共有する』
💚「照と舘様は警察署だったっけ?」
💛『そう』
話をまとめるとこうだ。
通報は、事件発覚の10分前。特に怪しいところはなかったが、変な音が聞こえた。それは笛のような鳥の鳴き声のような甲高い音。
その後、近くの交番勤務の警察官が駆け付けて、ナイフを持っている西矢を見つけたのだけれど、持っていた異能封じを盗まれて、警察官一人がケガもさせられて逃走を許してしまった。
駆け付けた警察官に話を聞いたところ、こちらにもナイフを振りかざしてきて狂気的な目をしていたという。
ナイフを振り回されて怯んだ時に、持っていたリュックを盗まれてしまい、その中に異能封じが入っていたのだと。
💚「……笛のような、鳥の鳴き声のような音……」
💛『ヒントになりそうか?』
💚「そうだね。ありがとう」
❤️『……阿部、大丈夫?』
💚「大丈夫だよ、舘様。心配しないで」
💛『この状況で心配しないでって言われてもな……』
💚「案外、仲良くやってるよ」
💛『仲良く?』
「……話し中?」
💚「うん、情報もらってた」
「そう……麦茶あったから淹れてきたけど、飲む?」
💚「ありがと。実はちょっと喉、乾いてた」
❤️『めっちゃ仲良しじゃん』
💚「でしょ。じゃあ、めめ達の連絡、待ってみるね」
通話が切れて、ストローを差したグラスを口に持ってきてもらって飲むと、少し生き返る。
💚「あー、おいしっ」
「手、解けなくてごめん」
💚「大丈夫です。スマホ持たせてくれたから電話も出れるし、案外、不便じゃないかも」
「そんなわけないでしょ」
全く動けない状態で何を言っているのか、と何度目になるか分からないほどの呆れ顔。
そうかなぁ?と首を傾げる阿部に、ため息までついてしまった。
そこでもう一度、着信があって電話に出る。
💚「はぁい」
🖤『阿部ちゃん、無事?!』
💚「無事無事。何か進展あった?」
🖤『植物の記憶を辿ってみたけど、犯人は映ってなかったよ。でも、その人がウソついてないのは分かった』
その瞬間、西矢がホッとしたのがわかった。
🖤『あと、朝に誰かが家に来てる。誰かはわかんなかったけど、知り合いっぽかった』
🩷『翔太が家の外でボタン拾ってたよ』
💚「ボタン? どんな?」
🩷『なんかね、ちょっと丸っこい服のボタンみたいなの。表面にギザギザの模様が入ってるね』
💚「どの辺に落ちてた?」
💙『庭の方。リビングの窓のあるとこらへん』
🖤『近くの木の記憶を辿ったけど、人がいたのはわかったんだけど、顔までは見えなかった。身長は多分俺の顎くらいで、だぼっとしたコートの人。男の人か女の人かも分かんなかった』
💚「……わかった、ありがとう。教えてもらった情報から推理してみるね」
💙『阿部ちゃん……』
💚「みんなのおかげで、真犯人に近づきそう。ありがとね」
🖤『……わかった』
通話が切れる。
聞いた情報を頭の中で整理する。結局、真犯人の姿を見ることはなかったけれど、得られた情報は大きい。
💚「中野さんの家に来た人が真犯人だとしたら、知り合いだということになる。でも、洗脳して家族で殺し合いをさせるような人でしょ? 相当な恨みを抱いてるかもしれない相手を、そう簡単に家に招き入れるとは思えない。つまり、知り合いではなく、家に招き入れやすい人……宅配業者とかだったのかも」
「だったら、家を訪ねても怪しまれない、か」
💚「うん。それが誰なのかが分かればいいんだけど……庭にいた人は、めめの顎くらいってことは165くらいかな。あとのヒント、落ちてたボタンが何か分かれば……」
考え込んでしまった阿部に、あまり邪魔をしない方がいいと思った西矢はそっと部屋から離れた。
あんなに真剣に考えてくれて、親身になってくれる人などなかなかいない。
今もずっと阿部を拘束した状態であることに罪悪感すら芽生えてくる。
「はぁ……何やってんだろ、俺」
何となく嫌な予感がして、身を護る為の異能封じやロープなどを持ってきたのは確かだ。それをまさか、逃げ込んだ先で使う事になるとは思ってもいなかったけれど、焦っていて気付いたら阿部を拘束していた。
それから今までズルズルと流れに任せるようにここまできている。
そろそろ、阿部を解放してもいいだろうか。
そんな考えが浮かんだ頃、コンコンコンと事務所の出入り口に位置するドアがノックされてビクリと身を震わせた。
まさか、真犯人が来たのだろうか。
「すみません。並河署の者です。協力していただいた特務調査局の皆さんに、強盗殺人犯が逮捕されたというお話を伝えに来ました」
「えっ、逮捕?」
「はい。つい先ほど。一刻も早くお伝えした方が良いと思いまして」
女性警察官らしい声に、西矢はドアの方に向かった。
💚「ボタン、ギザギザの模様、家を訪ねても怪しまれない人……ギザギザの模様のボタン……ギザギザが、縦とか横じゃなくて中央に向かうようなものだったら、確か、あの服のボタンがそんな感じだった筈……あれ……もしそうだとしたら、ヤバい」
スマホを操作しようとして、西矢がコントロールルームにいないことに気が付いた。
それに、玄関口の方で話し声が聞こえる。
「えっ、逮捕?」
「はい。つい先ほど。一刻も早くお伝えした方が良いと思いまして」
女性警察官らしい声。
マズい。
💚「開けちゃダメだ!!!」
有りっ丈の声で叫ぶ。
💚「開けちゃダメだ!!!」
叫ぶような阿部の声。
えっと思った時には鍵を開けた後で、目の前のドアが開くとそこには、警察官の制服を着ている女性の姿。
「やっと会えましたね」
歪んだ笑みを浮かべる女性警察官。
💚「西矢さん! 早く離れて!!」
阿部の声に誘われるように慌ててコントロールルームの方に向かう。室内に入って思い切りドアを閉めるけれど、つま先がねじ込まれた事で締め切るには至らなくて、ドアから手を離して阿部のいる椅子の方に後退りをする。
ドアを開いて入ってくる女は、165センチくらいの、警察官の制服を着た女性。その顔は狂気に満ちている。
「あああああ! ようやく会えた! ようやく会えたわ!!!」
キインッと耳をつくような甲高い声。先ほど聞こえた落ち着いた声とはまるで違う、これではまるで超音波のよう。
西矢を見ると、眉を顰めて首を傾げている。これは恐らく聞こえていない。この声の高さでは、聞こえる筈がない。
けれど、女性警察官として話す時にはそれを隠すように落ち着いたトーンだったから、先ほどまでは聞こえていたということ。
みんなに連絡を、と指を動かしたのだが、手に持っていたスマホが強く蹴り上げられた。
「邪魔しないでくれる?」
女は腰に付けている拳銃を取り出して阿部の左腰に押し当てる。
💚「っ?!」
「私とはじめくんの時間を奪うのは赦さない」
「君……誰?」
「夢乃よ。わかるでしょう!?」
再び甲高い声に変わる。
「何を、言って……」
💚(……夢乃さんに心当たりは?)
西矢は首を横に振る。
「はじめくんに会う為に、私がんばったのよぉ! あいつが私とはじめくんのことを引き裂いたりするから! 私がこんなに苦しいのはあいつのせいなの! だから、あいつらなんか死んで当たり前なのよぉ!」
💚(中野さんがあなたとの仲を裂いたって言ってます。だから殺したと)
「そんなの、知らない。俺、君に会ったこと、ない」
「恥ずかしがらなくていいのよぉ? いつも中野の家に入ってくはじめくんをずーっと見てたもの。ずっと見守ってたもの! それなのに、あいつが邪魔して、来れなくなったの……そんなの耐えられない!!」
💚(ストーカー、だね……ずっと西矢さんを見てたって)
「そんな……そんな理由で? 由梨ちゃんはまだ中学生だったのに!」
「どうでもいいのよ、そんなこと! 私にとっては、はじめくんが全てなのよぉ!」
夢乃が叫んだ瞬間、その足元から勢いよく生えてきた数本の蔓が夢乃の体に巻き付いてその四肢を拘束した。
「なっ、えっ!?」
🖤「持ってる物から手を離せ」
低く唸るような目黒の声。ドアから中に入って来ていたらしい目黒が、夢乃を睨みつけている。
その夢乃の首には鋼でできたクナイが当てられていて、夢乃の背後には深澤の姿。
💜「今すぐ離さないと、このまま切っちゃうよ」
首に押し当てられて少しだけ切れたことで、夢乃は慌てて拳銃を手放した。ガシャンと落ちた拳銃を深澤が目黒の方に蹴り飛ばし、目黒が足で踏みつける。
💜「舘、洗脳の被害が出ないように氷漬けにしちゃってー」
先ほどまでのドスの効いた声は何だったのかと思うくらいの軽い深澤の声に、阿部は笑みを浮かべた。
❤️「あいよ」
目黒の後ろから出てきた宮舘が夢乃に手を向けると、冷気が夢乃を取り巻いて一瞬にして氷漬けにしてしまった。
💜「佐久間、拘置所までよろしくー」
🩷「お任せくださいませ深澤様!」
敬礼をして入って来た佐久間が凍った夢乃に触れると、二人一緒に粒子になって消えていった。
💜「よしっ、いっちょ上がり! 阿部ちゃん、ロープ外すねー」
持っているクナイでロープを切っていく深澤。
💚「ふっかさん、めっちゃキレてたね」
💜「そりゃそうだよ。あんなもん阿部ちゃんに向けられて、怒らないわけある?」
💙「目黒のこと制止すんの大変だったんだぞ」
💚「そうだったんだ。そういや、めめもオコだったもんね」
🖤「オコって……かわいい」
💙「めめ、心の声もれてんぞー」
🖤「あ……」
💜「ほい、解けた」
💚「ありがとう、ふっか。おおー、結構、痺れてる」
💙「何時間あの状態でいたと思ってんだよ」
💚「だよねー」
解放されてすぐに、阿部は放心状態で床に座り込んでいる西矢の方に向かった。
💚「西矢さん、もう大丈夫です。長い時間、お疲れさまでした」
阿部も膝を抱えてしゃがみこむと、お疲れさまでしたの言葉と同時に頷いてから首を傾けている。
💙「あざといなー……かわいい」
❤️「翔太も漏れてるよ」
宮舘に指摘されて渡辺は慌てて口を押さえた。
「じゃあ、俺、警察に行ってくる」
💚「え、何で?」
「何でって……え、何で?」
キョトンとしたような阿部に、思わず西矢は目をぱちくりさせてしまった。
💚「俺は何もされてませんよ。ずーっと一緒にお喋りしてただけだし。何かありましたっけ?」
顎に人差し指を当てている阿部は惚けた表情をしていて、これはきっと何を言っても引かないだろうと、深澤がため息をついた。
💜「じゃあ、細かいところまで事情聴取だけ付き合ってもらって、あとは何もなかったって事にしよう」
💛「いいのかよ、それで」
💜「阿部ちゃん、言い出したら意外と聞かないからさ。まあ被害者が、被害がないって言ったらもうそれ以上は追及できないし、しょうがないじゃん」
🖤「……阿部ちゃんの気持ちは優先してあげたいけど……」
💙「……納得いかねー」
💚「まあまあ、みんなのおかげで無事に解決したし、良かったね!」
💛「……あー……阿部じゃなかったら殴ってるわ」
❤️「同じく」
西矢への事情聴取とSnowManが掴んだ情報、夢乃の自白から事件の全容がわかった。
日比谷夢乃27歳、職業フリーター。
中野家の家庭教師をしていた西矢を見かけた夢乃は一目ぼれだったそう。それから中野家で西矢を見つめるのが生きがいとなり、数か月に渡りストーカー行為をしていた。
何度か声をかけたけれど西矢が夢乃を認識することはなく、洗脳を諦めたという。
一週間ほど前に中野に目撃されて咎められ、次に見つけたら警察沙汰にすると脅された。
けれどどうしても西矢に会いたい夢乃は今回の事件を思い付き、警察官を装って中野家を訪問して洗脳して中野の携帯電話を使って西矢を呼び出した。
そのタイミングで中野家に殺し合いをさせて西矢に罪を擦り付ける。
その一部始終を庭から見ていた夢乃は、警察官として駆け付けたフリをし、ケガをした警察官には洗脳を施していたので偽の情報を警察に渡し、西矢を追いつめる事に成功。
周辺で聞き込みをして特務調査局の方に向かったのを知り、カフェで深澤達と話して事務所に人がいないのを確認、そこに西矢がいると確信して事務所に入ったという。
ちなみに、夢乃が着ていた警察官の制服は、洗脳した本物の警察官から奪ったものだったらしい。
無事に解決し、拘置所から帰って来た佐久間とカフェにいた向井は、宮舘と岩本に静かながらも強めの語気で長々と説教されるのだった。
⋆⋅⋅⋅⊱∘──────∘⊰⋅⋅⋅⋆─⋆
えー、4-2にセンシティブ付けていたの外しました。
細かい描写はないから、ニュース映像と同じじゃないか?と思ったためです。
過敏すぎたかなーと思い直し、外しました。
やっぱり付けてた方がいいよ!と思われた方がいらっしゃいましたらコメントお願いします。
その辺の区切りも難しいよね……。
ちなみに西矢さんのイメージは風間俊介くんでした。